レベリングと餌やり
コウとマリはキンキッドの町に居た。
弟のユキが今日からゲームを開始するので、グループチャットができるようフレンド登録とクラン加入を行うためだ。
コウが指名手配されているためチップの町に入れないという理由もあるが、チップ島のイベントはチュートリアルのようなものなので1人でやった方が良いだろう、と2番目の町であるキンキッドで待つことになったのだ。
チップ島は最初のエリアのため攻略難易度が低い。
冒険者ギルドで3つ程クエストを受けると指名依頼されるボス討伐クエストを行うだけで、次のエリアに行けるようになるアイテム『連絡船のパス』を入手できる。
または商業ギルドで同様にクエストをこなすと指名依頼される、ボスからドロップするアイテム『風の魔石』の納品クエストを行うと、依頼主である連絡船の乗組員から『連絡船のパス』が貰える。
『風の魔石』は素材アイテムなので戦闘職は換金するぐらいしか使い道がなく、ボスドロップなので割高だがプレイヤーの露天やNPCの素材屋からも購入できる。
戦えなくてもクエストを進められるのだ。
ユキとはキンキッドで合流する予定だが、町の中で待つとしてもフレンド登録をしていないと会えない場合がある。
なぜかというとプレイヤーの混雑回避のために別時空の町にランダムで振り分けられるからだ。
「町の入り口付近にある伝言板は共通だから、ここにメッセージを残しておこう」
「他のメッセージに紛れちゃわない?」
「特定のプレイヤーに向けて書くこともできるから大丈夫。例えばコウに宛てて書いてみるね」
マリがメッセージを書き終えると、伝言板の上に赤い逆三角形のアイコンが表示された。
「まだ読んでない自分宛のメッセージがあるとアイコンが出るんだよ」
伝言板の前に立つとウィンドウが開き、自分宛のメッセージ一覧と誰かが書いた不特定へのメッセージ一覧が表示された。
ーーー
コーエン へ
テストです
マリオン より
ーーー
最初の宛名と最後の署名は、自動でプレイヤーネームが表示されるシステムのようだ。
「複数人にまとめて送れないからちょっと不便なんだけど、全部の町と共通だからチップでも見られるはず。『合流待ちです。キンキッドに着いたら伝言板で連絡ください』っと」
待ち時間は昨日テイムした吸血ネズミ達のレベリングをして過ごす。
「6匹もいると格上の草原ウサギでも安定して倒せるね」
「経験値分散させると中々レベル上がらないけどねぇ。ある程度まで育てたら1匹だけレベル高めのリーダー役作ろうかな」
テイムモンスターに与える経験値の分配はプレイヤーが決定権を持っている。
モンスターを倒すと戦闘への貢献度によって参加したプレイヤーに経験値が与えられるのだが、テイムモンスターが戦闘に参加しているとプレイヤーへの経験値とは別に『テイム経験値』が蓄えられる。
それを任意のモンスターに与えることでレベリングをするのだ。
強いモンスターで経験値を集めて、育てたい弱いモンスターを育成することもできる。
仕様上、テイムは他の職業より実質的な経験値が多いため優遇されているかに見えるが、テイム系の職業は自身のステータス補正ができるようなスキルや攻撃系のアーツがほぼ無いので、その代わりにモンスターで底上げしろという事だろう。
「そろそろ1時間経つし、町に戻ろうか」
「そうだね。どのくらい育った?」
「こんな感じ。捕まえた時のレベルは5くらいだったよ」
マリが出血ネズミのステータスを共有してくれる。
テイムモンスターの名前は必ず決めなくてはいけないが、後から自由に変更できるので適当につけたようだ。
ーーー
【1号】Lv.8
種族:出血ネズミ
筋力:10
防御:5
魔力:8
精神:5
速度:12
技術:6
〈スキル〉
出血毒Lv.1
〈装備〉
ーーー
【リーダー】Lv.13
種族:出血ネズミ
筋力:14
防御:7(+1)
魔力:8
精神:6
速度:16
技術:8
〈スキル〉
出血毒Lv.2
〈装備〉
・綿のリボン 防御+1(重量1)
ーーー
「待って、リーダー僕より筋力高いんだけど」
ーーー
【コーエン】Lv.31
種族:人間
職業:中級錬金術師・斥候
筋力:13
防御:21
魔力:13
精神:23
速度:40(+10)
技術:73(+14)
〈スキル〉
錬成Lv.4
採取Lv.4
隠密Lv.4
投擲Lv.3
薬品鑑定Lv.3
