十四年後の私・十四年前のあなた⑨
父が病に蝕まれたのは、おれが高校生のころだった。」
光弘の話を聞きながら、真樹はお墓に手を合わせている。
「そのころには、もう六ヶ月しか生きられないと告知されたよ。そのとき、こういうことたったのかと妙に冷静に思っている自分がいた」
真紀は黙って隣にいる婚約者の話を聞いていた
「無責任だと思っている。お袋が倒れそうなぐらいショックを受けているのに、俺は父さんがいなくなるからあの場所がなくなるのだと思った」
光弘は皮肉そうに笑った
「半年といわれたけど、父は三年も生きた」
光弘は、空を見上げた
「父が亡くなってから、母は、すでに結婚していた兄貴の家にいった」
「光弘は行かなかったの?」
「誘われたけどな、一応未成年だしさ。とはいっても二十歳になる少し前たったけどな」
「断って一人暮らし?」
「ああ」
「しかも、東京にでて?」
「ああ。そしたら、おまえに再会した」
光弘は、微笑んで見せた。
「やっぱり、運命かな?」
「どうかな?少なくとも、俺は、あの時から、二十六のおばさんに恋していたかもな」
「失礼ねえ。まだ26よ」
「そうだな」
光弘はいたずらに笑い始めた
「さてと、親父にも報告終わった。いこうか」
「うん!!」
真紀と光弘はお互いの手を握り締め、歩き始めた。