十四年後の私・十四年前のあなた⑧
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真紀はそれを見届けたのちにふうとため息を漏らして空を見上げた
「なんか。スリルにかけるわねえ」
「そういうものさ」
真紀が声を聞いて振り向くと、長身の男が一人こちらを見ていた。
「あれ? こうくん。いつからいたの?」
真紀は尋ねた
「さっきからいたぞ」
「なによそれ。それよりも行きましょう。お母さんが待っているわ」
真紀は彼の腕をつかみ上げた。
そして、楽しげに微笑む。
「なんだよ、真紀」
彼は、怪訝そうに真紀を見た
「結構、かわいい顔していたのね」
「なんだ? そりゃあ」
「それよりもいこう! 光弘!!」
真紀と『光弘』は、彼の住んでいた家のなくなった土地に背を向けて歩き出した
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「光弘!!」
光弘が目を覚ますとそこには父の心配そうに見つめる姿があった。
「お父さん」
「よかった。本当に」
その隣には涙ぐんでいる母の姿がある。いったいここはどこだろうか。自分は今までなにをしていたのだろう。光弘は自分のおかれている状況がわからずに呆然とした。
脳裏には先程までいっしょにいた女性の姿。あれは幻だったのか。
光弘は起き上がろうとした。そのとたん、全身に激しい痛みが走る。
「むりするな。何針か縫っているんだぞ」
よくみると、光弘の身体中に包帯がまかれていた。
「光弘、悪かったな」
「え」
「おれがあんなこと言わなかったら、事故になんてあわなかったのに」
「父さん。おれこそごめん」
光孝は、顔を伏せた。
すると、父親は光孝の頭を撫でる。
「いいってことだ。おまえの命には変えられない」
光孝は、父親を見た。
父親は優しい目をしている。
その瞳に安心感を覚えた。
光孝は、ようやく逢えたような気がして、幸せを感じた。