十四年後の私・十四年前のあなた②
光孝は、朝から父親と喧嘩をしてしまった。
その原因は、光孝が父親の大事にしていた時計を勝手に使って壊してしまったからだ。
おかげで、父親にものすごく怒られた。
悪いのは自分なのに、素直にならず、逆に反抗的な態度を取り父をものすごく傷つけるようなことをいってしまったのだ。
父がどんな顔をしていたのか見ずに家を飛び出した光弘が気づいたときにはよく友達と遊んでいる公園にたどり着いていた。
そこにはいつものように友達の姿があり、光弘にこっちこいよと手を振っている。
友達たちに誘われるままに公園へと足を踏み入れた光弘は父と喧嘩してしまったことなど忘れるかのようにサッカーボールを蹴りはじめた。
遊んでいるとすっかりあたりが薄暗くなっていく。
もうすぐ夕食の時間。
良い子は家に帰りましょうと、いつものように子供たちの帰宅を呼びかける町の放送が始まっている。
「また学校で」
「またなあ」
そんな言葉を交わして友人たちが帰路につき始める。気づけば一人公園にいた。
すると自然と父の怒った顔が思い浮かぶ。
帰りたくない。
光弘は家のほうへ一度向かったが、すぐに引き返す。
そんな行為を数分繰り返していた。
怖い。
自分は父嫌われたかもしれないと思うと怖くてたまらない。怒られるよりも拒絶されるほうが痛い。
そんな不安な気持ちのまま公園を出て家へ向かって歩いていた。
すると、突然響いた車のクラクションの音。
光弘がはっと我に返ったときにはすでに遅かった。光弘の目の前に車が迫ってきていることを認識するよりも早く視界が真っ白になってしまったのだった。