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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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第一回闘技大会 本戦3

炎が視界を埋め尽くし、空気が熱を孕む。爆風の余波を受けて立っていられず倒れ込んだ。

逃げ場の無いフィールドに満ちた炎によって抗う術もなくHPがゴリゴリと削られていき、やがて0になる。


ふっ、と景色が切り替わり待機室へと戻された。



《勝者、コーエン!》



「……は?」


死んでますけど?



「どうだったんだ?」

「うーん、よく分かんない……」

「はぁ?」


不思議そうにするケイを横目にトーナメント表を確認するも、僕が勝ち上がった表記になっている。

その後いくら待っても説明は無かったため、仕方なく質問チャットに報告を送ることにした。運営へのお問い合わせフォームもあるのだが、質問チャットの方はAIが答えてくれるので即座に返事をしてくれるのだ。


《闘技大会で負けたのに勝った扱いになってます》

《コーエン様の戦闘ログを確認します。しばらくお待ちください。》


そして待つ事僅か数秒。


《お待たせしました。コーエン様のHPが0になる前に対戦相手のHPが0になったため、先程の試合はコーエン様の勝利です。》


勝ったのは間違いではなかったらしい。だが何故勝ったのか……。


「試合は録画してただろ? 再生して確認したらどうだ」

「成程!」


ケイに言われて録画機能の存在を思い出す。まさかこんなに早く役に立つとはね。



《『獄炎』!》


ここからだ。


杖から噴き上がる炎が五本の爆薬を飲み込み、辺りが夕暮れのようなオレンジ色に染まる。ここで僕が爆風で横倒しにされ、炎にHPが削られ始める。


そして特に何もなくそのまま死んだ。



(だから死んでるんだが)



「……思いっ切り死んでるな」

「うん……」


一体何を見逃したと言うのか。

そもそも爆炎が酷くて碌に見えていないから、相手が倒れる瞬間が映っていない可能性もある。


(いや待てよ……)


いくら爆炎が酷くても、周囲には燃える物が無いので煙は上がらなかった。なのに数メートルの距離で相手が全く見えないなんて変だ。


(つまり僕が横倒しになった時、相手は既に死んでいたのでは?)


再び再生。今度は再生速度を0.5倍にして見逃さないように集中する。



《『獄炎』!》


杖がゆっくり振り下ろされ、追従するように降りてくる炎の刃が爆薬を飲み込む。そして爆発。

一瞬強い爆炎で何も見えなくなり、相手の姿も掻き消える。炎の高さはすぐに低くなったが勢いは落ちずに燃え広がる。


──この時の炎の高さは人間より低いと思うのだが、相手の姿は見えない。と言う事は、だ。


「まさか爆発で死んだ……?」

「あんなに自信満々に杖を振り下ろしたのにか?」


だとしたら避けもせずに一体何がしたかったのだろうか。



「ただいまぁ!」


悩んでいると、マリとユキが戻って来た。

元気いっぱいなので勝ったのだろう。


「俺達今回はかなり早く終わったのに、コウはもっと早かったんだね?」

「うん……一瞬で勝ったよ」

「えーすご!」

「録画見てみろよ。面白いぞ」


再生して見せると二人とも何とも言えない表情になった。ですよね。


「勝った、のか……?」

「うーん……もっかい見せて」


マリにせがまれてスロー再生すると、ユキは困惑したままだがマリは何か納得したような声を出した。


「んーなんか分かったかも。これって毒薬か何かだと思ったんじゃない?」

「あ……そうか、爆発すると思わなかったから攻撃しちゃったのか」


盲点だった。そういえば爆薬は割と珍しいアイテムだ。

工房の素材が減るとマリが補充しておいてくれるので安定して作れているが、爆薬はレア素材を使うのだ。更に調合の難易度も高めで失敗しやすいので、作れる人自体が少ない。


極め付けはダメージ量だ。

僕の作る爆薬は改良に改良を重ねたレシピなので、基本のレシピの五倍近い攻撃力を持っているが、基本のレシピなら筋力極振りのプレイヤーが普通に攻撃するくらいのダメージ量しかない。

