表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
26/91

タイプライターとイベント告知

タイプライターがカチャカチャと軽快な音を立てて文章を紡いでいく。マリが書いているのは自動給餌器の使用説明書だ。しばらく文字を打っていたが、ひと段落ついたようでぴょこんと立ち上がる。


「よおっし、誤字確認お願い!」

「了解。お疲れ様」


やり切った表情で振り返ったマリを労って説明書に目を通す。特に問題は無さそうだ。


昨夜掲示板にて自動給餌器の受注を開始したところ、強気価格にも関わらず予想に反して注文が多く入ったのだ。どうやら毎日ログインするようなプレイヤーでも、万が一ログインできない日に備えてホームに置いておきたいという人が多かったらしい。


売上を想像したのかマリは終始嬉しそうで、ほくほくとした顔で説明書を受け取る彼女を見ているとこちらまで幸せな気持ちになる。楽しそうで何よりだ。


マリが受け取った説明書をタイプライターに再びセットしてコピーを印刷していく。タイプライターにあるまじき機能だが、実はこれは魔道具で文章の修正や印刷もできるワープロのような物らしい。

ちなみに僕はワープロを見たことすらないので例えがよく分からなかったが、文章特化のパソコンのような物だろうと考えとりあえず頷いておいた。マリは僕より年下のはずなのだが一体どこでワープロを知ったのだろうか。


早速納品に向かうらしいマリが工房を出ていくのを見送る。



ぽこん。


通知音が鳴ったのでチャットかと思ったが、表示されたアイコンは運営からのお知らせだった。メニューウィンドウを開くと『八月上旬イベント開催予定』というタイトルが目に飛び込んでくる。


どうやらイベント開催のお知らせのようだが事前告知なんて珍しい。竜の卵もそうだったが、このゲームはイベントが始まってから通告されるのがデフォルトだ。

理由はプレイヤーの行動次第でイベントが発生したり時期が早まったりする場合があるからなのだが、リアリティがあって良いという意見が多いようだ。突発的だとイベントを逃しがちになる人も当然出てくるので一応イベント開始後にはプレイヤーに通知がされるのだが、そのおかげで不満の声が少ないのだろう。


次のイベントは参加しようと昨日決めたばかりだったので、わくわくしながらお知らせを開く。



ーーー


【八月上旬イベント開催予定】


第一回闘技大会を開催します!


出場部門は個人で参加するソロの部、二人組で参加するペアの部、六人まで参加できるパーティの部の三つです。順位に応じてアイテムと交換できる大会ポイントが進呈されますので、皆さん是非ご参加ください。

大会の様子は後日公式アーカイブにて配信されます。


詳細は【闘技大会イベント開催概要】をご覧ください。


ーーー



ふむ、闘技大会か……。



(つまんなそ〜〜〜)


楽しいのは攻略組だけではないだろうか。

この技術極振りのステータスでどう勝負しろと? 常にクリティカル攻撃をし続けろとでも言うのか。技術の数値に応じてクリティカルが出やすくなるとはいえ、結局は確率なので最早ただの運ゲーである。


完全に気分が萎えたので不参加を決め込もうかと思ったが、前回のイベント動画が思いの外面白かったことを思い出して迷う。実際に参加してみれば、もしかすると案外楽しめる展開になるのかもしれない……。


(他の人達はどう思っているのだろう?)


メニューからゲーム内掲示板を開く。

ゲーム内ではブラウザを立ち上げることができないのでインターネットは使えないが、プレイヤー同士の交流のために公式掲示板があるのだ。これは以前ユキ宛に使った伝言板とは違い、どこにいてもメニューから直接見ることができるゲーム内限定の掲示板である。

デフォルトだと匿名になる投稿者名は変更することもできるが、他者が使用中のプレイヤーネームにはできないので騙りはできない仕様だ。また、ゲーム運営AIが巡回しているため荒らしコメントや禁止ワードの入った投稿は速やかに削除される。


プレイヤー達の反応を探ってみようと考えて覗いてみたが、掲示板はお祭り騒ぎになっていた。


(盛り上がってるなぁ……)


