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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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第一回闘技大会 本戦1

翌日ログインしたのは試合開始の二時間以上前。暇なので日課となったスキュラの討伐を周回していたらレベルが39に上がった。

参加部門のレベルの範囲内であれば大会中にレベルアップしても反映されるので、ステータスは本戦に役立ちそうな部分を伸ばしたい。


(うーん……やっぱり紙装甲過ぎるかな)


当たらなければどうということはないが、接近戦に持ち込まれると全て避けるのは無理だ。パリィするにも限界があるし、その状態で自分の攻撃は当てるというのは更に無理がある。

魔法は使わないので魔力を上げる必要は無いし、速度にかなり振っているので遠距離魔法は避けられると踏んで精神値は最初から捨てている。


ステータスは防御に振っておこう。それに防御が高いほどパリィの難易度も下がる。



試合開始の十五分前に待機室へ入ると他のメンバーは既に揃っていた。皆早く着き過ぎたせいで手持ち無沙汰らしく、各々掲示板を見たりリーダーを撫でたりして時間を潰している。


(リーダーが撫でられ過ぎて平べったくなってる……)


執拗にふわふわの背中を撫でるマリの目は真剣そのもので、熟練の職人を思わせる顔つきである。一定のリズムで繰り出される優しいナデナデに蕩け切ったリーダーは、潰れたお饅頭となってテーブルに貼り付いていた。



《皆様お集まりでしょうか? 間もなく本戦第一試合が始まります。待機室に入るのをお忘れなく!》


饅頭職人となったマリを観察していたら、いつの間にか開始時刻になっていたようだ。今度は予選と違っていきなり飛ばされず、ちゃんと鏡に開始までのカウントダウンが表示されている。


「頑張るぞい!」


気が抜ける口調で気合いを入れるマリの声を最後に、僕は試合会場へと転送された。



視界がふつりと切り替わって、立っていたのは闘技場の中だ。中からの景色が物珍しいのか、対面には弓を持った男が落ち着きなく視線を彷徨わせている。


まだ試合は始まっていないがこの隙にこっそり鑑定を済ませておく。

対戦相手の職業は『中級弓士』と『中級錬金術師』か。ステータスもコウと似通っているからほぼ同じ戦闘スタイルだろう。

矢筒はホルスターよりも容量が多いため、撃ち合いが長引けばジリ貧になるかも知れないので注意が必要だな。



《それでは、試合開始!》



開始と共に飛んで来た矢を紙一重で避けて棒手裏剣を投擲する。先ずは様子見だ。

何気に弓士と戦うのは初めてだが、距離を保って相手をしっかり見ていれば難なく避けられる。


相手も速度値が高いので最初の棒手裏剣は避けられてしまったが、連続で投げ続けると避けきれずに被弾し始める。すると精神値の低さ故に相手はあっさりと出血の状態異常に罹った。

直前に鑑定していたお陰で試合中も相手のHPや状態異常を見れるのは、戦略的にも心理戦を制する上でも大きなアドバンテージだな。


「くっ……」


相手が薬瓶を2本取り出して自分に掛けると、出血が治ってHPも回復する。

出血なんてマイナーな状態異常をピンポイントで対策する意味は薄いので、恐らく複数の状態異常を一本で消せる所謂【万能薬】のような薬を持ち込んだのだろうと当たりをつけ、腰の薬品ホルダーに括られた薬瓶を鑑定。



ーーー


【治療薬(毒・火傷・魅了・出血・麻痺)】

毒2までの状態異常を解除

火傷2までの状態異常を解除

魅了2までの状態異常を解除

出血1までの状態異常を解除

麻痺1までの状態異常を解除


ーーー



3本残っている薬瓶は回復ポーションが1本と治療薬が2本だった。

鑑定のために攻撃の手が緩んだのを好機と思ったのか、はたまた再び出血に罹ることを危惧したのか。相手は素早く矢を番えると、システム補助のかかった人間離れした速度で連射してきた。


しかしコウも負けてはいない。弓で射る方が投擲よりも攻撃力は高くなるが、棒手裏剣より矢の軌道の方が見えやすいのだ。


字面の通り矢継ぎ早に射られる矢を殆どノーダメージで潜り抜け、こちらも棒手裏剣の連射をお返しする。コウの持つ隠密スキルは遠距離攻撃を見え辛くする効果もあるので、出血こそ入らなかったが何発かは命中した。


相手は紙装甲だが棒手裏剣自体の攻撃力はかなり低いので、出血を誘発すべく畳み掛ける。

鋭く飛来する矢も軽く避けて順調に棒手裏剣を当てていくと、弓士は最後の回復ポーションを使用した後、攻撃を避ける事もなく弓を引いた体勢を数秒保ってから矢を放つ。



「『一射絶命』!」

「!?」


避けたはずの矢が突然ぎゅんと真横に曲がってコウの腕に突き刺さり、HPが半分近く持っていかれた。しかもご丁寧に毒1と麻痺1の状態異常までついている。


とりあえずHPは回復ポーションを使って持ち直す。

毒の治療薬はあるが、麻痺や魅了は発症確率が低いのでアイテム量の制限を考えると持ち込めなかったのが悔やまれる。ステータスの変化を一定の確率で戻す【聖水】で状態異常の解除を試みるも、消えたのは毒だけだった。


しかし焦る必要は無い。麻痺1は軽度の移動阻害なので多少走り難くなるだけだ──ならば動かずに攻撃すればいい、相手が反撃できない程の圧倒的な火力で。



棒手裏剣に混じってヒュンと風を切り飛んでいくのは掌大の薬瓶。それが弓士の元へ届けられた時、盛大な爆発音によって空気が震えた。


土埃の向こうで魔力の光が揺れているのでギリギリ生きているようだが、回復ポーションも使い切っているのでもう保たないだろう。更に追い討ちをかけるように出血が発症し、相手のHPがジワジワと削れていく。


最後にもう一本爆薬を投げ込んで試合終了だ。



《勝者、コーエン!》


わぁっと周囲から歓声が上がる。


しかし観覧席は無人なので只の効果音のようだ。普段はシステム的に入れない場所とは言え、違和感が凄いので歓声が上がるならせめてNPCでも設置しておいて欲しいものである。




再び転移で待機室に戻されると丁度ケイも戻って来るところだった。


「お疲れ様、どうだった?」

「勝ったぞ。そっちはどうなんだ」

「僕も勝ったよ。今回は割と楽勝だったけどトーナメント制は運も絡んで来るからなぁ」


暫くケイと二人で話していたが、マリとユキも試合を終えて戻って来た。


「勝ったよ〜」

「二人はどうだった?」

「両方勝った」

「全員二回戦に進めたね」


トーナメント表を確認すると既に今日の結果が反映されている。明日当たるのはとんがり帽子を被った見るからに魔法使いっぽい女性だ。


遂に魔法使い対策が役立つ日が来たのかと少しワクワクしながらログアウトした。

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