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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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リトルパンテラ誘引クッキー(マリ)

「ならばこちらのリトルパンテラ誘引クッキーは如何でしょう」

「リトルパンテラ?」

「子猫の姿で群れを作るレアモンスターです。キンキッド南部の草原に生息しているのですが、珍しい上に人が近づくとすぐ逃げてしまうんです」

「子猫! このクッキーでテイムできるの?」

「いえ、これは誘き寄せるだけですのでテイムは自力になります」


これは吸血ネズミに惹かれてやってきたリトルパンテラの群れに着想を得て開発した、掌大の白いメレンゲクッキーだ。吸血ネズミより二回りほど小さいが、遠目からだと吸血ネズミに見えるし、何より生地に粉砕した吸血ネズミの毛を練り込んであるのだ。

食品に毛を混入させるのは抵抗があったが、マタタビのような猫を集められそうな素材が他に見つからなかったので仕方ない。一応「人間は食べないでください」とは書いてある。

キンキッドの草原で試してみたところ、十五分程で釣れたので効果は実証済みだ。やはりリトルパンテラを欲しがる人は多いようで、これは最早うちの主力商品になっている。


「値段は……2000G!?」

「高っ!?」

「特定のレアモンスターを誘き寄せる特殊なアイテムですからね」


吸血ネズミの毛はブラッシングで手に入るので原価は80Gくらいである。付加価値ってやつだよ。


しかしこれでもマリの露店は良心的な部類だ。値段こそ高く設定しているがそれだけの価値はあると自負しており、商品は全てアイテム詳細情報が見えるように設定してある。

この設定を使えるようになるには追加料金を払って露店をアップグレードしなければならないので、それなりに稼いでいる証拠でもあるのだが、怪しげな店だと役に立たないアイテムを売りつけるためにわざと詳細が見えないようにしていたりもするのだ。


「ちょっと買えないなー……」

「アイテムが無くても出会える可能性はありますから、自分で探してみてどうしてもダメだったら購入を検討してみては如何でしょうか」

「うん、そうする……」

「あたしも一緒に探すからさ」


値下げ交渉に応じる気は一切無いので買わないならそれでも構わない。安売りするくらいなら他の客を探すし、高くても欲しければお金を貯めてまた来るだろう。特定の場所で店を開く訳ではないので会えるかは分からないが。


「じゃあフレンド登録しない? 買いたくなったら連絡するから!」

「ごめんなさい、以前お客様から何度も呼び出されたので、フレンド登録は身内としかしない事にしてるんです」

「あっ、そうだよね……マリオンくんも自分のクエスト進めたいよね」


嘘である。しかしあり得そうな事態なので事前に予防線を張っておく。


「町の入口付近にある伝言板で開店状況を公開している事がありますので、良かったらたまに見てみてください」

「伝言板? そんなのあったんだ」

「誰でも見れるチャット欄みたいな感じですよ……ん? すみません、家族から連絡が来ました」


ユキからチャットだ。



〈合流したいんだけどチップに来れる? あとイワヘビガイのドロップ品って要る?〉


イワヘビガイはベースの先にあるリーアの入り江に生息するモンスターだったと思うが……とりあえず返信しておくか。


〈ドロップ品は全部ホームに入れたい。最初必要無くても後から役に立ったりするから〉

〈オオトゲウニの針も残してた方がいいかな?〉

〈あれば欲しい。棒手裏剣の芯材に使える〉


棒手裏剣はコウが大量に使うから、芯材があれば鉄を節約できるので安上がりになる。微々たるものだがそのまま捨て値で売るよりかはマシだ。


〈了解。チップの教会で待ってる〉

〈すぐ行くよ。素材分のお金も渡すから〉


どの町にいても、町の中ならメニューを開けばホームの収納と繋がっていてお金やアイテムを自由に取り出せるので、ユキにあげようと思っていた装備類を持ち歩く必要もない。

そのまま身一つで向かえるし、丁度キンキッドにいるのですぐ隣のエリアだ。チップには飛空艇の乗り場が無いので連絡船の停泊場に向かおう。



「すみませんが、フレンドと合流するのでこれで失礼します」

「もしかしてコーエンさん?」

「いえ、別の人です」

「なんかあたしこの会話に既視感あるなー……」


既視感? 何を言っているのかよく分からないが、ユキを待たせているので早く行かなくては。


「ではお二人も頑張ってください」

「うん! またどこかで会おうねー!」

「マリオンくんも頑張ってねー」


手を振る二人と別れてエリア内を北上する。今いるのはキンキッドの東側だが、チップへの連絡船は北西から出ているのだ。



道中、リーダーをメインアタッカーにした戦闘でテイム経験値を稼ぐついでに、狼のような素早いモンスター相手への盾の使い方を練習する。

このエリアは推奨レベル10〜15なので格下のモンスターばかりだが、狼は基本的に三〜六匹の群れで行動しているので防御しきれない事も多い。防御特化のビルドなのでダメージはほぼ無いとはいえ、盾の難しさに閉口するばかりだ。


(今は一人だから良いけどユキを守るのはキツいかも……)


複数相手だと一匹は抑えられても別の個体がユキを襲いに行くかもしれない。ヘイトを稼ぐ『挑発』は対人だとほとんど意味の無いアーツなので大会では役に立ちそうにない。


(いや寧ろ挑発は攻撃に使えるのか?)


挑発をプレイヤーや人類NPCに向けて使用すると、一瞬だけ挑発した者の方へ顔が向くのだ。

体はそのままで動くのは顔だけだが、別の相手から攻撃されている時に視線が外れれば命取りになるだろう。


(……他の対戦相手も使ってきそうだな)


往々にして自分が思いつく程度のことは相手も思いつくものである。そうでなくとも、一度使ってしまえば真似されてすぐに広まるだろう。ならば対応策を考えておくべきだ。


(最初から盾役に顔を向けておくとか?)


ちょっと間抜けな絵面になってしまうが、顔は盾役に向けて攻撃する相手は横目で見ればいいだろうか。

まぁ相手チームが必ずしも挑発を使ってくるとは限らないので頭の隅にでも置いておこう。



何度もエンカウントする内に狼との戦闘にもだんだん慣れてきた。

このフィールドには『リトルウルフ』というウルフ系最弱の小型モンスターが生息しているのだが、序盤で登場する上にテイムしやすいモンスターかつ索敵系のスキルを持っており、さらには進化先の分岐が多く、何より見た目が可愛いというテイマー御用達のモンスターである。大会に連れて来るプレイヤーも多いのではないだろうか。


(ウルフ対策は必須だな。特に予選は森林フィールドでのバトルロイヤルだから、索敵による一方的な位置バレは避けたい……)


確かウルフ系の索敵スキルは嗅覚上昇とかだった気がするので嗅覚を誤魔化せばなんとかなりそうだ。

しかし、モンスターとのエンカウント率を下げる『消臭剤』というアイテムはあるが、一度エントリーしてしまうと持ち物の変更はできないのだ。本戦はコロシアムでの戦闘となるのでアイテム枠を一つ潰すには惜しい。


(うーん、消臭剤はメリットが少なすぎるな。大会についてはコウ達も含めて後で話し合おう)


幸い四人ともエントリー部門がバラバラなので競合せずに済む。三人寄れば文殊の知恵と言うし、その内集まって対策会議を開こう。

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