普段ゲームをしないので知らなかったが、どうやら闘技大会は王道イベントらしい。

王道になるほどのイベントならば参加するだけでも楽しめるだろうか? 行列のできる店にはそれなりの理由があるものである。

心の天秤が少しだけ参加する方に傾く。



「コウ! お知らせ見た?」

「うん。闘技大会だってね」


出て行ったばかりのマリが工房に飛び込んで来る。


「ペアの部に一緒に出ようよ!」

「勿論! 楽しみだね」


心の天秤が一瞬で参加に振り切った。なんて素晴らしいイベントだろうか。マリとなら例え初戦敗退だとしても構わないし、二人で大会までに特訓するのもきっと楽しいはずだ。


「開催概要はまだ読んでないんだよね。納品行かなきゃいけないから飛空艇の中で読むわ」

「僕も確認しておくよ」


今度こそ納品に向かうマリを再び見送り、イベント開催概要をタップする。


(……開催地は王都ハーツか)


いきなり問題に突き当たった。まず王都まで辿り着かなくてはいけないようだ。

しかし王都に続く関門となるレバの町へは、あとボス戦が一回あるだけなのでマリと協力すればすぐに行けるはずだ。


(いや待て、レベルでさらに別れるのか……!?)


それどころでは無かった。

部門の中でもレベル毎に出場できるプレイヤーが限られるようで、1〜30、31〜40、41〜50のクラスに別れていたのだ。

それはそうだ、レベル無制限なら攻略組が上位独占するに決まってる。ライトユーザーが楽しめるようにとの配慮だろう。


(運営の配慮が今は憎い……)


マリは今レベル26、僕がレベル33なので、マリが大会までにレベル上げを頑張れば一緒に出場することはできる。

しかし、入賞を狙うとするとマリは恐らくレベル30丁度で出場することだろう。


現在のレベルキャップは50なので、41〜50の部には攻略組が出場するのは簡単に予想がつく。そして31〜40には販売直後からやっている中堅プレイヤー達、1〜30はギリギリ王都に辿り着けた位の初心者組か知り合いにキャリーしてもらったエンジョイ勢になるはずだ。



ぽこん、と考えを裏付けるかのようにチャットが届く。


〈私ユキと一緒にレベル30までのクラスで出るわ〉

〈ですよね〉


知ってた。



(君はいつだって僕の心を振り回すんだ……)


工房のソファーでふて寝していると先日フレンド登録したケイからチャットが来た。


ちなみにケイといつゲーム内で会ったのかと言うと、以前配信外で一緒に遊ぼうと言っていた僕達が一向に先のエリアに進まないので、痺れを切らしたケイがエストに押しかけてきて強引にフレンド登録だけして帰って行ったのだ。

仲間はずれは嫌だが僕ら一般人の配信に乗りたくないという気持ちも配慮してくれる、ぶっきらぼうだけど優しい子だ。ユキ曰く、ケイはツンデレ、マリはクーデレらしい。



〈マリからコウが余ったって聞いたんだけど〉


ケイの率直な物言いがぐさりと心に突き刺さる。実際余っているので反論のしようも無い。


〈マリに捨てられた……〉

〈俺と組まないか? 出場するならどうせ配信されるだろ〉


怨嗟の声はさらりと流されてイベントに誘われる。ケイは別のパーティに所属していたはずだが気にかけてくれたのだろうか。


〈六人パーティには足りないからバラバラで出ることにしたんだよ〉


普段ケイは配信者仲間と三人パーティを組んでいるのだが、六対三でパーティ戦をするのは流石に嫌だったので各自で出場することにしたそうだ。

ケイも他二人と同じくソロで出るつもりだったらしいが、マリから連絡があったので誘ってくれたようだ。

マリは子供の頃、祖父母の家で既に使われていないワープロを発見しておもちゃにしていました。

空き部屋に置きっ放しだったのでよく来ていたコウも知っているだろうと考えていましたが、当時のコウは古いDVDプレイヤーか何かだと思っていたため記憶に残っていません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