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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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二つの水神信仰(ユキ)

ボス戦に向かう前にお互いの戦闘スタイルの擦り合わせを行う。ケイの職業は『上級吟遊詩人』と『中級魔法使い』だ。

吟遊詩人はバフやデバフを与えるスキルを持つ支援型の戦闘職で、魔法使いは遠距離攻撃が得意な後衛型が多い。


ケイはパーティ戦ではバフやデバフで味方を支援しながらMPに余裕があれば魔法で与ダメージを稼いでいくスタイルで、ソロで行動する時は『隠密』で隠れながら『風魔法』を使い『演奏』の効果範囲を広げてデバフを与え、相手が索敵できないほどの遠くからじわじわと一方的に削っていくという中々嫌らしい戦法を使っているらしい。


「まぁパーティ戦でも一人だけ隠れて支援した方が効率は良いんだが……配信映えしないからな」

「配信者として最大のデメリットだな」

「それは重要だね」


支援型の後衛が二人になるが、前衛のマリが居るからバランスは良さそうだ。次のボス戦にはリーダーも『挑発』も使って全力で挑む。


「そういえば次のボスってどんなの?」

「ああ、次は水神って呼ばれてるデカい亀なんだけど──」

「えっ!? この町で祀られてるやつ?」

「いや違くて」

「ちょっと複雑なんだよな」


マリの説明によると、元々サイの住民はこの国の北東にある隣国から来た亡命者の子孫で、その国では龍神と呼ばれる白く細長い体に青緑の甲羅を持つ龍が信仰されていたらしい。

この国に来た時は一つだった龍神信仰が、龍神に似た色形の白蛇を神使とする派閥と、青緑の甲羅を持つ亀を神使とする派閥に別れて対立していたが、ある日突然、町の近くに住んでいた白蛇が巨大化して何も無かった場所に湖を作った事で白蛇信仰が勝ち、湖を作った事から水神と呼ばれるようになったそうだ。

そして負けた派閥の主導者達はサイの町を出てエストのすぐ近くの泉に移り、今もその子孫達が青緑の甲羅を持つ亀への信仰を続けているという。


「ツアイっていう村なんだけど、そこにも水神が現れたんだよね」

「それが亀のモンスターなんだね。でも信仰されてるのに倒していいの?」

「その水神は定期的に生贄を要求してるんだよ」

「邪神じゃん」

「そうでもないぞ?」


マリの話を引き取ってケイが話し始める。


「実は水神信仰の話には続きがあってな」


亀信仰の主導者達はサイに現れた水神が蛇だった理由を考えた。その結果、信仰心がより多く集まったのが白蛇だったからだと結論を出す。

何故なら神は信仰心によって大きな力を得るからだ。青緑の亀はたくさん居るが白蛇は滅多に居ない。そのため信仰心が分散されず、一個体に集まって水神へと姿を変えたのだと考えたのだ。


「そして自分達だけの神を作ろうとしてサイを出て、泉に住んでいた大きな亀を祀り始めた」


実際、その推測は的を得ていたらしい。祀った亀は日を追うごとにぐんぐん大きくなっていった。

だがある時問題が起きる。


「エストの開発が始まったんだよ」


元々エストは険しい山に囲まれた不毛の土地だった。しかし深く掘れば様々な鉱石を採掘できることが発覚し、エストは正にゴールドラッシュ状態になったのだ。

しかし急激に推し進めた開発により、周辺の低い土地へ鉱毒が流れ始めた。


「それを何とかしようとして錬金術師達が召集され、今は浄化装置が出来てるから安全なんだが……当時のツアイ村の住民は鉱毒の影響をもろに食らったらしい」


それを何とかしようとして、縋ったのが水神だ。

人もモンスターも敵を倒せばレベルアップして強くなる。特にモンスターは進化して姿形まで変わるのだ。

すぐに倒せるほど弱らせた生贄を捧げてレベリングすれば鉱毒すら浄化できる力を得るかもしれない。


そう考え、最初は生け捕りにした小型のモンスター達を捧げていた。しかし格下の相手から得られる経験値は少なくなるため、何十年も生きてレベルアップを重ねていた亀からすれば大した量では無かった。


「だから次は村に現れた盗賊を捧げたんだ」


ただの村だったら盗賊に負けていただろう。

しかし生け捕りとはいえ戦闘に参加していれば経験値は得られる。村人達はそれまでの生贄確保でレベルアップしていたため盗賊達より強くなっていたのだ。


捧げた盗賊の経験値が多かったのか、それまでに捧げた生贄の積み重ねか。

亀は見事に進化を果たし人間よりも大きな体へと変化した。それと同時に泉も広がって深くなり、鉱毒の影響もすっかり消えていたのだ。


「その後、ツアイ村は忍者の隠れ里になった」

「え? 忍者どっから来た?」

「ちょっと話が飛躍してない?」

「ちゃんと理由があんだよ。今話すから待ってろ」


ツアイの村人達はレベルの高い人間を生贄にすれば水神がさらに強くなると気付く。

しかし盗賊が頻繁に訪れる訳もないので村の老人達を生贄に捧げた。個体差はあるが生物は寿命が近くなると『老化』という恒常的なデバフがつくが、レベル自体は下がらない。生贄には丁度良かったのだ。


そして更に効率良く経験値を捧げるため、老化のデバフがつくまでは外でレベリングする事にした。村の近くだけでは限界があったのだ。

男も女も傭兵や暗殺者となり国中に散っていった。そして歳を取るとツアイ村に戻って自らを生贄とするのだ。

時代が変わるにつれてツアイの戦闘集団は村の掟を絶対とする忍者に変化していった。産まれた時から水神信仰を刷り込んで、掟に逆らわないようにして。


「洗脳すれば信仰心も集まるしな」

「なんだその闇の煮凝りみたいな話」

「ていうかケイ何でそんなに詳しいの? 私派閥争いの部分しか知らなかったよ」


確かに。プレイ時間が俺達より長いとしてもこんな事まで知っているものなのだろうか?


「俺のパーティメンバーがサイの巫女とツアイの忍者なんだよ」

「よりにもよってなチョイスじゃん」

「大丈夫なのそれ」


メンバーの背景が不穏すぎる。


「全然大丈夫じゃないな。大丈夫じゃなさすぎて忍者の方は抜け忍になってる」

「ぬけにん、って何?」

「ツアイの所属から抜けたって事だ」


だが頻繁に追っ手が差し向けられるそうで、お面が手放せないらしい。顔を隠すアイテムには『看破』を防ぐ隠蔽効果を付けられるので素性を隠せるのだ。


「狐面着けてる忍装束だからめちゃくちゃ目立ってるが、システム的には隠れられてるみたいだな」

「堂々としてると逆に気付かれないのかな」

「そういう問題じゃないと思うけど……」


ちなみに職業に性別は関係ないので、ケイのパーティメンバーである巫女は男性である。

また、亀信仰は追い出されたのではなく自ら出て行ったので、サイの者達はツアイの者達を嫌っている訳ではないらしく、巫女の方は特に問題無いようだ。というかツアイの事情自体サイでは知られていないらしい。


「そういう所も気に障るのかもな。自分達はこんなに苦労してるのに、って」

「宗派替えしろよ……」

「そう簡単に行かないのが宗教ってもんじゃない?」



ケイの説明は終わったが、一つ疑問が残った。


「ツアイでは水神として崇められてるのに倒しちゃったら恨まれない?」

「ああ、それは大丈夫」


その疑問にはマリがあっさりと答えた。


「ツアイの水神を殺すと、村人全員死ぬんだよ」

「待って急展開すぎてついて行けない」

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