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十四年後の私・十四年前のあなた④

突然現れたこの少年は、真紀の苗字を呼んだ。



 そのため、真紀は目を見開き少年になにかを尋ねようと口を開いたまさにそのとき、携帯電話に着信を知らせる音が響き渡った。


着信音が二度ほどなったのちに消える。


 彼女はハンドバッグにいれていた携帯を取り出すとメールをチェックする。婚約者からのものだ。


 それを読んでいると少年の視線がこちらへと向かっていることに気づく。真樹をみているのではない。彼女のもつ携帯を物珍しそうにみているのだ。


「ねえねえ、これなに?」


「え?」


 少年の言葉に、真紀は耳をうたがった。


 いまどき、携帯電話なんて子供でも持っている


 それなのに、この少年は初めてみるような顔をしているのだ。


「携帯よ。携帯電話」


「ケイタイデンワ? このちっこいのが携帯電話なのか!? 携帯電話っていえばさ」


そういいながら、少年は手を大きく広げながらこんなに大きいんじゃないのかと示している。おそらくそれは昔の携帯電話だ。それこそ昔あぅたショルダー型の携帯。


たしかにそういうものがあったような気もするが、それはテレビで紹介されていたぐらいで身近でみたことはない。


 まさか、この子


 まさか、光孝君?


昔、真樹が子供の頃にテレビでみた携帯電話のことを思い出しながらも、小学時代のクラスメートに似た少年をみる。


 まさか、そんなことがあるのか。


 けれど、目の前にいる少年は真樹の記憶のなかにある光弘の姿そのものだった。


「ちょっと、貸して、かして」


 この人懐っこい感じも似ている。


そういう子供だった。だれにでもわけへだてなくて大人だろうとすぐに仲良くなってしまう明るい性格の少年。


 真紀がそんなことを思い出しているといつのまにか携帯電話が少年の手に渡っていた。


「うわああ、すげえ、魔法みたい」


「ちょっと……」


 少年はどうなっているのかを探るかのように携帯を動かしたりしている


 そのとき、突然音楽が鳴りはじめたために、少年はびっくりして携帯電話を取り落としそうになった


「これ、ウォークマン? 電話じゃないの?」


 少年は混乱しているようだった。


「ちょっと、かして」


 真紀はそれを奪い取ると、電話の通信を開いた


「お母さん、ごめん、うん、うん。ああ、彼、次の便で来るのよ。仕事の都合……で。うん、うん」


 少年は興味深げに真紀のほうを見ていた


 真紀は母親との会話を追えて通信を切る。


「本当に電話なんだ」


「あなた……名前なに? どこから来たの?」


「おれ?あ、そういえば……」


 少年はようやく自分の置かれた状況を思い出したようだった


「おれ、車に轢かれそうになったんだ。あれ?轢かれた?」


 困惑する少年を真紀は見詰めた。


 やっぱり似ている。


 光孝くんに似ている。


 似ているどころじゃない。


 そのものだ


 真紀の記憶にある光孝君そのものだ。


 でも……


 そんなことが……


「あなた、今年何年かしっている?」


「え?」


 少年はきょとんとする


「いま何年?」


「おれを馬鹿にしてんの?子供だからって」


「いいから、答えなさい」


「1992年だろ……」


 やっぱり


 真紀は確信した。


「あなた、もしかしてT小学校六年一組の前川光孝くん?」


「え? なんで俺の名前知っているの?」


 彼は目を大きく見開いた


 やっぱり……


 この子、光孝くんか


 タイムスリップしてきたらしい


 しかも過去から……



「知っているわよ。私は黒江真紀だもの。あなたのクラスメートの……」


 その言葉に光孝という少年は驚愕した


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