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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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ワイバーン戦

「ヂヂヂィッ!」


二匹の出血ネズミがワイバーンの喉に喰らい付く。リーダーとドルオーテだ。


「ドルオーテ!? いつの間に……っ」


どうやら誰も気付かぬ内にワイバーンの体をよじ登っていたらしい。マリの指示だろうか?


小さいとはいえ筋力値だけならプレイヤー並みにあるネズミ達の攻撃に踠くワイバーンだったが、苦難はまだ続く。後方から飛んできた白鳥のようなシルエットの灰色の鳥の群れが襲いかかった。


「クァーーーッ!」

「ギャオッ!?」


あらぬ方向からの攻撃に頭を揺さぶられたワイバーンはふらふらと不安定に飛んでいたが、鳥達の止まぬ猛攻に一旦地上に降りることにしたらしく、ぶるぶると頭を振って鳥達を追い払いながら高度を下げる。


「『リフレクト』!」


しかしそこにはマリが待ち構えていた。攻撃を受けないと使用できないリフレクトだが、降りてくる真下なら『のし掛かり』攻撃への反撃として当てられるようだ。


「ギャルァ……!」


リフレクトが与えるダメージ自体は低いので、ノックバック耐性があるらしいワイバーンにはあまり効いておらず苦々しい視線を向けられただけだったが、マリの役目はヘイトを集めることなので問題無い。


ワイバーンがひょいとステップを踏んで後ろに下がったかと思うと、横にくるりと一回転しながらマリに向かって尻尾を薙ぎ払う。


「『ガード』」


ギャリッと硬質な音を立てて尻尾が止まった。初めて見る技だが、盾か大楯のアーツだろう。

動きが止まった隙に追加の獣寄せを投げつけると、今度は左脇腹に当たった。


(急所の喉に当てたいけど、側面からだと難しいな……)


かと言って正面は木がないので隠れられないし、コウの防御力だと一撃当たっただけでも即死しかねない。ちなみにケイも紙装甲で、ユキはまだレベル16なので全体的にステータスが低いため、マリ以外の全員が隠れるしかないのだ。


「グルルゥ……」


ワイバーンは不快そうに唸り、獣寄せを投げた犯人を探して周囲を見回している。


この作戦は隠密できないと詰むので、ケイは戦闘開始からずっとバフが途切れないよう開いたメニューと睨めっこしてパーティメンバーの状態を確認しており、隠密レベルの低いユキはヘイトを集めないように回復以外は極力行わない。

最初の予定ではコウが速度で攻撃を回避しながら爆薬を投げ続け、ケイの魔力バフを受けたユキが隠れながら光魔法を当てていく予定だったが、獣寄せが効いているので攻撃はそちらに任せて良さそうだ。


「バウワウッ!」

「ギャルァァア!!」


新たに呼び寄せられた狼の群れがワイバーンの脇腹に噛みつく。次々にやってくるモンスター達に苛ついているのか、ワイバーンは怒りに燃える片目で狼達を睨むと一際大きい声で咆えた。


「ギャンッ!?」


またしても足からがくりと力が抜けた。狼も引け腰になったが、それでもガルガルと警戒するように唸っている。


(咆哮で逃げないという事は、やはり獣寄せは舐め取られると効果が無くなるんだな)


あと数分で獣寄せの使用時間が過ぎてしまう。急いで最後の一本を投擲したが、焦ったためか狙いがずれて翼に当たってしまった。


(喉か腹に当てたかったのに失敗した……!)


「ヂヂィッ!」


鋭く鳴いたドルオーテ達が翼に噛みつく。腰が引けていた狼達も理性を失ったように翼を攻撃し始めた。


「リーダー、ドルオーテ! 喉を狙って!」


ネズミ達はマリの言葉も聞こえないというように翼を執拗に狙っている。もしかしてマリの指示で攻撃した訳では無かったのだろうか?


(そうか、テイムモンスターにも獣寄せが効いてしまうのか)


気付いたところで手の打ちようが無い。ワイバーンがバサバサと大きく羽ばたいてネズミと狼を振り落としつつ空中に飛び上がる。と、そこに先程の鳥達が戻ってきて、未だに獣寄せが付着している翼をすれ違いざまに攻撃した。


「ギャウォオッ!?」


度重なる襲撃で重点的にダメージを喰らっていた左翼の皮膜が破れ、ワイバーンが空中でがくりと体勢を崩す。なんとか立て直すも、高度を上げられないようですぐに地上に逆戻りしてくる。


(──部位破壊か!)