つまり買うメリットが少ないので需要が増えず、必然的に売る人も少なくなる。


かと言って改良できるほど何度も作れば、売ったとしても原価割れしてしまう。僕が改良を重ねられたのは、マリという強力なスポンサーがついているからだ。



「言われてみれば、俺も白衣着た奴に薬瓶投げられたら状態異常を警戒するなぁ」


ユキの言葉にも一理ある。


「確かに白衣着たキャリア風の美青年って、状態異常攻撃してきそうだよね」

「自分で美青年って言うか?」

「別に現実の僕の顔じゃないし……」


ケイは呆れたように言ってきたけど、アバターの顔を美青年って言ってもただの事実でしょ。


「でも白衣がヨレヨレだったらちょっと爆弾魔っぽいよね」

「あー分かる」

「モノクルじゃなくてゴーグル着けてた方が爆弾使ってきそうな感じあるかも」

「確かに。あと隈が凄そう」

「分かるー! 髪は癖毛かな」

「えー俺はマッシュボブのイメージ」


マリとユキは『爆弾使ってきそうな奴あるある』で盛り上がっている。



「それよりお前らコメントの内容考えとけよ」

「私は何位になっても店の宣伝しかする気ないから大丈夫!」

「やばい俺全然考えて無かったわ」


各部門で三位以上になったプレイヤーは表彰式で一言コメントを聞かれるらしい。

僕はCブロックで勝ち抜いたので三位以上が確定し、次からはAとBのブロックで勝ち抜いたプレイヤーとの総当たり戦をして順位を決める。


「僕も店の宣伝でもしておこうかな」


特に他人にアピールしたい事も無いのでそれで良いだろう。それより対戦相手を確認しておかなくては。

総当たりと言っても三人しか居ないので二連勝すれば一位になれるのだ。あまり勝利への執着がある訳ではなかったが、ここまで来れば優勝したいという気持ちも芽生えてくる。



トーナメント表を見ようとウィンドウを開くと、新しく総当たりの対戦表が増えていた。先ずはAとB、次にBとC、最後にAとCの対戦となるようだ。


Aは黒髪を高めの位置で一つ結びにしたイケメン。胸までの写真には武器は映っていない。

大剣等の背負うような大型武器は攻撃特化が多いので、そうでないという事は技術値や速度値にもステータスを振っているタイプの可能性がある。


Bは派手な装飾が付いた扇らしき武器を背負ってシンプルな着物を着た女性だが、服と武器の差に少しちぐはぐな印象を受けた。


Cの僕が次に当たるのはBの女性だが、あの扇は何カテゴリーの武器なのだろうか?

カテゴリーによってアーツが変わるので試合前に鑑定しておこう。もしハンマーなら衝撃波を出すスキルがあるため、見た目よりもかなり攻撃範囲が広いので注意が必要だ。



コン、コン。


対戦表を睨みつけていると、待機室の扉が控えめにノックされた。


「当大会のスタッフです。少々お時間よろしいでしょうか?」

「どうぞ!」

「失礼します」


ユキが元気よく返事をすると、入ってきたのは二十代くらいの真面目そうな男性スタッフだった。どことなくサラリーマンを思わせる風貌だが、運営会社の社員だったりするのだろうか。



「実はトーナメントで相手を脅迫しようとした方が居たようで、不正防止のため急遽スタッフが同席させていただく事となりました。ご不便をお掛けして大変申し訳ございませんが、ご了承いただけますと幸いです」

「お疲れ様です。承知しました」


ビジネス感全開で謝罪され、反射的に社会人モードに入って言葉を返す。


「自分はゲーム実況動画を配信しているのですが、この場面はカットした方が良いでしょうか?」

「いえ、大会後に放送するのでしたら問題ありません。スタッフも映して大丈夫です」

「ありがとうございます」


常識人のケイがしっかり許可をとっている一方、マリは油断していた所に他人が入って来たため人見知りが発動して無言を貫いている。

立ちっぱなしも可哀想なのでスタッフの男性に椅子を勧めたが断られた。まぁアバターは疲労しないので大丈夫だろう。



《間もなく本戦Aブロック優勝者対Bブロック優勝者の試合が始まります》


メッセージが流れたが、僕もマリ達もCブロックなので無言の待機時間は続く。これは軽く地獄だな……。

対戦相手の杖は魔剣です。

「火魔法の効果を大きく上昇させる」と「炎を纏って大剣に変化する」という二つの効果を持っていました。


ちなみに魔剣は最初に装備したプレイヤーの職業によって効果や形状が決定されます。例えば弓使いなら魔弓になったりします。

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