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冥帝英霊神託  作者: 弌樹カリュ
序章・胎動編
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06.Call

「おはようございます、アヒム執行官。当機の状態は良好。執行官の体調やテンションに合わせた非常に高度な機能『顔色伺い』を使用しますか?」


「おはよう、ディア。普通、顔色をうかがうときは自己申告はしないんだよ。それに、顔色伺いなんて機能、ないんだろ?」


「はい、私なりの自立型人形冗談アンドロイド・ジョークです」


 ディアと出会ってから一週間以上が経とうとしている。他の自立型人形はどうか分からないが、ディアに限って言うとしたら、ディアはとても冗談が好きだ。


 どれもがお世辞には面白いとは言えないけれど、自立型人形独特の抑揚の抑えられているような声と真面目な雰囲気でされたら、どんなに面白くないことも面白く感じてしまう。そのせいか、ディアにはよく笑わされた一週間を過ごしていた。


「明日から全執行官が集合し、執行官の任務内容についての詳しい説明と講習会である、『第三冥帝教練』が行われます。教鞭を執るのはアヒム様の出身である第三冥府の第三冥帝ディートゲリンデ様です。教練への参加は可能ですか?」


「ああ、可能だよ。時間の調整は僕じゃなくてディアに任せた方が早いし、しっかりしてる」

「時間の調整ですね、分かりました。本部への通達も行いましたし、本日の予定を確認します。本日はどのように過ごされるおつもりですか?」


 何をするのかディアは毎朝聞いてくる。本部、つまるところの七役委員会に執行官の行動を報告するためと執行官たちが行く先々で問題が起きないようにしっかりと監督するためなのだろう。


 最初は特に今日することなんて決まっていなくて戸惑っていたが、毎朝聞いてくるので明日の予定を考えて行動できるようになった。


 教練参加のために準備は必要ないとのことだったので、他の執行官に挨拶をしたいと伝えてみると、執行官室に数人、執行官がいると教えてくれる。


「執行官室ぅ……? なにそれ、初耳なんですけど」


「昨日の伝達事項にありましたが、当機が伝達するよりも先にアヒム様は就寝なされたので」


「よくわかったね」


「当機には魔力の流れを感知する能力が付けられており、睡眠時には魔力は不規則に動くため、それから判断した次第です。執行官室は本日より入室が可能となっており、他の執行官の方々は自身の荷物を運び入れているようです」


「荷物を運ぶって言ってもなあ……」


 基本的に年がら年中貧乏だったうちに、仕事のための部屋に荷物を持っていけるだけの荷物はない。強いていうのなら、書類仕事のために筆記用具類を持っていくことぐらいで荷物と呼べる荷物はない。


「しかし、執行官室に荷物を運び入れずに困るのはアヒム執行官です。当機は執行官の判断と命令に従いますが、荷物を運び入れるという決断をされることを推奨します」


 ディアがこんなふうに強く言う事は一週間のうちでも一度もなかった。何か理由があるのだろうか。


「……部屋に運び入れる荷物というのは具体的に言うと?」


「椅子、机、窓枠、そのほかにも……」


「ちょっと待って、執行官室って僕ら一人一人に一室ずつ与えられている感じなの⁉」


「はい、その感じになって」


 ディアが言葉を言い終わるよりも先に、額が青緑色に光る。見た目はどこからどう見ても少女にしか見えないけれど、こういう人とは違うところを見せられると、ディアは本当に『人形』なのだと納得せざるを得ない。


 ちなみに、この額が光るシステムは意外と便利だ。冥帝や本部からの連絡は青緑色に光り、緊急時には赤色に光る。ディアや僕に危害を加えられたときは、額だけでなく全身が光り、周辺の組織に通知が飛ぶようになっている。


 表向きは冥帝直属の役人なのだ。冥帝に喧嘩を売るようなものだ。


「それで通知内容は?」


「第一〇冥帝バチェランチェ様よりお呼び出しです」






 冥帝からのお呼び出しは早々あるものじゃない。かくいう僕は、この二、三か月の間に二人の冥帝に呼び出されるという、稀有な事態に陥っているが。


 一度目は僕が執行官に選ばれたとき。


 そして二度目が、今この瞬間だった。


「バチェランチェ様の基本的な情報について教えてくれ。好きなものとかはどうでもいいけど、どういう人となりなのかが分かるような情報があれば助かる」


 ディアはこちらの条件がなければ、情報を取捨選択することなく全て教えてくれる。それは、僕に包み隠さず言ってくれるという好ましい一面でもあるが、こちらで取捨選択しなければならず、情報を精査することが難しいという一面もある。


 大まかに説明すると、バチェランチェ様は第一〇に数えられる悲鳴冥府ヴェリアンドラの冥帝で、隣接幽玄世界ジアンダの死神。冥府の名を聞いたことはあっても、ジアンダという世界の名前を聞いたことがなかったので補足説明を聞いてみると、第三冥府の出身世界とはかなり離れた場所にあるようで、知らなくても当然という感じだった。


 悲鳴冥府の冥帝とだけあって、部屋からはいつでも悲鳴が聞こえてくるとか。しかし、打って変わって本人は至極まともな冥帝にんげんらしく、慕われているのだとか。


 白亜の広場――母校である冥帝院魔法高等学部の建物に近い自宅から冥帝院の中に足を踏み込み、更に奥へと入っていく。一般の人間ならば許可証があったとしても入るのは難しい冥帝院の内部。顔パス感覚ですんなりと入れるのは執行官という役職のお陰だ。


 側にいるディアは自立型人形であるため、存在そのものが稀有。そのため、各関所ではディアは素通りされることが許されている。もし人間にあてはめていれば不具合が生じてしまうらしい。


 そんな自立型人形がつくのは執行官に限られる。そのおかげでほぼ顔パスで中に入っていけるのだ。自慢したくなるような気持ちでいると到着したようでディアが扉の前に立つ。


「あ、あああああっ。あうううううう。死んじゃうぅううううおうぇええええ……」


 扉を叩くよりも衝撃的な。頭を鈍器で殴られたような感覚に襲われた。

やらかしました!!!昨日投稿できていると思っていたのに、、、、、!!!

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