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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第一章 錬金術師
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決行の日

惚れ薬を作った後、人魚の歌声のメアリーに会いに行く。


「こんばんは。今日は惚れ薬の件でお話があって来たんです」

「まぁコーエンさん。どうぞこちらへいらして」

「お邪魔します」


裏口から中へ入れてもらい早速本題に入る。決行は現実世界では明日なので時間が無い。


「惚れ薬ですが、どなたにお使いになる予定か詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」


弟か幼馴染の女、どちらだろうか。


「うふふ、弟が口下手だから惚れ薬で熱烈に愛の告白をさせようと思ってるのよぉ」

「やはりそうですか。ですが先日お会いした感じでは飲んでくれそうにありませんよね」

「そうなの。だからこっそり盛るつもりよ」

「惚れ薬を飲んだ直後に惚れる相手を見るか、惚れる相手から体に掛けられるかしないといけませんが?」

「二人を喫茶店に呼び出して、惚れ薬入りの飲み物を出すのよ。知り合いの店だから手伝ってくれるわ」


喫茶店のスタッフすら薬物混入に加担しているのか。世も末だな。

呆れつつも僕にとっては都合が良いので話を続ける。、


「でしたら一つお願いがあるのですが……」

「あら、何かしら?」

「悪用されては困りますので、誰かに奪われたりしないように直前に納品したいんです」

「弟の仕事が終わってから呼び出すから、その後であれば大丈夫よ」

「弟さんのお仕事が終わるのはいつですか? どちらにお勤めなんでしょう」

「冒険者ギルドに夕方まで勤務しているわ」

「では明後日のこの時間に納品してもよろしいですか?」

「ええ、構わないわ」


呼び出す時刻も判明した。欲しい情報はすべて聞き出せたので今日はもう寝よう。



宿に戻ってベッドでログアウトする。

夢から覚めるように現実へと意識が浮上し、起き上がって大きく伸びをした。

目が覚めたと思ったらまた寝るというのも何だか不思議な心地だ。直ぐには寝付けそうに無かったのでリビングへ向かう。


(マリはまだゲーム中か……)


ホットココアを飲みながらスマホを見ると、義弟のケイから若干キレ気味のメッセージが届いていた。


〈ゲーム始めたなら言えよ。俺だけ知らなかったんだが?〉

〈ごめんね。ケイは動画配信してるから一緒にやることは無いと思って〉


ケイは音楽活動やゲーム実況動画を配信しているのだ。もう王都に着いているようだし、ソロでずっとやっているのだから今後ゲーム内で会う必要も無いだろう。


〈配信外で会うかもしれないだろ〉


会おうと思わなければ中々会わないと思うが、これはつまり「配信外なら一緒に遊んでくれる?」と言いたいのだろうか。


〈そうだね。もし会えたらフレンド登録しようか〉


寂しがっているようなのでそう返しておく。放っておくと拗ねてしまうかも知れない。

ココアも飲み終わったし、歯磨きしたらもう寝よう。明日も仕事だ。




決行の日。

早めにログインしてラウルに会いに行く。カフェに着くと既にテラス席でラウルが待っていた。


「こんばんは。お待たせしてしまいましたね」

「ううん、今来たところだよ!」


テラスには他の客は居ない。通行人に見られないように気をつけながら、素早く惚れ薬をラウルに掛けた。


「……っ!?」


ラウルは一瞬驚いたが、すぐに恍惚とした表情になる。薬は効いているようだ。


「今から冒険者ギルドに行ってギルフォードを呼び出し、二人きりになってください。そして他人に見られないようにギルフォードにこの薬をかけて、この指示書を渡して従うように言ってください」

