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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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第一回闘技大会 予選2

あの場から脱兎の如く逃走してからどのくらい経っただろうか。


(誰とも……誰とも出会わない……!)


謎の襲撃者を押し付ける先が全く見当たらない。かなり移動したので流石に撒けたのではないかと思うが、不安なので誰か他のプレイヤーとエンカウントしたいところだ。


そんな事を考えている内に森の反対側まで来てしまった。仕方なく立ち止まって草原を伺う。


(遠くに集団が居るみたいだけど、此処からじゃ流石に届かないな)


投擲できる距離ではなかったので諦めて森を見回す。すると採取ポイントが次々に消えていく場所があった。

恐らく回復中のプレイヤーが居ると踏み、急いで現場へ向かう。回復し切る前に行かなくては。



移動中も微かな戦闘音が聞こえて落ち着かない。残り時間が半分を切っているので皆スコアを稼ごうと必死なのだろう。


採取ポイントがぽっかりと無くなっている場所が近いので、気付かれないようにそっと近づく。


(居た……)


大楯を持って金属鎧を着たプレイヤーが周囲をキョロキョロと落ち着きなく見回している。鑑定すると職業は『大楯使い』と『中級剣士』、残りHPは三割程だった。


僕の攻撃力だと倒すのは難しいかもしれないが、相手はこちらに気付いていない様子なので見逃すのも惜しい。

そこで、出血を付与した棒手裏剣を遠くからチマチマ刺していく事にした。今までは主にアイスピックと爆薬を使用していたので、棒手裏剣は大量に余っている。


感覚を研ぎ澄ませて静かに狙いを定める。

──ひと呼吸の間をおいて、三本の棒手裏剣が吸い込まれるように相手の喉に突き刺さった。


「……っ!? 誰だ!」


当然答える訳が無い。隠れながら狙撃位置を変えて再び棒手裏剣を投擲する。


「くっ……」


姿の見えない敵を警戒した男が盾を構えて体の前面を隠す。しかしその時には既に移動していたコウは、彼の背後から鎧と兜の隙間を狙って棒手裏剣を投擲した。


針に糸を通すような正確さで頸に刺さった攻撃に焦ったのか、男が盾を構えたまま慌てて振り返る。そのままジリジリと後退して背中を木にくっつけた。


(でも、それだけじゃ防げないよ)


今度は斜め後ろに移動して肘の内側の鎧の継ぎ目へ投擲。その後も何度か剥き出しになっている部分を狙って攻撃していると、出血の状態異常も入ってHPの減るスピードが上がる。

盾役なだけあって精神値が高いのか中々出血にならなかったが、蓄積ダメージを積み重ねて無事倒すことができた。


(これでスコアは14……えっ、あと12分!?)


どうやら思ったより時間が経過していたようだ。これなら諦めて別の獲物を探していた方が効率的だったかもしれない。

自分の死亡数はスコアに影響しないので、ここからはたとえ見つかろうがキル数を稼ぐことを優先しよう。



急いで森を出て草原を走る。見晴らしが良いのでプレイヤーはすぐに見つかったが当然相手からも認識されている。

職業は『中級魔法使い』と『剣士』だが、このレベル帯で『中級剣士』になっていないのなら剣のスキルは殆ど使っていないと考えてよいだろう。


(魔法使いか……なら接近戦に持ち込む!)


撃ち込まれる火魔法を高い速度値で避けつつ棒手裏剣で牽制、素早く懐に入ってアイスピックで喉をひと突きにする。


「この……ッ!」


魔法使いが裏拳を入れようとしてきたので半歩下がって紙一重で回避する。組み合いぐらいの間合いまで近づけば剣も振れないし、相手は格闘慣れしていないようで上手く距離を取る事もできずにわたわたしていた。


手の中でアイスピックをくるりと回転させて逆手に持つ。腕を伸ばし切れないほどの至近距離なら逆手の方が振りやすい。


ガンガンガンガンッ!


