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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第一章 錬金術師
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レーティングとクエスト受注

手すりのついたプールの飛び込み台のような乗り場で待機していると飛空艇が降りてきた。発着場となっている大穴は廃坑らしい。

下は頑丈そうな金網が張ってあるので安全とは言え、かなりの高所にちょっとドキドキしながら横付けされた飛空艇に乗り込む。


「下の坑道はダンジョン化しちゃって廃坑になったんだけど、まだ採掘は出来るから冒険者やNPCの鉱夫が掘りに来るんだ。奥に進むとモンスターとエンカウントするけどね」


意外だったが、NPCもダンジョンに潜るようだ。

冒険者ギルドが存在しているので当然といえば当然だが、何となくプレイヤーとNPCを分けて考えていた。


もしかするとプレイヤーだと思って仲良くなった人がNPCだったということも起きるのかも知れないな。

このゲームでは一部を除いてプレイヤーができることはNPCにも可能なので、NPCとプレイヤーを見分けるのはプレイヤーネームが表示されているかでしか判別できない。そのプレイヤーネームも設定で非表示にできるのだが。


「NPCって生き返るの?」

「死んだらそのままだよ。でもNPCは入口付近で掘ってることが多いし、鉱夫の殆どは種族的に防御の高いドワーフだから滅多に死なないかな」


滅多に?

偶には死ぬのか……。


「二回見たよ。どっちも地質学者みたいな服装だったから、素材集めに来た人間の錬金術師かもね」


ダンジョンの中は死体が残らない。

坑道に人が着ている形のまま中身が空になった装備だけが落ちていたらしい。軽くホラーである。

プレイヤーの死体も残らないが装備は一緒にリスポーンするので、それは間違いなくNPCだったのだろう。


ちなみにその装備は回収して売り飛ばしたそうだ。メンタルが強い。


「あれ、でもマリってホラー苦手じゃなかった?」

「ホラーは割と平気だけどグロテスクなものは苦手」


ホラーにはスプラッタが多いので見ないようにしているだけだったようだ。長い付き合いだが初めて知った。

このゲームはかなりリアルだが大丈夫だろうか?


「設定の『レーティング』を『12才』にすると怪我や血が見えなくなって人間も質感を抑えて若干アニメ調に見えるし、なんならモンスターもヌイグルミみたいに見えるよ」


それはそれで支障をきたすのでは……と思ったら、実際に攻略情報とクエストのストーリーが変わってしまって困った時もあったらしい。


「歓楽街のある町で薬を作って欲しいってクエストが常時依頼にあるんだけど、R18だと性病の治療薬なんだよね」


確かにそれはR12だと変えるしかない。


「攻略情報にはそれしか載ってなかったんだけど、私が依頼受けたらニキビの治療薬になってて」

「なんでニキビ……」

「R18の方の症状が体中の発疹だからそのまま使ったんじゃないかな」


それで必死でレシピ探したら、なんと性病の治療薬と全く同じものだったそう。変更されたのは薬品名だけ。


「私そのためにNPCの薬屋で一週間下働きまでしてレシピ手に入れたんだよ? 素材さえ知ってればレシピ無くても作れたのに」


思い出して静かにキレているマリを宥める。


レーティングが違う人同士で一緒に行動した場合、モンスターの見え方などは個別に適応されて、ストーリーはR12の方が適応されるそうだ。

R12で受けたクエストをR18でもう一度受けたらどうなるのか気になって尋ねてみたが、マリにも分からないとのことだった。


「気になるならやってみたら? エストの少し西にある『セイレン』って町の冒険者ギルドのクエストだよ」

「そうだね、錬金術師の仕様も知りたいし練習がてら受けてみようかな」


飛空艇の中にアナウンスが流れる。


《まもなく、キンキッドの町に到着いたします》


そろそろ到着するようだ。




キンキッドの町に降りると潮の匂いがした。

左右を海で挟まれた細長い立地のようだ。


「吸血ネズミの噛みつき攻撃は『出血』の状態異常を低確率で発生させるんだけど、弱いから1体なら簡単に倒せる。でも、戦闘時間が長くなると仲間を呼ぶから際限なく増えてく」


ねずみ算か……集られたら面倒そうだ。


「そして毒や出血は防御力を貫通して断続的に固定ダメージを与えるの」

「毒と出血の違いって?」

「毒は何度食らってもダメージ量はそのまま効果時間が延びてく。出血は効果時間は1分固定だけどダメージ加算だから何度も食らうとすごい勢いでHPが削られるよ」


出血は1対多数向きの状態異常のようだ。

テイム数の多い農家との相性は良いのだろう。現実のネズミは農家の敵かもしれないが。


「出血は1体だと弱いせいか持ってるモンスターが少ないんだよね。でも逆に対策してる人も少ないから対人戦だと有利かも」

「プレイヤーと戦うこともあるの?」

「偶にあるけどNPCの盗賊の方が多いよ。このゲームはプレイヤーを倒しても何もゲットできないから、PKしてくるのはもうそれが趣味って人ぐらいだし」


居るには居るんだ。一体何のメリットがあるのだろう……。

いや、趣味にメリットは求めないか。ただ楽しいからPKするんだろうな。


「まぁ、R12だとフレンドリーファイヤがオフになるからダメージは無いんだけどね」

「こんな所にR12の恩恵が……」

「R18でも迷惑な人がいたらブロック機能で見えなくできるから大丈夫だよ」



草原に行く前に冒険者ギルドに寄った。

他より一回り大きい赤い屋根の建物に入ると、中は意外と空いている。

まだ発売して1ヶ月だし、もっと混んでるかと思ったが、マリ曰く、町や建物は同じ構造の別空間が複数用意されていてその中からランダムに飛ばされるそう。


「クランかパーティに入ってれば同じ空間になるけどね」

「なるほど。混雑を回避するためか」


技術的にはもっとリアルに出来るがゲームだからストレスフリーに調整してあるんだろう。ゲームの中でまで人混みに揉まれたくないよね。



ギルドの壁にはたくさんの紙が貼り付けられた大きなボードがあり、近寄って見ると目の前にウィンドウが出た。


「貼ってある依頼書からクエストを探すのは大変だから、ボードの前に立つとクエスト一覧が表示されるんだよ」

「離れても見れるんだね」

「ゆっくり探せるように、ウィンドウを閉じるまでは表示され続けるの」


クエスト一覧を開いたままギルド内の休憩スペースに移動する。

木の椅子と丸テーブルがあるが食事を頼んだりはできないようだ。持ち込みはOKらしい。


「常設依頼のカテゴリーから『吸血ネズミを5匹討伐』と『下級ポーションを3本納品』を選択して」


言われた通り『受注する』をタップ。

クエストは同時に幾つでも受けられるが期限を過ぎるとクエスト失敗となる。常設依頼の期限は三日だ。


「このまま草原に行っても良いんだけど、フィールドに出る前に戦闘の練習をしておこう」

「練習ルームがあるの?」

「受付に修練場を貸してくださいって言えば無料で使えるよ。指南役のNPCを雇うとお金がかかるけど」

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