表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第一章 錬金術師
6/91

工房にて

「ここが工房だよ」


エストのホームに戻った後マリが案内してくれたのは、壁際の天井から吊るされた薬草や素材らしきものの瓶詰めがぎっしり詰まった棚が魔女の隠れ家を思わせる部屋だった。

中央にあるどっしりとした木製の作業台にフラスコや試験管、不思議な形の実験器具のようなものが乗っている。

実験器具は木製の台に金属製のお盆とストームグラスのようなよく分からないガラスドームが取り付けられており、現実にはない謎の構造だったがそれがファンタジーらしいデザインで胸が弾んだ。


「この素材棚の前に立つと保管してる素材一覧のウィンドウが出るよ。この本棚はレシピ一覧。こっちのノートは私が作った資料」


2冊あるノートを見せて貰う。片方はモンスターについて、もう片方は調薬についてのようだ。

モンスターの生息地、生態、ドロップ素材などが書かれている。図書館に行かなくても簡単な情報なら調べられるように作ったらしい。

調薬については、薬草の特定の部位を使った場合に起こる変化についてまとめられていた。

例えば、アルニカの葉の部分のみを使った下級ポーションは回復量が50だが、アルニカの花を使うと回復量が75に上がる。

これは興味深い。


「このノートはページが勝手に増えてくから、いくら書いても大丈夫なんだ。まだ使ってないノートがあるからあげるよ」

「ありがとう」



「まずアルニカをすり潰します。技術ステータスを上げていると早く出来上がります」


乳鉢の中でアルニカがあっという間にすり潰されていく。

技術が高いので乳棒が当たるだけで粉砕されていくような不思議な現象がおきている。


「これに水を加えてゆるくしたら、漏斗にろ紙をセットしてろ過します」


ビーカーに溜まったのは緑茶色の液体だ。ハーブのような匂いがする。


「瓶に移したら錬成陣に乗せて錬成します」


錬成すると透明度の高い黄色の液体に変わった。見た目は下級ポーションと同じだが鑑定してみる。



ーーー


【中級ポーション】

HP150回復


ーーー



「一度作ったアイテムはレシピが保存されるから最初にやったように素材を乗せるだけの簡易錬成が出来るようになるんだよ。簡易錬成は少し効果が落ちるけどね」

「簡易錬成前にすり潰したり素材同士を混ぜたりしたら効果は変わるのかな?」

「それは調べなかったな。やってみてよ」


変化が判りやすいようにアルニカの葉だけ使うことにした。

乳鉢ですり潰したもの、ろ過したもの、水に晒したもの、湯掻いたもの、茹でたもの、茹で汁の6つで試してみる。茹でるのはアルコールランプとビーカーを使った。

すり潰す前は回復量50、すり潰したもの50、水に晒したもの75、湯掻いたもの30、茹でたもの30、ろ過したものと茹で汁は失敗だった。失敗すると素材は消える。


「ろ過液もダメなんだ」

「システム的に『アルニカ』じゃないって判断されるのかもね」

「アルニカは熱に弱いのかな?炒めたらどうなるんだろう」


実験結果を調薬ノートにまとめた後、追加でサンプルを作成する。

微塵切りにしたもの、流水で洗ったもの、水を張った桶で濯いだもの、炒めたもの、茹でたものを茹で汁ごと使ったものの5つだ。


結果は微塵切り50、洗ったもの75、濯いだもの75、炒めたもの30、茹でたものを茹で汁ごと使ったもの50だった。


「洗うっていう下処理が質を良くするのかな。茹で汁ごとなら変わらないのは、成分が熱で水に溶けたんだろうか」

「工房には水道が無いから流水じゃなくても良いのは助かるね」


水は実験のために外から汲んできたが、水瓶に入れるなどして後でストックしておこう。

水の鮮度も関係するだろうか。汲んでから1日経った水だと結果は変わるのか。

それと今回は井戸水を使ったが山の湧き水や川や湖だと変わったりするかもしれない。海水も水として使えるのだろうか?


