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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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第一回闘技大会 表彰式1

起きて会話できる様子に少し安堵しつつ、VRカプセルを操作して健康状態の履歴を確認する。──精神的ショックによるバイタル異常か……何があったかマリに問いただすのはストレスになるかもしれない。後でユキに聞こう。


「体調は?」

「大丈夫……」

「そっか。もう大丈夫だよ」


マリの手を握ると、モソモソとVRカプセルを出て抱きついて来たので胡座の中に抱え込む。暫くそうしていると、マリはぽつりと呟くように心の内を晒した。


「……急に目が見えなくなったの。ちょっと、びっくりしちゃって」

「それは……怖かったね」


マリは産まれつき弱視がちなのだが、昔、自分は失明する可能性が他の人より高いのだと知って怯えていた時期があった。

医師からは色素が残っているから急激に悪化する可能性は少ないと言われているが、実は今も密かに不安に思っているのを僕は知っている。


マリの瞳がじわりと潤んで、やがて決壊した様に涙が溢れ出した。


「……こ、怖がっだ〜〜〜」

「よしよし、可哀想に」


ヒンヒンとぐずるマリをあやしながらゲーム内の活動履歴を呼び出す。VRカプセルはヘッドギアと違って医療モデルを原型にしているので何かと便利だ。


「マリ、今調べたら対戦相手に『暗闇』の状態異常をかけられてたみたいだよ。見えないのはゲームの中だけだから安心して?」

「ぐす……『暗闇』、なんて、攻略情報には無かっ、だ」

「闘技大会のために用意してたんだろうね」


突然視覚を奪われてどれほど恐ろしかった事だろう。対戦相手にふつふつと殺意が湧いてくるが、マリを怖がらせないために殊更穏やかに話しかける。

マリは少し落ち着いてきたらしく、VRカプセルの側面に貼り付けたケースからティッシュを抜き取って鼻をかんでいた。泣き疲れたのか暫くぼんやりとしていたが、やがてハッとした様に顔を上げて此方を見る。


「コウ、試合は!?」

「棄権した」


そう言うと、びっくりしたように固まるマリ。

ケイもユキも近所に住んではいるが、どうしたって来るまでに少し時間がかかる。それなら同じ家にいる僕がログアウトして当然だろう。


「だってさ、僕そもそも闘技大会とか興味無かったし。皆が出るから一緒に出ようと思っただけで、そこにマリが居ないなら行く意味無くない?」


本当はちょっと楽しみになってきていたし、優勝したかった気持ちもある。だけどやっぱり、マリの方が大切だ。


「……ありがとう」


マリは口をもにゅもにゅさせて何か言いた気にしていたが、謝るのも違うと思ったのだろう、少し申し訳なさそうにお礼を言った。


「僕が一緒に居たいだけだよ。マリだって僕が同じ状況になったら、ゲームより僕を優先してくれるでしょ?」

「うん、すぐに駆けつけるよ。大切だからね」


そう言い切るマリに胸がほこほこする。



「そういえば表彰式……」

「あー、もう始まってるかな」

「いやまだ間に合うかも、急ごう!」

「体調は大丈夫なの?」

「コウが来てくれたから平気! それにこんな怖い思いしたんだから、宣伝ぐらいしないと割に合わないよ」


それもそうか、とヘッドギアを取りに戻る。

まだマリが心配なので、何かあってもすぐ駆けつけられるように同じ部屋でログインすることにした。



「無事だったんだな」

「心配したよ〜!」

「ごめーん! 急に何も見えなくなったからパニックになっちゃってさ、暗闇の状態異常だったらしいんだけど」


ログインすると待機室にはケイとユキが居た。まだ表彰式は始まっていないようだ。


「コーエン様の試合は不戦敗となりましたが、よろしいですね?」

「はい、お手数おかけしました」

「そうですか」


スタッフに笑顔だが有無を言わさぬ口調で言われたのでそう返すと、不満そうに目を逸らして部屋を出て行った。実質的な決勝戦が潰れたので苛ついたのだろうか?

他にも部門はあるのでそこまで不機嫌になる程の事ではない思うが、彼にとっては進行を崩されるのは許されざる罪なのかもしれないので大人しく謝っておく。どうせイベントでしか関わらない相手だ、お互いに意見を交わすメリットなど無いだろう。



『皆様大変お待たせいたしました。集計が完了しましたので、これより表彰式を行います!』


壁に嵌め込まれた鏡に司会の男性と表彰台が映る。部門毎に用意されているらしく、計9つの表彰台がずらりと並んでいた。


『まずはレベル1〜30のパーティ部門の発表です。三位から発表します!』


ダララララ〜と鳴るドラムロールを聴き流しながらメニューを開いて対戦表を確認すると、発表前ではあるが対戦の結果を見ることができた。

参加者へのネタバレは厳しく考えていない様なので、この表彰式は後で動画化する時のために画面映えを重視しているのかも知れない。



『優勝できるなんて本当に驚きで……一人一人が力を出し切ったから、勝ち抜く事ができたと思います。皆で頑張った甲斐がありました』

『ありがとうございました! ……では次にペア部門の発表です!』


「コメントするのはひとチームにつき一人だけみたいだけど、ユキも話したい?」

「俺はいいや。緊張してしどろもどろになっちゃいそうだし」

「何か代わりに言っておこうか?」

「んー、特に無いかな」


いけない、ぼーっとしていたらマリ達の出場部門になっていた。


「緊張するね……!」

「うん」


ユキが胸を押さえてそわそわしている。

話しかけられたマリは落ち着いて見えるが、パルスオキシメーターを開いて自らの心拍数を確認しているので、緊張のあまり強制ログアウトにならないか心配しているようだ。


『では第2位!』


マリの心拍数が少しずつ上昇しているのが気になり過ぎて放送が耳に入らない。僕もいつでもログアウトできるようにメニューを開きっ放しにしておく。


『マリオンとユクテスワのペア!』


目の前にいたマリ達の姿が掻き消えて、表彰台の上に転移した姿が鏡に映し出された。


『おめでとうございます、それでは何か一言どうぞ!』

『こちらの大会でも頑張ってくれたお餅の妖精こと出血ネズミや、愛らしい子猫のリトルパンテラ達と触れ合えるカフェをセイレンで営業中です! お土産コーナーでは冒険に便利なお役立ちアイテムを多数ご用意しておりますので、皆様是非お立ち寄りください』

『……はい、ありがとうございました!』


清々しい程に宣伝しかしていない。司会も苦笑いしているが、にこにこと輝かんばかりの笑顔で言い切ったマリは満足気だ。

ユキもマリの掲げた手の上にいるリーダーを指先でうりうりと擽って可愛さアピールをしている。



その後もトントン拍子に発表は進んでいき、遂に僕の出番となった。一瞬の浮遊感の後、スポットライトに照らされて自分が表彰台に立っていることを知る。


「では一言お願いします!」

「戦闘向きではない錬金術師の僕がここまで勝ち抜けたのは、大会前に準備していたアイテムのお陰です。そんな優秀なアイテムを、先程レベル30までの部で2位となったマリオンがオーナーを務めるカフェで販売しています。僕は支配人ですが偶にウェイターもやっていますので、遊びに来てくださると嬉しいです」

「……はい、ありがとうございました!」


マリから貰った美貌のアバターで完璧な微笑みを浮かべながら宣伝をゴリ押ししていく。

絡まれたくないので僕が今後ウェイターとして出る事はほぼ無いと思うが、興味本位で来た客も他の美男美女スタッフで丁重にもてなしてリピーターにしてやる。

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