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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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商人プレイ(マリ)

キンキッドの町からすぐ東側にある浅瀬にマリは居た。ここには水の玉を飛ばして攻撃してくる魚型のボスモンスターがいるのだが、盾で魔法をパリィする練習に丁度良いと思ったのだ。

水魔法は火と風に比べて攻撃力が低いので失敗して当たっても然程ダメージは無い。


「ギャギャッ!」

「『リフレクト』」

「ギャッ!?」


時折リフレクトで水球を跳ね返す。リフレクトは魔法や飛び道具に上手く当てると相手に跳ね返すことができるのだ。

しかし、跳ね返した攻撃を相手に当てるにはプレイヤースキルが必要なためこうして練習を重ねている。


「当たんないか……」

「ギヒッ!」


跳ね返すまでは安定してできるようになったのだが、相手に当てるのは中々難しくまだ一度も成功していない。何となくボスモンスターにもバカにされている気がする。


「キュー……」


胸ポケットに入れた吸血ネズミのリーダーが慰めるように鳴いたので、指先でそっと頭を撫でておく。リーダー以外のテイムモンスターはホームでお留守番だ。


大会に連れていけるテイムモンスターは一匹なのでリーダーと共に参加するつもりだが、ギリギリまでポケットに隠しておいて本戦で出したい。


(同じ事を考える人も居そうだな……)


その場合はユキに頑張って貰おう。小型モンスターは進化すると大型化する事が多いので隠せるサイズなら攻撃力は低めだと思うが、状態異常特化だと進化しても小さいままになる事がある。

大会までにユキのスキルを上げて状態異常を解除できるようになって貰わなくては。



「ギャヒッ!」


(それにしても当たらんなー……)


大会まではなるべくここに通ってリフレクトの練習をしよう。しかしそろそろ飽きてきたので一旦切り上げてリーダーのレベリングにでも行こうか。


「ねぇ、ちょっといいかな?」

「はい?」


急に後ろから話しかられてドキッとする。表情はあまり変わらないタイプだが声は裏返っていなかっただろうか。


「わたし達もここ通れなくて困ってたんだ。一緒にパーティ組まない?」


話しかけてきたのは二人組のエルフ女性だった。動揺なんてしてませんよ、という顔で言葉を返す。


「もしかして王都に行きたいんですか?」


イベントのために急いで先の町に進もうとしている初心者だろうか。とりあえず浅瀬を抜けてボスモンスターの攻撃が当たらないよう岸辺に戻る。


「ううん、エストに行きたいんだ。でもここのボスが倒せなくて……」

「それなら南に進んでベースの町を経由した方が良いですよ。ここは向こう岸からキンキッドに戻るショートカット用のルートなのでレベル20ぐらいないと倒せません」

「そうなの!?」


急がば回れ、という事だ。レベルが低くてもリアルスキルが高ければゴリ押しできるので、そういう人用のルートかもしれない。

そして私は悲しいことにリアルスキルが低いのでレベル26でも通れない。


「よく知ってるね。攻略情報とか?」

「いえ、向こう岸の町で聞きました。ここにはイベントに向けて盾を扱う練習をしに来たんです」


そう、これは盾の練習なのだ。決して攻撃を悉く外して格下のモンスターにバカにされている訳ではないので悔しくなんてない。

そもそもこのボスは近付くと水に潜って位置を変えてしまうので、遠距離攻撃のできる戦闘スタイルでないと倒すのは難しいはずだ。



「ねぇ、君ってもしかしてコーエンさんの弟?」

「……コーエンを知っているのですか?」

「あっ、言われてみればソックリ! リカよく気づいたね」


そりゃそっくりだろう、どちらも私のスキャンデータをベースに作ったアバターなのだから。それより問題は彼女達が何者なのか分からないのに一方的に特定されている事だ。


「前にコーエンさんの使ってる試験管をどこで買えるのか聞いたんだよ。その時に弟がいるって聞いたんだ」


ユキを迎えに来た時のことだろうか。初めて会った人物に家族構成なんて教えたくないので誤解させたままでも良いだろう。一応嘘はつかないように論点をずらして質問はさり気なく流しておく。


