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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第一章 錬金術師
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ナンパと殺害計画

歓楽街は港から細い路地を通った先にあった。手前のエリアは酒場が立ち並び、その奥に巨大なカジノと追随するように高級そうな宿泊施設が見える。

カジノの脇を抜けて細い路地を進むと、目の前に突然ウィンドウが出た。


《注意! この先特殊エリアです。以前よりレーティングが変更されているため、暴力的または性的な表現が含まれる場合がありますが、よろしいですか?》


どうやらレーティングを変更すると警告が出るようだ。『はい』を選択して先に進む。



路地を抜けた先は、意外な事に屋外ショッピングモールのような通りだった。

虚をつかれて思わず立ち止まる。


(そうか……レーティングを変えても町の構造は変わらないから、あからさまな通りにできないのか)


そう自分で納得していると、するりと自然に横に立った者が居た。見れば、人懐っこい顔立ちでミルクティー色の髪をした好青年がにこにこしている。


「迷子? ぼーっとしてたけど大丈夫?」

「いえ、冒険者ギルドから薬の納品に来たんです」

「おじょーさん、錬金術師なんだ! 案内してあげよっか?」


(お嬢さん……僕の声は明らかに男だから、アバターで判断されたのだろうか)


となると、この男はNPCという事になる。イベントかも知れないし従ってみるか。


「良いんですか?」

「もちろん! この辺は詳しいからね!」

「ありがとうございます。『人魚の歌声』というお店です」

「おっけー任せてよ! そーだ、俺はラウル。よろしくね」

「僕はコーエンです。よろしくお願いしますね」



ラウルに付いて行きながらふと気づく。


(お嬢さんって事は、このアバター女性だったのか……)


元々はマリのアバターだったので当然といえば当然だが、図らずもボクっ娘になってしまった。辛い。



「ここだよ!」

「ありがとうございます」


着いたのはお洒落なバーのような2階建の建物だった。入口の上に掛かった大きな看板に『人魚の歌声』と書かれている。


(あれ? 納品は正面入口からで良いのだろうか……)


少し考えて立ち止まる。営業の邪魔になるかも知れないが、この建物に裏口があるのかどうかも分からない。


「入り辛いなら一緒に入ってあげようか?」

「いえ、納品に来たなら裏口の方が良いのかと考えていただけですから大丈夫ですよ」


そう話していると、店の扉が開いてマーメイドドレスを着た黒髪の女性が出てきた。


「あら、貴女また薬を届けに来てくださったの? 」


(『また』? あぁそうか、マリがこのアバターで以前受けたクエストだったな)


「はい。納品は正面入口からで良いのでしょうか」

「そうね……できれば裏に回って貰えるかしら? お客様がいらしてるから」

「分かりました。……ラウルさん、ご親切にありがとうございました。大したお礼はできませんが良かったらこれをどうぞ」

「えー良いの? ありがとう!」


見ず知らずの相手に案内して貰って、用が済んだから帰ってくれとも言い辛かったので偶然持っていた錬成の余り物を渡しておく。

入口の広い瓶に入った10個程の苺だ。


女性に案内されて店の裏に回る。中に入ると小さな待合室の様な部屋に通された。


「ここにおいてくださる?」

「はい。こちらが治療薬です」


示された机に治療薬を納品する。


「ありがとう。ねぇ、貴女にちょっとお願いがあるのだけど……」

「何でしょう?」

「『惚れ薬』を作ってほしいのよ」

「惚れ薬ですか……少々お待ちくださいね」


ウィンドウを立ち上げて錬成スキルからレシピを探すが、見つからない。


「申し訳ありませんが、レシピを持っていないので作れません」

「レシピは教えるわ。でも錬金術師の知り合いが居なくってね」


そう言って渡された紙にメモされたレシピを見る。


(レア素材が多いけどストックは有る……効果は魅了+300の付与か)


『魅了』とは敵に味方してしまう状態異常の一種だ。+1あたりの効果は5秒なので+300だと25分間の魅了状態となる。

精神値が高ければ状態異常への抵抗力も高くなるので、実際にモンスターに対して使用した場合はもっと短くなるとは思うが、その辺にいる非戦闘員のNPC相手ならかなりの時間効果を発揮するだろう。


