表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥帝英霊神託  作者: 弌樹カリュ
序章・胎動編
11/17

09.Calculator


 ――――今、目の前で何が起こったのか理解ができない。

 痴女というにふさわしいミシェルの独特の明るい青髪と危なげなショッキングピンクの瞳を持った人間ではなく、そこにいたのは透き通るような白さを持つ絹肌の少女だった。

 背丈もミシェルに比べるといくらか大きくなっているし、顔から何まで全部違う。


「お前は誰だ……? ミシェルは、ミシェルはどこにいったんだッ‼」


「私ぃ? 私はねえ、執行官なんかじゃないよ。私はあなたの言っているミシェルってのお人形さん。あなたで言うところのディアちゃんみたいな存在よ?」


 一瞬で殺気だってしまう。

 ミシェルが現れた時とは違う、全身がこの――ミシェルの相棒にんぎょうを自称するこの女を全身で否定している。

 なんだこの違和感は。何度考えを巡らせてみても答えは出ない。

 とりあえずは状況を把握するためにも、こいつの話を聞いて手を組むのか判断しなければ。


「第一二工房から生まれました、稀代の天才――いや、天災博士ベーグの手から生まれた超計算特化型自立人形オートマチック・カルキュレーターのレイン・ラトルプーナと申します。よろしくお願いつかまつりますね」


「第一二工房……? 確か、そこはエクス教授と敵対しているオートクヴェルヌ派の中枢にあるんじゃなかったのか? なぜ、第一工房ここにいるんだ」


 ディアを始めとする自立型人形たちを生み出した研究者たちの集団『人形学会』は、その数、数百人――果たしたら数千人もいるような大規模な組織だ。

 それだけに一枚岩というわけにはいかないようで、様々な派閥に分かれている。

 第一人者であるエクス教授を頭とするエクス派。年齢や性別、出身などを一切問わず、純粋な人形学に対する熱意と才能だけが物をいう、実力主義の派閥で、この派閥に属している研究者の数が最も多い。

 そんなエクス派に対抗できる――二大巨頭の一角とも評されるのが『血と家柄と秩序』を重視するオートクヴェルヌの一派である。オートクヴェルヌは人形学に携わる研究者の一族だ。集会に出席すれば、必ずオートクヴェルヌに会えると言われているほど多く、最古参である。

 エクス教授にお世話になったのでそれぐらいの知識は知っている。この二つは根本的に相容れない関係にあり、工房それぞれのりょういきに足を踏み入れるなんてまずない。

 ――ないはずなのに。


「ああ、知らないのかい? 第一二工房はね、私が吹き飛ばしてしまったの」


「吹き飛ばした!? 自分の生家こうぼうを!? ベーグ博士は君の父か母か……まあ、どちらにしろ親に当たるような存在だろうが!」


「うふふ。ウブなコは可愛いですね。私ぃ、何の人形って名乗ったかしらあ?」


 彼女は――レイン・ラトルプーナは、超計算特化型自立人形オートマチック・カルキュレーターと名乗った。彼女に与えられた役割は、呼んで字のごとく『計算』にあるのだろう。


「勘は別に悪い方じゃなさそうね。その通り。生まれて一番最初に導き出した『こたえ』が、吹き飛ばすことだったのよ。ただそれだけのこと。これで吹き飛ばしたことに対する説明は十分かしらあ?」


「ああ、十分だよ。君がどんな人間なのかも分かった。君は与えられたもんだいにしか価値を見いだせないってことだろう?」


 逆鱗に触れた――とは言い難いようで、レインは眉をぴくりと動かすだけで飄々とした笑みを崩すようなことはない。

 レインが善なのか悪なのか判断を下すことはできない。

 なぜなら彼女が、僕たちが考えるような基準で動いていないからだ。

 人形達かのじょたちはそうなのだろう。

 ディアもきっと、僕とは違う価値観で動いているのだと思う。


「私は計算する人形きかい。求められているのはその計算能力だけ。特に悲しいともなんとも思っていないから、好きなように言えばいいのよ。それで、どうして(エクス教授)の工房に来ているのか、だったわね」


「……」


「簡単よ。体がちょっとおかしくなったからよ」

現れた人形が口にした不調とは――――――!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