「はい……」


これで仕込みは完了だ。

しっかりとした足取りで店を出るラウルを見送って席を立ち、次はメアリーに会いに行く。薬の受け渡しをしなくては。



「納品に参りました」

「ありがとう。いよいよね」


そう。いよいよだ。

幼馴染の女ジェーンは既に待ち合わせ場所である知人の経営する喫茶店で待っているらしい。そろそろギルフォードの仕事が終わるのでメアリーと共に喫茶店へ向かう。



ギルフォードが喫茶店に入るのをカウンターに隠れて見守る。

店員の案内でジェーンの待つ席にギルフォードが通されたので、メアリーが店主に惚れ薬を渡した。惚れ薬入りの飲み物がギルフォードの元に届けられる。


ラウルが掛けた惚れ薬はそろそろ効果がなくなるが、追加の惚れ薬を飲めば惚れる対象はそのままで効果時間が延長される。

既に効果が切れているであろうラウルはマリが始末しているはずだ。


目の前ではギルフォードが指示書に従ってジェーンを口説いている。演技が苦手なのか多少辿々しいが、許容範囲だろう。

他の客達も初々しい二人の会話に耳をすませている。



「ギルフォード、私もっ……ぐッ!?」

「ジェーン!?」


カップル成立に湧く店内で、突然ジェーンが血を吐いた。

どうっと倒れたジェーンの口から広がった血がじわじわと床を汚す。


(ギルフォードは上手くやったようだな……)


ジェーンの飲み物に毒を入れたのはギルフォードだ。

既に操られているギルフォードは指示書に従うことに疑問を抱かない。たとえそれが愛したはずの幼馴染への毒殺命令だったとしても。


「誰か解毒薬を!」

「俺が持ってるぞ!」


冒険者らしき客が解毒薬を使用するも、症状は一向に良くならない。それはそうだ、あれに解毒薬は効かない。


「どうして……!?」

「とにかく教会へ!」


呆然として座り込むメアリーと、病院代わりの教会へ運ばれて行くジェーン。慌てて付き添うギルフォード。

僕はメアリーを励ましながら教会へ向かった。



「残念ですが、彼女はもう……」

「そんな……」


教会に着いた頃にはもうジェーンは亡くなっていた。


あれは普通の毒ではない。以前から開発していた出血毒を抽出して強力にしたものだ。

『出血』の状態異常を解除するには解毒薬ではなく『止血ポーション』が必要だが、このエリア周辺には出血持ちのモンスターがいないので普及していない。

教会ならあらゆる状態異常に対処できる神官が常駐しているが、歓楽街から教会までの距離は離れているため間に合うはずもない。



「……少し、一人にしてください」


そう言って教会の裏へ向かうギルフォード。

教会の裏にはマリが待機している。そこで指示書と出血毒を入れていた小瓶と鑑定のモノクルをマリに渡すのだ。モノクルは似た見た目の物と交換する。


しばらくして、あまりに戻りが遅いギルフォードを心配した僕とメアリーが教会の裏に向かうと、そこには木に縄を括って首を吊ったギルフォードが揺れていたのだった。




「お疲れ様」

「上手く行ったね」


ログアウト後、マリとリビングで駄弁る。


「モノクルがすり替えられてるのはバレるんじゃない?」

「バレるだろうね。でもギルフォードに直接接触したのはラウルだけだし、ジェーンに毒を盛れるのもギルフォードか店員、もしくはジェーン本人だけだよ」


そのために回りくどい方法を使ったのだ。僕はギルフォードやジェーンに接触しないように細心の注意を払って行動した。できる限り目撃者を増やして僕の犯行が不可能だったと証言してもらう。


「まぁ少しは疑われるかもね」

「事情聴取ぐらいは受けるかも。でもモノクルを持ってるのは私だし、ギルフォードが死んだ後も近づかないようにしてたでしょ?」

「うん。メアリーや神官の側にずっといたから、自警団が来るまで遺体と接触してないのは証言してくれると思う」


証拠は残していないはずだが、町を出るまではマリにモノクルを預かっていてもらおう。モノクル自体も錬金術で多少デザインを変えなくては。


「あとは疑われないように乗り切らないとね」

お読みいただきありがとうございます。

書き溜めていた分が無くなったので今後は更新頻度が落ちますが、のんびり続けていきます。

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