十四年後の私・十四年前のあなた③
揺れている
ゆらゆらとなにかが揺れている。
うっすらと見えるのは、川。その向こうにはお花畑。
ここは、どこだろう。
足が勝手に動いていく。
だれかが手招きをしている。
誰だろう。
見たことのある人だ。
最も身近にいた誰か……。
そんなはずはない。
橋の向こうにいるなんておかしい。
だって、あの人は、まだこちら側にいるはずだ。
「正解」
聞き覚えのない声ではっとする。
そこには、少年がいた。
自分と変わらないほどの少年。
「あれは今の彼じゃない。遠い未来の彼」
「あんた。だれ?」
「僕? 僕はセイ。時の番人さ」
「ときのばんにん?」
「ちょっと、覗いてみないかい?」
「なにを?」
「未来の彼の願いだよ」
意味が分からない。
「深く考えなくいいよ。ちょっとした時間旅行さ」
なにかを言い返すよりも早く、視界がゆがんでいき、花畑も少年の姿も消え去った。
──────────
「うわあ!」
セイという少年が消えたかと思うと、目の前の光景が一気に変わった。なにかに押されるかのように体が前のめりに倒れそうになる。
なんとか、足をふんばって転ぶのを食い止めようとしたのだが、間に合わずそのまま膝が地面についた。
その瞬間に膝にジンジンと痛みが走る。
「大丈夫? 君?」
痛む膝を押さえていると誰かに話しかけられた光弘は顔をあげる。
女性だ。
年齢は二十台半ばほど。白い肌と大きな瞳の女性だった。
見た瞬間、クラスメートの女の子が思い浮かんだ。
おかっぱ頭の女の子。
「黒江?」
光孝が思わず漏らすと、彼女の目が大きく見開かれた。