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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第一章 錬金術師
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出血ネズミと下級ポーション

とりあえず動きの確認だけしよう、と修練場を借りることに。受付でその旨を話すとカウンター奥の扉に通された。

扉の先は中庭のようになっており、この中はギルド所有の魔道具による結界で覆われているため仮に大魔法を放ったとしても大丈夫らしい。


「あの的にナイフを投げてみて」

「かなり距離あるしナイフ投げなんて初めてだけど!?」

「命中率はステータスの技能依存だから外すことは無いと思う。少なくとも私よりはプレイヤースキル高いはずだし」


いきなり言われて無茶振りかと身構えたが、投げてみるとあっさり当たった。それを見たマリが厳かに告げる。


「君に教える事はもう無い……免許皆伝だ」

「早くない?」


思わず突っ込んだコウだが、冗談ではなく本当にこれだけだった。


「そもそも武術経験者のコウに引き篭もりの私が教えられる事なんてなくない?」


コウの武術の経験とは幼い頃習ったテコンドーのことだ。

当時海外に住んでいたコウは自分のルーツである日本の武術を習いたいと考え、近所にあった空手道場に通っていた。

しかし、幼いコウは知らなかったのだ……海外ではテコンドーがしばしば空手と混同されていることを。

日本に来てからは辞めてしまったが、体の動かし方ぐらいは覚えている。


「錬金術の使い方とか教えることたくさんあるでしょ」

「それは生産スキルだから後でね」


そう受け流すマリに連れられてギルドを出た。町の中には用が無いので特に見ることもなく南の草原に出て、目当ての『出血ネズミ』を探す。

よくよく考えたら草原でネズミ探すのって相当大変では?


「真っ白いから動いてると目立つんだけどね。尻尾の先がライオンみたいに筆状になってる大きめのハツカネズミって感じ」


テイムするにはモンスターを弱らせるのかと思っていたが、むしろ攻撃すると敵対状態になってテイムしにくくなるらしい。


「見つからないようにこっそり近づいてテイムするか、限界まで痛めつけて心を折るの」

「極端すぎない?」

「強いモンスターや凶暴なモンスターだと、こっそりテイムが効き辛いんだって。今回は弱いモンスターだからこっそり行くよ」


草原に到着すると、ぴょこぴょこと動く薄緑色のウサギがいた。


「あれは草原ウサギ。割と何処にでも生息している弱いモンスターだけど、保護色だから背の高い草のエリアだと不意打ちされたりする」

「襲って来る感じはしないね」

「この辺はノンアクティブモンスターが多いんだよね。同じ種でもエリアによってはアクティブなんだけど、このエリアで襲って来るのは狼ぐらいかな」


草原は芝のように短い草花が生えていて見晴らしが良い。しかしネズミは見つからない。


「吸血持ちって他にどんなモンスターがいるの?」

「図鑑に載ってたのは湿地帯のヒルだけ。エストの廃坑にはコウモリが居るけど吸血は持ってないし、吸血鬼を探した人もいたようだけど見つからなかったみたい」


流石にヒルは飼いたくないな。ネズミを探すしかないか。

そう考えていると木の根元にチラチラと白いものが動いていた。


「……あっ、あれじゃない?」

「三匹居るね。見つからないように隠れて近づこう」


木の裏に回って足音を消すようにゆっくりと近づく。ネズミ達はまだ気づいていない。


「『テイム』……よし、一匹成功。『テイム』『テイム』……っ、気づかれた」


最後の一匹はテイム失敗だったようだ。

吸血ネズミはキョロキョロと周囲を見回し、こちらに気づいたようで走って来る。


たんっ。


軽い音を立ててナイフが突き刺さる。

地面に縫い止められて動かなくなったネズミは淡い光になって消えた。


「ありがとう、コウ」

「いや、なんか凄く遅く見えたんだけど……これってステータスの差?」

「うん、コウのサブ職業は『斥候』だから速度のステータスが高いの」


こうして話してると普通に感じるのに、なんだか不思議な感覚だ。


「戦闘時や速く動こうとした時だけ体感時間が引き延ばされるんだよ。普段から速かったら一緒に遊べないからね」


その後、草原を探索して計六匹のネズミをテイムした。


そのついでに薬草を採取しておく。錬金術師のスキル『採取』により薬草の位置が淡く光って見えるので分かりやすい。

薬草にも色々種類があり、誰かに教わるか植物図鑑を読むと鑑定できるようになる。マリがこのキャラを使っていた頃にやってくれているおかげで下級ポーションの素材となる『アルニカ』を採取できた。


「テイムでも討伐扱いになるからクエストも完了だね。ギルドに戻って報告しよう」

「了解」



ギルドに戻って受付に報告を終える。

次は錬金術の使い方か。ギルドの二階が自由に使える生産施設になっているようだ。


「楽しみだなぁ。実験ってワクワクするよね」

「うーん、ゲームだからかなり簡略化されてるよ。期待し過ぎない方がいいかも……」

「いやファンタジー世界観の中で現実と同じ製薬方法だとは思ってないよ。設備も全然違うし」

「それなら良かった。製薬関係者のコウには物足りないかと思ったよ」


いや寧ろゲームの中でまで仕事したくない。それに僕の部署がやってるのは試験だけだ。

そんな話をしながら上がったギルドの二階には左右の壁に向かって二つずつ、計四つの作業台が設置されていた。この設備もギルドの大きさによっては違うらしい。


「ここは無料で使えるけど見ての通り他の人から丸見えだから、受付で有料の個室を借りるか、資金力のあるクランだとホームを買ったりするよ」


エストにホームがあるので基本的にはそこの工房を使っていれば良い。何から何まで用意されているな。


「出先なら個室を借りるのが良いと思う。今回は錬金術師が最初から知ってるレシピだからここで良いかなって」

「レシピって掲示板に載ってるんだよね? 他の人に見られるとダメなの?」

「ダメじゃないけど、教えて教えてって絡まれたりする」


すぐに分かる事でも自分で調べようとしない人は何処にでも湧いてくるからな……。以前絡まれたことがあったらしいマリがうんざりとした様子で愚痴る。


「掲示板でネタバレしたくないって言われたけど、私に掲示板で得た情報聞いたら本末転倒じゃない? そもそも、町で聞き込みするなりNPCに教わるなりすれば正規の方法でレシピ手に入るのに」

「プレイヤーに聞くよりNPCに聞いた方がゲーム的には正しいよね」


マリの愚痴に相槌を打ちながら手を動かす。

鞄に入っていた錬成陣を作業台に敷き、その上に空瓶とアルニカを乗せた。


「『錬成』」


スキルを使うと錬成陣がふわりと光り、乗せていたものは瓶詰めの下級ポーションに変わっている。

なんか……思った以上に簡単すぎて、こんなものかっていう感じだ。


「一度作ったものは簡単に錬成できちゃうんだよね。納品分の三本を作り終わったらエストに戻って一から作る方法を教えるけど、ステータスもスキルレベルも高いから中級ポーションになっちゃうと思うんだ」


特に何も起きずに、さくさくと三本作り終わって受付に渡す。



さて、帰りも飛空艇だ。飛空艇はパスを持っていれば何度でも無料で乗れる。

運行時間は決まっておらず対応するパスを持っている人しか乗れない。チャーター機ということだろうかと思ったが、ギルドの入室システムと同じで他のプレイヤーには飛空艇自体見えないらしい。

飛空艇の待ち時間を無くするためと、頻繁に高速で行き来する飛空艇が視界の邪魔にならないための措置なのだろう。

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