植物知識Lv.3
鉱物知識Lv.2
採掘Lv.2
短剣Lv.2
消耗品効果上昇Lv.1
〈装備〉
・魔糸の白衣(重量2、技術+10)
・絹のシャツ(重量1、技術+2)
・魔毛のカマーベスト(重量1、技術+2)
・魔毛のスラックス(重量1、速度+5)
・魔革のボディバッグ(重量4、容量25)
・革のホルスター(重量1、投擲物収納5)
・革の薬品ホルダー(重量1、薬品収納5)
・魔革のカントリーブーツ(重量2、速度+5)
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筋力が13で装備の合計重量も13なので、これ以上はリボンの1本すら装備できない。
「コウのキャラは筋力捨てて極振りだから……って、よく考えたらネズミの方が重いもの装備できるって事!?」
「仕様的にはそうなるね……僕ネズミより非力なのか」
「でも人型じゃないモンスターが装備できるのは装飾品か専用装備だけだから、ネズミが重装備するのは難しいんじゃないかなぁ」
「そういえばマリのステータスってどんな感じなの?」
「リアルの運動神経が必要な戦い方は向いてないって思い知ったから、防御で殴る方向で伸ばしてるよ」
ーーー
【マリオン】Lv.22
種族:ドワーフ
職業:農家・盾士
筋力:13
防御:43(+23)
魔力:7
精神:43(+12)
速度:7
技術:22
〈スキル〉
テイムLv.3
牧畜Lv.2
採取Lv.2
薬品鑑定Lv.1
植物知識Lv.1
鉱物知識Lv.1
盾Lv.1
身体強化Lv.1
〈装備〉
・小楯(重量4、防御+23)
・魔糸のフレアドレス(重量3、精神+12)
・魔革のガロンリュック(重量4、容量25)
・革の薬品ホルダー(重量1、薬品収納5)
・魔革のコンバットブーツ(重量1、ノックバック耐性付与)
ーーー
「マリってドワーフだったの?気づかなかった」
「ビジュアル的には人間にしたかったんだけど、ドワーフは防御高いからね」
「ドワーフって耳長くなかったっけ」
「視界の端に映って邪魔だったから、キャラメイクで限界まで縮めたら人間とほぼ同じになったよ」
髪を掻き上げて耳を見せてもらう。
「ちょっと上端が尖ってるけど髪で隠れてるから分からないな」
「でもドワーフは身長が150cmまでしか設定出来なかったんだよ……。ゲームの中でくらい長身のヅカ系美人になりたかった……」
「ぢゅいぢゅい」
「ヂヂッ!」
取り留めもない会話をしながら歩いていると、なにやらネズミ達が騒がしい。
「ん? どしたの?」
尻尾の先に小さなリボンを結んだリーダーが前に出てきて、強請るようにキュウキュウ鳴いた。
「ご飯欲しいのかな? ほらお食べ〜」
マリがリュックから固形飼料を取り出して与える。町で購入した小型モンスター用の餌だ。
「餌やりの頻度ってどのくらいなの?」
「どのモンスターでも二十四時間に一回以上だよ。モンスターによって与える餌や一回の食事量は違うけど」
「餌やりを忘れるとどうなるの?」
「好感度が下がってテイムが解消される。つまり逃げちゃうんだよね」
ならば農家は毎日ログインして餌やりをする必要があるのか。大変だな。
それとも自動給餌器みたいなアイテムや機能が後々出てきたりするのだろうか?
「召喚士は餌やりの必要が無いんだっけ?」
「うん。でも嗜好品として与えることは出来るよ。何度も餌を与えると好感度が上がるらしい」
「好感度が上がるとどうなるの?」
「具体的なメリットはまだ確認されてないけど、甘えてきたり反応が変わったりするみたいだよ」
動物好きな人にはそれがメリットなのかもね、と言うマリ。
寧ろテイムモンスターとの触れ合いをメインにするプレイヤーも居そうだ。
そういう人にとってはテイムモンスターが必ず懐いてくれる仕様こそ一番価値があるのかもしれない。
「あれ? でも今日はもう餌やりしたんだけどな」
ステータス計算するの意外と大変ですね……。
職業によるステータス変動は計算後の状態で表記していますが、スキルによる補正は状況によって変わるので書きませんでした。
装備による加算は括弧内のプラス部分です。
あと肌着や靴下は履いてますが、重量も追加効果もないので省いています。
ステータスの上昇率やゲーム内の地理・宗教など、細かい設定を本編で一々説明すると読み辛くなりそうで悩みます。