飛行手段を潰せたのは大きい。この調子なら想定より早く倒せそうだ。


「グゥオオォォオーーー!!」

「くぅ……ッ」


ワイバーンも危機を感じているのか、マリに向かって凄まじい咆哮を放つ。そして動けなくなったマリに突っ込んでいき、鋭い鉤爪をめちゃくちゃに振り回して大暴れし始めた。


「うっ、あぐッ!」


車にはねられたように弾き飛ばされたマリの小さな体がどしゃりと地面を転がった。追撃するワイバーンの大きな顎が容赦なく閉じられ、強く挟まれたマリの胴からはミシミシと不穏な音がしている。

防御値が低ければ真っ二つにされていただろうが、噛み砕けなかったことが不満なのか、ワイバーンは犬が木の棒で遊ぶかの如くマリを咥えたままぶんぶんと振り回す。


「『ヒール』『リカバー』!」


ごりごりとHPが削られるマリに、ユキが小回復と継続回復を飛ばした。


「グギャ……?」


ぴたりと暴れるのを止めたワイバーンの口からぼとりとマリが落ちる。HPはある程度回復したが振り回されて何らかの状態異常を受けたのか、行動が阻害されているようで上手く動けないようだ。

しかしそんなマリに構うことなく、ワイバーンはユキに目を留める。


(まずい……!)


ヘイトを分散させようと爆薬を投擲したが、ワイバーンは腹に直撃したにも関わらずコウを無視してユキの方へと体を向ける。


「ギャォォオッ!!」

「ユキ!」


ワイバーンがドッドッドッと力強く地を踏み締めて走り、ユキが覚悟を決めたように杖を向けた。


「『レイ』『レイ』『レイ』!」

「ギギャァアアッ!?」


ユキが温存していたMPを使い切る勢いで光魔法の連撃をお見舞いする。残っていた右目を焼き、頭と喉にも一発ずつ撃ち込まれた魔法にワイバーンの突進が止まった。


その隙にコウはユキの元へと素早く移動してガッと肩に担ぎ上げると、ワイバーンの横をすり抜けて反対側の木立に急いで身を隠す。若干重量オーバーだったが重装備のマリ程ではなかったのでスピードも殆ど落ちずに走り切れた。


「ギャルァアアア!!」


ブチ切れたワイバーンがドスドスと荒々しく足を踏み鳴らしながら、ユキの居た辺りの茂みを手当たり次第に引き裂いている。コウはユキにその場に留まるよう手振りで指示を出し、気付かれないようゆっくりとワイバーンへ近づく。


じりじりと距離を詰めていると、漸く動けるようになったマリもワイバーンの背後から迫っており、そしてその無防備な背中に爆薬を投げつけた。


「ギャルォオッ!」


バッと振り返ってマリを見たワイバーンに、コウも負けじと爆薬を投擲する。ワイバーンはもう怒り心頭といった様子でコウに向かって走ってきたが、両目を潰されたせいで碌に周りが見えていないらしく、いとも簡単に避けることができた。


(これなら回避盾もできそうだな)


そう考えて棒手裏剣を投げてヘイトを稼ぎつつマリの方へ向かった。二人でやった方が盾役も安定するだろう。


「グォォォン!!」


ワイバーンは視覚を失ってよろめきながらも、断続的に刺さる棒手裏剣に誘導されてコウを追いかけてくる。


「『リフレクト』!」

「ギャッ!?」


しかし満身創痍なワイバーンは攻撃力も落ちていてもはや脅威ではなく、マリも余裕を持って反撃できるようになっていた。


王都への壁なだけあってHPが高く削るのが大変だったが、その後もマリが守ってコウが投擲による攻撃を重ねることで、遂にワイバーンは地に伏した。


「グギャォォ……」


巨体が淡い光に包まれて空気に溶けるように消えた。


「やっと終わったね」

「獣寄せが効いてたから、かなり短い方だと思うぞ?」


隠れていたユキとケイも出てくる。

そういえば、ユキに謝らなくてはならない事があった。


「ユキごめん、撮影してたのに僕焦って『ユキ』って呼んじゃった」

「ん? あぁ、俺の渾名って本名と掠ってもないし大丈夫じゃない?」


ユキの本名は幸雪こうせつだが、家族内ではセツを訓読みしてユキという愛称を使っているのだ。


「ユキのプレイヤーネーム噛みそうだしね……」

「なんでお前そんな名前にしたんだよ」


マリとケイからはユクテスワが不評なようである。


「というか生放送じゃないから後で編集できるぞ。そもそも公開は大会後の予定だしな」

「大会で使う予定のアイテムもバンバン使っちゃってるからねぇ」


ケイの言葉にマリが肩を竦める。確かに今公開されると名前が出なくても困ってしまうな。


「ま、とりあえずちゃっちゃと進もう。この先の航空便に乗ればもう王都に入れるんだからさ」

「それもそうだね。早くセーブポイントを更新したいな」

「俺は王都に用事があるからな。宿を取ったら別行動だ」

「じゃあ俺は神殿に顔を出しておこうかなー。異端審問官について何か判るかもしれないし」


各々の予定を話しながら航空便の停留場へと歩みを進める。目指す王都はすぐそこだ。

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