お土産(別視点)
パシュッ! と鋭い空気音がして一人が倒れ、マリオンくんは狼狽えたもう一人も即座に撃ち抜いた。躊躇なく発砲したマリオンくんと動かなくなった二人に、店内が静まり返る。
「こ、殺しちゃったの……?」
「いえ、麻痺の状態異常に罹っているだけですのでご安心下さい。これは麻酔銃ですからね」
恐る恐る尋ねたけど、殺した訳じゃなかったみたい。良かったぁ……。
「ちょっとアンタ、前にウチらをキルした奴じゃん!」
「あっ本当だ! お前男だったのか!?」
「あぁ、あの時の害悪プレイヤーですか。ボス戦の横取りはもう止めた方が良いですよ」
ビシッと指差したユーゴ達をマリオンくんが冷めた目で一瞥し、迷惑そうに言い放ってカウンターに置いてあるベルをちりりんと鳴らす。
「ボス戦の横取り……?」
「いや違う! こいつが負けそうになってたから助けようとしたんだ!」
「盾士なんですから囲まれたくらいで死にませんよ」
リナが眉を顰めて呟くとユーゴが慌てて否定する。しかしその主張はマリオンくんに一刀両断された。
「マリオンくんは有名プレイヤーだけどPKしてるなんて噂無かったよ。勘違いだったんじゃない?」
「うっ……」
マリオンくんを擁護するリナの言葉にムググと悔しがるユーゴ。そこにベルで呼ばれたらしい筋肉質な体つきのウェイターさん達がやって来る。
「オーナー、お呼びでしょうか」
「この二人を『客間』に移動させてください」
「かしこまりました」
逞しいウェイターさん達が暴れた男達を何処かに運んでいく。麻痺が治ったらまた暴れるかもだし、ここに置いておく訳にはいかないよね。
「まぁどう思おうと勝手ですけど、店で騒ぎを起こさないで下さいね。営業妨害ですので」
「お、俺からケンカ売った訳じゃねーよ!」
「オーナー、この方は暴れた男を止めようとしてくださったんです」
「そうだったんですか……」
ウェイターさんが庇ってくれたので、マリオンくんの声音も柔らかくなった。
「ではお礼をしなくてはなりませんね」
そう言ってカウンターから取り出した何かを持って来たけど、何だろう?
「優待券とお土産のチョコレート詰め合わせです」
「……まぁ、こないだの事は水に流してやるよ」
「今回仲裁に入ったそうですが、危険ですのでもうしないでくださいね。この辺は治安が悪いので店には警備スタッフも常駐していますから」
調子に乗って上から目線な事を言ったユーゴにすかさず釘を刺すマリオンくん。
警備員が居るならユーゴの行動は有難迷惑だったよね……なのにお礼の品もくれるなんて大人だなぁ。やっぱり年上なのかも。
10分無料の優待券が五枚綴りで三セット。チョコレートはコーエンさんが挨拶回りで渡してた動物柄のやつだ。
「ねぇ、このチョコレートってメニューに無かったんだけど、売ってるの?」
「こちらは持ち帰りメニューです。まだ準備が出来ていないので入口から出入りしていますが、向こうにある出口に土産物コーナーを置く予定なんですよ」
「お土産? 見てみたーい!」
「構いませんよ。此方へどうぞ」
メリナとルーナが聞いてくれたおかげでお土産も見せてもらえる事になった。あたしは緊張し過ぎて通常メニューも覚えてなかったから、どんな商品があるのか楽しみ!
「此方です」
「わぁ可愛いー!」
「へぇ、お菓子だけじゃなくてポーションとかも売ってるのか」
動物柄のチョコレートやクッキーに、肉球型のマドレーヌや猫耳がついたドーナツ、そしてテイムモンスター向けのお菓子など、沢山の商品が並んでいる。トウマの言う通り、マリオンくんの露店にあったポーションや珍しいアイテムも売っているようだ。
「リトルパンテラ誘引クッキーもある……5000G!?」
「ああ、最近転売が酷くて値上げしたんです」
「うう……お金が足りない……!」
「露店では以前と同じ値段で販売していますよ」
「本当!?」
「露店に購入上限がついたので買い占めを防げるようになりましたからね」
他のアイテムも露店で見た時よりかなり高く設定されてるみたい。色々と見て回っていると、レジの奥にある従業員用の扉が開いて中からコーエンさんが出て来た。
「コーエンさん……!?」
今日だけで何回コーエンさんに度肝を抜かれたことだろう……なんとコーエンさんはコックコートを着ていたのだ。しかも髪は後ろでお団子にしてコック帽はお洒落なベレー帽風。
(あたし達は今日コーエンさんに殺されるのかもしれない)
死因は萌え死だ。あたしは最早一周回って冷静になった頭でそう思った。
──まぁ後から思い返したら全く冷静な考えじゃなかったけどね。
最後の最後までコーエンさんに翻弄されつつ、あたし達はお店を後にした。
ちなみにコーエンさんは焼き上がった誘引クッキーを陳列しに来たところだったらしい。あれってコーエンさんの手作りだったのか……。
「うぅ、なんでわたし猫に産まれなかったんだろう……コーエンさんの手作りクッキー食べて可愛がられる生活がしたいよぉ……!」
「リナ……」
帰り道、本気で悔しがってるリナに何と言って良いのか分からず口籠った。リナの嘆きを聞いた女子二人は恋バナかと目を煌めかせたけど、トウマは気まずそうにしてるしユーゴは死んだ目になってる。
「可愛いコには大抵彼氏が居るんだよね……」
「……彼氏ではないだろ」
トウマがどこか遠くを見ながら呟いて、ユーゴが力なく言い返した。