「ひぅっ!?」


顔面に何度も振り下ろされるアイスピックに魔法使いが怯えた声を上げて両手でガードしようとする。

実は何故か頭部は急所ではないので、ダメージ的には喉を攻撃した方が効率が良い。しかし、格闘慣れしていない相手なら顔を滅多刺しにされれば怯むかと思いやってみたのだが、思っていた以上に効果があったようだ。

鑑定すると残りHPは半分ほど。


「こ、降参、降参です!」


魔法使いが光になって消え、コウのスコアがプラスされた。HPはまだ残っていたが降参と言えばキルされたのと同じ扱いになるようだ。

残り時間はあと7分。



周囲を見回すと、森の端に魔法使いらしきプレイヤーが居た。此方を伺っている様なので先程の戦闘を見ていたのかも知れない。


(……っ、無理だな)


鑑定すると職業は『暗殺者』と『闇魔術師』だったので関わらない事にする。『暗殺者』については知らないが、『闇魔術師』は『魔法使い』の派生職『闇魔法使い』のさらに上位職だった筈だ。

ステータスも速度値がかなり高いため投擲は避けられそうだし、技術値も高いところを見るにコウと同じく攻撃力を補う装備やアーツを持っている可能性が高い。


しかし後退しようとしたコウを突然の暗闇が襲った。


(煙幕か!?)


だとしたら効果範囲から逃れなくては。

そう思い先程のプレイヤーとは逆方向に全力疾走する。幸い数秒で周囲が見えるようになったが、走っている間は近くに何度も魔法が撃ち込まれた音がしていて肝が冷えた。攻撃の余波を喰らったらしくHPも二割程しか残っていない。



《タイムアップ!》


システムメッセージが目の前に大きく表示されて周囲が白い光に包まれる。一瞬の浮遊感の後、光が消えてコウは待機室の中に戻っていた。


「どうだった〜?」


マリがのんびりと尋ねてくる。どうやら全員部屋に戻されたようだ。

僕はマリに答えようとしたが、その前に鏡から司会の声が聞こえてきた。


『それでは本戦出場者を発表します! 本戦出場者は〜……』


ドゥルルルル……とドラムロールが鳴って全員の視線が鏡に集まったが、僕はこの発表に疑問を抱いていた。


(一人一人読み上げていくのは無理では……?)


そしてドラムロールがピタリと止まる。


『メッセージにて個別にお送りします!』


(ですよね)


ぽこんとメッセージが届く。

ドラムロールまで鳴らしたのに……と思いながら開いてみると、本戦出場決定のお知らせとトーナメント表だった。

予選での順位は3位。僕以上にスコアを稼いだ人について知りたかったが、自分の順位しか書いていない。


「危なかったーー! 8位!」

「ギリギリだったね」


マリとユキも本戦出場を勝ち取ったようだ。


「3位だったよ」

「俺は6位だな」

「二人とも凄いじゃん!」

「全員出場だね」


皆でハイタッチを交わして出場を祝う。

明日から本戦が始まるが、トーナメント表を見るに各部門それぞれ20チーム以上あるのでこの中から錬金術師で勝ち抜くのは難しそうだ。


「思ったより多いな……」


ケイが苦い顔をしている。ケイもまたソロ戦向きではない職業なので厳しいのだろう。


「予選フィールドは多分2つあって、さらに同じスコアのチームもあったんだろうね」


僕の出場部門はABCの3ブロックに別れている合計22人だ。そのため2人はシードで一戦少ない。


(ん? この人……)


トーナメント表には名前と顔写真が載っているのだが、僕と同じCブロックに入っているシード選手の一人が最後に見かけた闇魔術師だった。もしかするとシードは予選で1位と2位の人なのかも知れない。


もう一人の方は顔の横に装飾の多い杖が写っているので魔法使い系だろう。

というか本戦出場者は全体的に魔法使いっぽい人が多い気がする。遠距離攻撃や範囲攻撃が予選のスコア稼ぎと相性が良かったのか?


「お互い頑張ろうね!」


マリの愛らしい鼓舞に頷きで返す。

装備はもう変更できないが、せめて魔法使いへの対策を考えておこう。

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