詩「きみの町」
長生きをするのが幸せならば、なに不
自由なく、私は孤独に飲み込まれて死
んでしまいたい。
成功より願望を抱いたまま、日暮れ、
鉄塔に刺さる赤い雲の、流れるままに、
誰かに恋をして、ただ。
誰かを想いながら、愛される夢の中
で、星、炎が淡く揺れるように、狭い
箱の中で、目を閉じる。
きみは成長していく。きみは成長して
いる。きみは成長していく。きみは成
長している。
人を愛するということは、自分を愛す
るということだ。夕日がまぶしい町の
片隅で祈りたい。
否定することのない巨大な岩石のよ
うにその足元には無数の命が輝いてい
るはずだから。
きみの生まれた町。
きみに出会った町。
きみと成長した町。
「結婚したら大きな庭があって、そこ
でみんなとお月見でもできるのなら、
それがきっと幸せだと思う」
おとめ座の移り変わり、神々の足跡、
コウノトリ、過ぎ去っていく虚勢、純
粋な野良犬、汗を流す農夫。
本の間に挟んだ栞に染み付いた埃の匂
いが懐かしく、今夜は久しぶりに夜空
を眺めて映画を見て。