表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
58/91

第一回闘技大会 予選1

パッと視界が切り替わってコウは深い森の中に立っていた。


「うわっ!?」


僕ではない。咄嗟に声のした方を見ると、尻餅をついた魔法少女のような姿のプレイヤーがいた。恐らく座ったまま転送されてしまったのだろう。

さっと周囲を見回して近くに他に人が居ない事を確認し、隙だらけな少女に駆け寄り喉に冷たく光るアイスピックを突き刺す。


「がふっ……」


勝敗は一瞬で決した。

本来なら僕の筋力値での一撃キルは難しいのだが、短剣の一種であるこの【魔鉱のアイスピック】にはステータス補正が無い代わりに『技術値によって攻撃力を補正する』と『急所攻撃時に攻撃力が上昇する』という二つの効果を付与してあるのだ。

それに、相手は魔法使いらしき装備だったので防御値を上げていなかったのもあるだろう。


(フィールド内の人数は分からないけど、少なくはない筈だ。一人三回の残機もあるから投擲アイテムはなるべく温存しておきたいな)


光に変わっていく少女を横目に、素早くその場を離れて背の高い草の中へと身を隠す。白銀の髪に白衣という目立つ色合いではあるが、隠密スキルはレベル5なので他プレイヤーからはかなり見え難くなっている筈だ。


視界の端でスコアカウントが1になっている。キル数だろう。

片膝をつきながら周囲を伺っていると、ふと足元に薬草が生えている事に気が付いた。どうやらこのフィールドでも採取ができるようだが、錬成陣を持ち込んでいないのでこの場で錬成はできない。

薬師なら錬成陣無しでも薬品を調合できただろうが、僕は中級錬金術師なので出来るとしても精々『消耗品効果上昇』スキルで効果を上げるくらいだ。


薬草だけでも多少は回復するので、ポーションが無くなったら使うか……と思った瞬間、脳裏に閃きが走る。


(手負いのプレイヤーなら薬草を採取するのでは!?)


採取スキルがあるとアイテムを採取できるポイントが淡く光って見えるのだが、コウはスキルレベルが高いのでかなり広範囲まで分かる。

薬草一つの回復量は高レベルプレイヤーからすれば微々たるものなので、採取ポイントがどんどん消えていく場所にHPが少なくなったプレイヤーが居るはずだ。


(キル数は最後に攻撃した者に追加される……漁夫の利を狙うのが安全かつ効率的だな)


防御力が低いので正面切って戦うのは不利である。暫くは身を潜めて他のプレイヤーの動向を探ろう。



探索している内にメニューからマップを見られる事に気がついた。コウの居る場所は中央にある小さな森で、フィールドの端へ行くと草原や川があるようだ。


(身を隠しやすい場所から出たくはないけど、敵も隠れ易いから索敵し辛いんだよなぁ)


とりあえず森と草原の境くらいまでは行ってみようか、そう考えてフィールドを移動していると何処かから剣戟の音が聞こえた。

音の方へと近づいてみると剣士同士の戦闘が行われている。


(小楯と片手剣のオーソドックスな剣士と両手剣か……)


遠くから観戦していると、自分の他にも様子を伺っている者が居る事に気付く。どうやら皆考える事は同じようだ。

このまま此処に居ても、剣士達の勝敗が決した後に漁夫の利を狙う者達同士での戦闘に突入するだけだろう。


もしや他にも潜んでいる者が居るのでは……? と周囲を見回すと、此方にペタペタと歩いて来る白いアヒルが目に入った。


(このフィールドにもモンスターが居るのか……)


何とは無しに鑑定してみる。



ーーー


【シャウト・ダック】Lv.100

種族:シャウト・ダック


筋力:5

防御:120

魔力:5

精神:120

速度:15

技術:5


〈スキル〉

物理耐性Lv.10

魔法耐性Lv.10

魔力探知Lv.10

索敵Lv.10

大声Lv.10


ーーー



(いや硬っ……! イベントモンスターか!?)


プレイヤーでもないので倒してもキル数にカウントされないだろうし、関わるだけ時間と労力の無駄である。刺激しないようにそろそろと距離を取るとターゲットをもう一人の隠れているプレイヤーに移したらしく、そちらへ方向転換して向かって行った。そして。


「グァアアーーーー!!!」

「ぎゃー!?」


突然背後で叫び出したアヒルに隠れていたプレイヤーが飛び上がって驚き、剣士達も気付いたようで互いに間合いを取りながら叫び声の上がった方向を伺っている。

気付かれたプレイヤーは慌てて逃げだし、コウもまた自分がターゲットにされては面倒だとその場を後にする。幸いアヒルの速度値はかなり低いので追いつかれる事は無さそうだ。


(同じ場所に留まるなという事か……)


FPSでも芋砂は嫌われるし仕方ない。

定期的に移動しながら遠くからプレイヤーを鑑定して防御値が低ければ不意打ちで急所攻撃、そうでなければHPが減っている者に追い討ちをかけてキルしていこう──そう方針を固めてプレイヤーを探し始める。




フィールドに飛ばされてから三十分。

コウの現在のキル数は3、死亡数0だ。全て不意打ちで一撃キルしたので攻撃は一度も当たっていない。


(予選終了まであと半分。もっとスコアを伸ばさないと本戦には入れないだろうな)


森の切れ目から草原を伺う。そこには一時的に手を組んだらしいプレイヤー達の姿があった。

彼らの相対しているプレイヤー達もチーミングしており、六対四での戦闘が行われている。四人の方は数こそ劣っているがプレイヤースキルが高いのかやや優勢のようだ。


ある程度待って両方のHPが削れてきたところで爆薬を五本一気に投擲する。


瞬間、凄まじい爆音が響き、辺りが巻き上げられた土煙に覆われた。景色は見えないが視界の端でスコアが増えていく。


──だが、まだ一人残っている。


現在のスコアは12。イベントのために取得していた魔力視で土煙の向こう側を透かし見ると、ぼんやりと光る人影が確認できた。


きっと防御に極振りしたプレイヤーであろう人影に向かって追加の爆薬を投擲する。魔力視のレベルが低いのでかなり見え辛いが、爆薬の効果範囲は広いため当たらなくとも近くに投げ込めればそれでいい。


スコアが増えて13になる。


これで本戦に入れる可能性がぐっと高くなったと気が緩んだ時、パキンと音を立てて【忍耐の指輪】が割れた。砂になってサラサラと崩れていく指輪に、自分が何処からか攻撃を受けた事を察して咄嗟に煙玉を地面に叩きつける。


(攻撃された事すら分からなかった……!)


森の奥へと走る。


コウの隠密レベルが決して低くはない以上、相手は高確率で格上という事になる。この場に留まるのは危険だ。

何処から攻撃されているのか分からないので逃げる方向は賭けになるが、速度値の高さに任せて走り回れば他のプレイヤーにも遭遇する筈。それはそれで危険だが、相手が追いかけてきた場合、爆速で逃げ回るコウより別のプレイヤーに標的を移すのではないだろうか。だって誰を倒しても増えるスコアは同じなのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