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冥帝英霊神託  作者: 弌樹カリュ
序章・胎動編
6/17

05




 大聖堂の中には、長い机が七つあり、その前方には高い背中のついた荘厳な椅子がついていた。

 王座と呼んでも遜色ないほどの出来だ。


 席の六つが埋まっており、ここに五役ガリルヴァがいるところを見るに、七つの席は七役委員会の七役が座する場なのだろう。


 やはり何かに怯えながら進むガリルヴァの後に続き、七役のいる前方までやって来た。


 色とりどりのガラス細工に、魔法が込められた生きる石像。

 滅多に見ることのない物が多く展示されているのにも関わらず、そんなものは一切、視界の中には入らない。


 途端、空いていた中央の――恐らくはガリルヴァの席――の目の前まで来ると、照明が落ちた。


「何事だっ!?」


 いくら厳格なゼオスフィールといえ、根本は教官。

 生徒の安全を第一に考える高等魔法学部の教員らしく、適切な反応が取れている。


「ひぇ……心配することはありません。ひぇ……我ら七役は、ひぇ……その顔を覚えられてはならないのです。ひぇ……あの照明はあくまでも、この席に車での、ひぇ……導に過ぎません」


 何を言っているのか理解できないゼオスフィール。

 ガリルヴァはやはり何かに怯えているが、先程までと同じようにただ怯えているだけではなかった。


 その背筋はぴしっと伸びている。

 服には一切の皺もない。

 そして何よりも、自信なさげな頭髪がオールバックになっていた。


 暗闇の中でゼオスフィールはその変わりように気が着けないが、ガリルヴァは笑みを浮かべて説明を続ける。


「この暗闇は忘我の闇と言われ、七役の顔を忘れさせる魔法だ。これまでともに行動していたガリルヴァの顔を君は思い出せるかな?」


 しわがれた老女の声がする。

 冷や汗をかきながら、ゼオスフィールは思い出そうと記憶の魔法を発動させる。


 けれど、上手くはいかない。


「ふふ。いい反応じゃのう。ふふ」


 厭味ったらしく老爺が笑う。

 ガリルヴァが咳ばらいをすると七役は姿勢をただした。


「これより、七役会議を始める」


 ガリルヴァの宣言によって、七役委員会の頭による七役会議が始まった。


 当初は、なぜ自分が呼ばれたのか理解が追いついていなかったゼオスフィールだったが、ガリルヴァの話を聞いて居ればわかる、という言葉に恭順し、話を淡々と聞いているとその全容の大体が把握できていた。


 まず一つ目、七役委員会は神託執行機関アルヴァノにおいて、十八冥帝に次ぐ権力を持っているという事。


 これは、ここで話し合ったことが機関の決定だ、という言葉が何度も聞こえたからゼオスフィールがそう判断に過ぎない。


 二つ目、七役はそれぞれの役目を持っている。

 ガリルヴァが執行官の役目をになっているのだ。

 執行官を育てたり見つけ出したりすることが彼の役目なのだろう。


 ガリルヴァたちの話は本質を突き詰めた中身ばかりで、滞りなく進んでいく。


 ここまでスムーズに会議が進むことは高等魔法学部では滅多にない事なので、ゼオスフィールは感心していたが、今が冥神がいなくなり、神託によれば冥神がそれを遺すしかないほどの世界の災禍が訪れる、という非常事態なのだ。


 昨日までいがみ合っていた者同士も背に腹は代えられない、ということなのかもしれない。


 七役だって、冥帝たちとなんら変わりはないだろう。

 多大な権力を持っていて、冥神アステナに認められた。

 ただそれだけの存在なのだ。


 そんなどこか屈折した見方をしているゼオスフィールの心境など、七役には届いておらず、最後の最後にゼオスフィールが呼ばれた理由が分かる。


「これを以て、七役委員会は高等魔法学部教師ゼオスフィールに執行官育成計画の最高責任者の命を任ずる」


 雰囲気が拒むことを許してはくれない。

 元より、ゼオスフィールに断る思いなんてものは微塵もない。

 ためらいもなく、ゼオスフィールはその場にひざまずいて頷いた。



 七役会議が終わると、暗闇は晴れ、ゼオスフィールの視界が元に戻った。

 そこにはもう、七役の姿はなかった。


 大聖堂まで連れてきてくれたガリルヴァの姿もなくなっており、そこにあるのはへんてこりんな顔をした天使の生きる石像だけだった。


 へんてこりんな天使がもつ本の表紙の文字がところどころ変化している。


「あっちへ、行って――もしかして、私がこれからどう行動すればいいのか言ってくれているのか?」


 ――うん。


 ゼオスフィールは感心した。

 感心という言葉に尽きるな、とどこか俯瞰的に心の中で思った。


 へんてこりんな天使の示してくれた方向まで行くと、執行官管理官室という札の掛かった部屋が見えてきた。


 二度扉を叩き、中へ入る許可を貰うと、そこにはゼオスフィールのよく知る人物がいた。





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