(これ、結構な劇薬だぞ……)


嫌な予感がして心の中で眉をひそめる。


「犯罪に使われると困りますから、何に使うつもりか伺っても?」

「そんなに警戒しなくても、ちょーっと弟の恋を応援するだけよぉ」

「……弟さん」


やはり、人間に使うつもりなのか。


「弟と幼馴染はずっと両片想いなんだけどねぇ。弟が素直じゃないせいで中々くっつかないのよ」


曰く、「もう何年もうだうだしてるから背中を押してあげようと思ってー」やら「恋にはスパイスも必要だと思うのー」だの。


「一度恋が燃え上がれば、あっという間にくっつくと思うのよ!」


(……そんな事のために、心を捻じ曲げて尊厳を奪うような薬を使うのか)


それ自体はどうでも良い。どうせゲームのキャラクターだから彼等がどうなろうと構わない。

だがそんな下らない事の片棒を担がされるのは御免だ。


断ろうとしたその時、外からモノクルを着けた黒髪の青年が入ってきた。仏頂面だが華やかな顔立ちは何処となく目の前の女性に似ている。弟だろうか。


「姉さん、その人は?」

「薬の納品に来てくださったのよ。コーエンさん、こっちは弟のギルフォードよ」

「初めまして。コーエンです」

「……初めまして」


マリが以前来ているはずだが、名前が変更されていた場合は言わずとも反映されるようだ。これは助かる。


「弟は鑑定士でね。お客様からの贈り物に変な呪いがかかってないか定期的に確認してくれるの」

「……! 優秀なのですね」


(鑑定士もギルドの外に出るのか……)


よく考えれば当たり前の事だが驚いてしまった。

鑑定士とはギルドの受付にいるNPCで、料金を支払えば魔道具を使ってあらゆる種類のアイテムを鑑定してくれる。


アイテムは対応する知識スキルを取得していないと基本的に鑑定できないので、ダンジョンに挑むことの多い冒険者は頻繁にお世話になる相手である。


「いえ、まだ新米ですよ」


そう言いながらコウの持ち込んだ薬を手に取った青年を静かに観察する。


(1本づつ手に取って眺めている……? もしかして薬を鑑定しているのか?)


しかし魔道具を使っている様子はない。


「この薬は大丈夫なようですね」

「ちょっとギル、失礼でしょ!」

「いえ、構いませんよ」


(やはり鑑定か……!)


ギルドの受付では秤のような形状の魔道具を使っていたが、自前のスキルなのか隠し持っているのか。


(怪しいのはあのモノクルか?)


青年と目を合わせるふりをして素早くモノクルを観察する。


(小さいが魔石が嵌め込まれている。魔道具だな)


『魔石』は魔道具ではなく素材アイテムなのでコウの持つ『鉱物知識』で鑑定できた。

魔石は錬金術の素材として使う事もあるが、バッテリーのようにも使用できるので魔道具には必ず魔石が嵌められているのだ。


工房にあった魔道具は重量があって持ち歩くのが困難だが、眼鏡やモノクルのように装備できる物ならフィールドでも鑑定が使えるだろう。

それにモーションやエフェクトも無さそうなので、対人戦でこっそり相手の武器を鑑定できれば有利に動けそうだ。


(……殺して奪うか)


だがどうやって?


「……先程の依頼、お受けしますよ」

「まぁ本当? 嬉しいわ」

「依頼?」

「女の秘密よ!」


とりあえず今日は、また会えるように繋ぎを作っておくとしよう。

『ナンパイベント』

レーティングに関係なく発生。歓楽街に入ってすぐ立ち止まっていると、低確率で異性NPCが現れて話しかけて来る。

そのままデートに行ったりプレゼントを贈ったりして好感度を上げれば恋人にもなれるので、一部のプレイヤーには好みのNPCが出るまで繰り返す『ナンパガチャ』を行う者もいる。


『惚れ薬クエスト』

錬成Lv3以上かつ治療薬の納品が2度目以降の時に発生。受注せずともレシピ『惚れ薬』を取得できる。

クエストクリアで『鑑定士の紹介状』を入手でき、所持していると鑑定依頼料が半額になる。

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