「試験管は特注品なので簡単には買えませんよ」

「えっ、ならどうやって買うの?」

「特注品は雑貨屋ではなく工房から直接多くの品物を買って上客になると頼めますが、仕様書を細かく書かなくてはいけないので大変ですよ」


特注すると自分のオリジナルデザインのものを作って貰えるが、寸法や材質などをカテゴリーごとの規定に沿って設定し、書類に纏めて提出しなくてはいけない。

確定申告などを書くのが苦手という人には向いていない仕様だが、商人とは得てしてそういうものなのだろう。


「どうしよう……仕様書なんて書けないよ」

「手持ちの分で良ければ売りますよ」

「本当!? あっ、でもいくら?」

「1本150Gです」


普通の薬瓶は50Gなので試験管は割高だが、デザイン的に欲しがる人が多いので売れ筋商品である。


「1本ください!」

「お買い上げありがとうございます」


営業スマイルを貼り付けて露店セットを広げる。フィールドでよく露店を開いているので露店セットを持ち歩いているのだ。

露店セットの商品は収納鞄の中身とは別の扱いになるのでアイテムをたくさん持ち歩けるが、別のプレイヤーがお金を払わないと商品は使用できず露店セットの外に持ち出すこともできない。



「他の商品もご覧になりますか?」

「君は商人なの?」

「はい。露店で薬や雑貨を売っています」

「ちょっと見てみようかな。そうだ名前教えてよ!」

「マリオンと申します。今後ともどうぞよろしくお願いします」

「……」


背の高い女性は喜んで商品を見始めたが、もう一人からは何故かじっと見つめられる。なんでしょう、というように小首を傾げてみせると、彼女は少し訝しむように口を開いた。


「小さいのに随分しっかりしてるね……もしかして実は大人だったりする?」

「ああ、背が低いのはドワーフだからです」


横髪を掻き上げて少し尖った耳を見せる。まぁ実際には2cm身長を盛っているので寧ろ大きくなっているのだが、言う必要は無いだろう。

自分ではよく分からないが声はごく普通の成人女性の声だと思うので、もしかしたら声変わり前の少年だと思ったのだろうか。


「小さいから小学生くらいかと思った……」

「ドワーフは150cm以下にしかキャラメイクできないんですよ」


キャラメイクで設定できる最小サイズは120cmなのだが、そのせいで背の高いアバターでも1m以上の水深だと溺れるという謎仕様になっている。キャラメイクで有利不利が起きないようにとの配慮だろうが、顔が出ているにも関わらず腹までの水で溺れるのは大変シュールである。へそから呼吸でもしているのだろうか。


ここの浅瀬は膝くらいまでの水深なので溺れる心配は無く、歩いて渡れる。しかし通ろうとすると途中でボスモンスターがアクティブになって妨害してくるのだ。

南にぐるっと迂回すればベースの町から海を横断して本土に渡れる。



「このご褒美クッキーも買う!」

「やめなさい、まだテイムできてないでしょ!」

「すぐ捕まえるもん!」


こちらの会話を気にせずショッピングを楽しんでいた女性がはしゃいだ様子で商品を手に取った。

ご褒美クッキーは5枚1セットを油紙で包んだモンスター用固形飼料の一種だ。テイムモンスターが喜ぶように、ナッツを練り込んだ堅焼きの生地でベリージャムをサンドしてある。

割れないように保存ケースも別売りしているが、割れてもモンスターは気にしないので意味は無い。ただしデザインにめちゃくちゃこだわって作った子猫柄のクッキー缶なのでまぁまぁ売れている。


「蛇や魚型など一部のモンスターだと食べない事もあるので、好みが分かってからにした方が良いですよ」

「蛇も魚も飼わないよ!」


押し売りしない体を装いながら次回購入の布石を打っておく。どうせモフモフが飼いたいんだろ、次点で小鳥。

ちなみにマリはニシアフリカトカゲモドキが最高にかわいいと思っている。

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