今後調べたい事を貰ったばかりのノートにメモしていく。

ノートと言っても手に持つとウィンドウが開くので筆記具が無くても書けるし添削も容易だ。


「薬草を乾燥させたら効果は変わるのかな」

「工房で干してみたけど乾燥自体しなかったよ。ホーム以外の場所に置いた場合は3時間くらいで消えるみたい」

「あの壁際のやつは乾燥してるように見えるけど?」

「あれは部屋に元々ついてたんだよ。素材は全部棚の中にデータ化されて入ってる」

「あれインテリアだったのか……」



「錬成は調薬だけじゃなくて装備に特性を付与することもできるよ」

「特性ってなに?」

「やってみた方が早いから投げナイフに出血を付与してみよう。丁度ネズミのドロップ品があるし」


言われるがまま、錬成陣に投げナイフと出血ネズミの牙を乗せる。


「『錬成』」


錬成陣がふわりと光り、投げナイフが残って出血ネズミの牙が消えていた。

マリが投げナイフを手に取り実験器具だと思っていた謎のオブジェのお盆部分に乗せる。


「『鑑定』」


マリの前にウィンドウが現れる。

他人のウィンドウは開いていることは分かるが表示されている内容は見えない。



ぽいん。


ウィンドウを操作しているマリを眺めていたら、なんだか気の抜けた音がして視界の端にチャットのアイコンが出た。



ーーー


【投げナイフ】

ステータス:攻撃+15

属性:なし

追加効果:なし


ーーー



鑑定結果をチャットで送ってくれたらしい。

どうやら謎のオブジェは鑑定道具のようだ。ポーションの時は道具がなくてもウィンドウが開いて鑑定結果を見れたのだが。


「武器はスキル『武器鑑定』がないと鑑定できないんだよ。『商人』や『鍛治師』が取得できるスキルなんだけど」

「もしかして、ポーションは錬金術師のスキルで鑑定できる?」

「そう。毒や薬は『薬品鑑定』が必要。植物の鑑定は『植物知識』、鉱物は『鉱物知識』。この2つは条件を満たせばどの職業でも取得できるよ」


パッシブスキルはスキル名を唱えなくても自動で発動するから気づかなかった。


「出血の付与は失敗したみたい。成功すると追加効果に『出血』がつくんだよ。付与する素材によってはステータスや属性が変わったりする」

「付与の成功確率ってどのくらいなの?」

「ものによるかな。普通の武器や防具ならステータスが3桁とか高い方が成功しやすいけど、投げナイフみたいに消耗品だと逆にステータスが低いやつが良いみたい。あと属性や追加効果が少ないと確率上がる」

「稀有な失敗を引いたのか……」

「まだ素材はあるから大丈夫だって。もう一回やってみなよ」


その後は3回成功して2回失敗した。


「僕って錬成運ないんだろうか?」

「偶々じゃないかな……たぶん」

「ステータス低い方が成功しやすいなら攻撃+1の投げナイフがあれば良いのに」

「ナイフじゃないけどあるよ」

「あるの!?」


マリが棚から取り出したのはメスだった。


「メスはちょっと……」

「キザすぎる?」

「いや、単純に実験器具を投げるのに抵抗がある」

「あぁ、ビーカーで飲み物飲まないタイプの理系だもんね」

「大学の頃何故か別学部の人に『ビーカーでコーヒー飲んだりするの?』って二回くらい聞かれたんだよね……そんなにビーカーでコーヒー飲みそうな顔してる?」

「それ多分ナンパだったんじゃないかな……どっちかって言うと文系っぽい顔してるよ」

「ナンパの仕方斬新すぎない?」

「そんなもんだよ。こっちはどう?」


取り出したのは注射器。


「同じだよ!」

「ダメか〜」

「ていうか何でこんなのあるの」

「中に毒入れたら強いかと思って用意したの。でも試したら普通に毒投げるのと同じダメージだった」

「なるほど……試行錯誤の名残りなのか」

「メスは単純に素材切るのに使ってる」

「まぁそのために作られた道具だからナイフより使いやすいだろうね」

「あとはコレとコレかな〜」


最後に出てきたのは柄付き針と大きめのトゲのようなものだった。


「柄付き針と……これ何?」

「棒手裏剣だよ」

「まともなのあるじゃん。最初からこっち出してよ」

「柄付き針は木製の柄が付いてるから『木材加工』スキルがないと作れないんだよね。自力じゃ量産できない」

「棒手裏剣は?」

「金属製の小物は『錬成』で加工できるから大丈夫。ただ攻撃+5なんだよね」

「とりあえずやってみて考えるよ」


結果、10回連続で成功したので棒手裏剣はコウのお気に入りとなったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