表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
52/91

なんてことないマリの朝(マリ)

閑話的な日常回です。

今日は大会前のアップデートが入る日なので、昼過ぎから夕方までログインできない。時間をずらしてゲームをしようと考えて普段より早起きし、洗顔と歯磨きを済ましてリビングへ行くと、日課の筋トレをしていたコウと目が合った。


「おはよう。今日は早起きだね」

「おはよ」


ウォーターサーバーからグラスに水を注ぐ。起きてすぐに常温の水を飲むと健康に良いと聞いたので、冷水とお湯を交互に注いでぬるま湯を作って飲み干した。

そして特に理由は無いが、腕立て伏せをしているコウと床に敷いたヨガマットの隙間に体を捩じ込んで筋トレの邪魔をしておく。


「潰しちゃうよー?」


何故かちょっと嬉しそうにしているので、よじよじと反対側に這い出てソファーに寝転ぶ。名残惜しげに呼んでいるのでそちらに目を向けると、肘をついて体とマットの間に空間を作ったコウがチラチラと此方を見ていた。確かプランクとかいう体勢だった気がする。


「おいでよー……」

「私ノーと言える日本人だから……」


起き上がるのが面倒になったので目を閉じ、コウの残念がる声を聞きながらうとうとと微睡んでいるとお腹にぽふんと顔を埋められた。


(私、猫じゃないんだが)


ちょっとくすぐったいが我慢していると、一頻り吸って満足したのかブランケットでぐるぐる巻きにされる。


(赤ちゃんでもないんだが……)


しかしそのまま抗議する事も無く横たわっていると、ぬくぬくしたブランケットに包まれて段々と意識が薄れていった。



バタンという物音で目を覚ますとコウが居なくなっている。時間を確認したがまだ出勤時間ではないのでジョギングに行ったのだろう。


(さっきのは玄関扉の音かな……)


どうやら僅かの時間だが眠ってしまっていたらしい。

もそもそとブランケットから脱出してソファーから身を起こし、起き抜けでぼんやりしながらも朝食の用意をする。朝はいつも低血圧でふらふらしているので、食欲が無くても食べるように気をつけているのだ。


フリーズドライの卵スープを入れたカップにお湯を注いでスプーンで暫く掻き混ぜ、そこにご飯をひとすくい投入すれば卵雑炊の完成だ。栄養価も高く食欲が無くても食べやすいので、朝食は大抵これで済ませている。


鉄分入りのフルーツジュースを飲みながら卵雑炊を食べ進める。

マリは唾液に含まれるアミラーゼが多い体質らしく、食べている内に雑炊がサラサラになってしまうのだが、デメリットも特にないので今まで気にした事はない。同じ体質であんかけがサラサラになるのを嫌がる人もいるらしいが、マリは猫舌なので冷めにくいあんかけはそもそも食べない。


「ただいまー」

「おかえり」


食べ終わった時に丁度コウが帰って来たのでルイボスティーを淹れてあげる。コウはカフェインで胃が痛くなるため、ストレートのコーヒーや紅茶が苦手なのだ。


「ありがとう」


朝はパン派であるコウの朝食は、ノンカフェインのルイボスティーとベーグルパン、そして作り置きの具沢山ベーコンサラダだ。マリも椅子に座り直してデザートのヨーグルトを食べる。

デザートを食べるつもりは無かったのだが、いつもは朝食を別々の時間に食べているのでせっかくだから偶には一緒に食べようと思ったのだ。

マリが会社勤めだった頃は毎日一緒に食べていたが、独立してフリーランスになってからはコウが家を出る時に何とか起きて、見送った後は二度寝するというのがルーチンになっている。



「行ってきます」

「いってらっしゃーい」


玄関でコウにぎゅっぎゅっと力一杯ハグをしてからお見送りする。最近柔軟剤を変えたので、強く抱きしめるとザクロの良い匂いがした。


(さーてゲーム……の前に一応メールチェックしとくか)


ふふんふふんとご機嫌で仕事部屋に行き、今抱えている案件は納期に余裕があるので軽い気持ちでパソコンを起動してメールを開いたが、なんと急ぎの作業が発生していた。


(はぁ!? 今更仕様変更とか……ふざけてる)


マリの嫌いなものは互換性のないアップデートと納期直前の仕様変更である。今回は納期にはまだ余裕があるが、ここまで進んだ作業を根本的に修正しなくてはならない。


(えーん、死)


急いで作業に取り掛かる。

今は大きい案件を抱えていないので割と暇だが、時期によっては徹夜になる事もあり、そろそろ体力的にキツくなってきた。生活は安定しているので、もう専業主婦になろうかという気持ちもあるが、人生何が起こるか分からないので定職を捨てるのは抵抗がある。


(もしもコウが働けなくなったら私が養わなきゃいけないし……)


なにせコウは昔ストーカーに付き纏われてノイローゼになった事があるのだ。コウの同僚は全員男性で部署移動も仕事柄ほぼ無いのは安心だが、もし女性社員が入ってその人もストーカーになるような事があればノイローゼが再発するかも知れない。

そうでなくとも、怪我や病気が突然襲ってくる可能性だってある。



どうにか作業を終えた頃にはアップデートも終わった夕方になっていた。

ゲームにログインするとメッセージが届いていたので軽く目を通してみたが、アップデートで変更された内容だったのでさらっと読み流し、自分に関係がありそうな部分だけしっかり読み込む。


(えーと職業ごとの変更点……大きいものは特に無し。……露店に一人あたりの購入制限が追加!?)


いつかは来るだろうと覚悟していたが、ついに収納鞄代わりに出来なくなったか。


(あとはレーティングの変更点……血液の色を赤から黒に修正か。私は流血描写無しだから無関係だけど、コウには後で伝えておこう)


一通り読み終わったのでメッセージを閉じてベッドからのそのそ起き上がり、飛空艇に乗ってエストへ向かう。先ずはテイムモンスター達に餌を与えに行かなくては。


エストのホームに入ってガサゴソと音を立てながら餌を準備していると、耳聡く聞きつけた腹ペコモンスター達が足元に大集合していた。


「あら〜っ、ちびちゃん達可愛いねぇ〜〜! もうちょっと待ってねぇ」

「ンナーぅ」

「きゅうきゅう!」


家族の前ですら絶対に出さない喋り方で話しかけながら、固形飼料を餌皿にざかざかと盛っていく。


「できたよぉ、おいで〜〜」

「キュキュッ」

「ナーぅ」

「んあ〜きゃわいいねぇ〜、おいちぃ?」

「ンナ〜」


餌皿に顔を突っ込む毛玉達の後ろに回り、高く掲げられたふかふかのお尻を眺める。排泄しないので綺麗なお尻だ。うーん、きゃわゆい。

ネズミ達も大福のようなまんまるの後ろ姿で大変愛らしい。合格ッ!


何に対する審査なのかは分からないが、あまりの可愛さに脳内で厳めしいおじさんが合格を言い渡している。あぁ〜、癒されるんじゃ〜〜〜。


マリは猫も鼠も特別好きな訳ではないが、感性が世間と大きくずれている訳でもないので、一般的に可愛いと言われる動物は大抵可愛らしく感じる。

今の悩みは大会後に猫達のレベルを上げて進化させたいのだが、でかにゃんこに埋まりたい気持ちとずっと子猫のままでいてほしい気持ちがせめぎ合っている事だ。


クソな現実とは違って幸せな悩みを抱えながら、マリはのんびりとゲームを進める。

──さてと、今日は何をしようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