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川神洋子

新キャラ登場です


9話です

「……」

「……」


 ど、どうなっとるんだ一体……? なんで僕が見ず知らずの綺麗な人と一緒に下校しているんだ? しかも三年の先輩と……。それに彼女もそれ以上まだ何も話してこないし、はてどうしたものか……。

 僕が彼女をちらちらと見ながら、さっきの下駄箱時の内容を思い出す。


「私は川神洋子って言うの。宜しくね、優君」

「えっとー、あの~??」

「いきなりだけど帰りながらちょっとお話しない?」

「僕とですか?」

「えぇっ」

「な……なぜ?」

「…………え?」


 僕が意外なことでも言ってしまったのか、かなり驚いて戸惑っていた。


「私が誘っているのよ?」

「えと~、……だから??」

「!?」


 彼女は驚いて少しのけ反るが、姿勢を正して少し黙る。なにやら考えているようだ。


「私が頼んで……来ない男が……なんて」

「?」


 なにやらブツブツ言っているが、僕にその詳細な内容は聞こえてこない。


「…なら私は貴方に用があるの。とっても大事な話」

「……えと……どんな話ですか?」

「…そうね。貴方の幼馴染のこととかかしら」

「え!!? わ、分かりました一緒に帰りましょう!」

「え? え、えぇ……」


 という訳で川神先輩と一緒に帰ることになった。高校入ってから女子(しかも綺麗な先輩)と下校するなんて始めてだから少しドキドキする。

 幼馴染の話って……まさか和希のことか? まさかまさかっ。けど幼馴染って他にいないし、もしそうならどうして知っているんだ? 和希はまだ部活中かな?

 僕はここからでは見えないテニス場の方を眺める。


「どうして運動場の方を見るの?」

「へっ!? いや別に? ちょっと画になる風景だなと思って見ていただけてすよ!?」


 てすよとか言っちゃったよ?


「……で、どうなの?」

「え?」

「私と歩いてどう?」

「えと、どう……とは一体……?」

「……ほらっ、私って高校ではそれなりに有名人だから、そんな有名人と歩けてどう……的な?」

「えと……それは……」


 え……と、どう答えたら良いんだ? とりあえず普通に答えるかなっ。


「へ、へぇ~、北高の有名人だったんですかっ。凄いですね、知らなかったですっ」

「は?」

「え?」

「…それすらも知らないの?」

「えと……はい?」

「じゃあ私が演劇部に入っているのも?」

「…知りません」

「私が何組なのかも?」

「…はい」


 彼女は信じられないものでも見るような目でこちらを見る。興味のない先輩が何組にいるかなんて知っているだろうか普通?


「…始めてね。そこまで私を知らない男子に会うのは」

「そう……ですか?」

「えぇ……」


 最初の頃は怪訝な目で見ていた彼女だったが、次第に落ち込んだ表情になっていった。


「あの……大丈夫ですよ先輩っ。充分お綺麗ですから、他の多くの男性から数多のお声がありますよっ」

「…そ、そうよねっ。私は綺麗だものっ。もちろん男子からも人気あるもんっ」


 どうやら自信を戻したみたいで良かった。とはいえそもそも学校の人気者であるらしい彼女がモブである僕なんかに声をかけて来たのだろうか? そこからまず不思議だな。


「いや駄目よっ。貴方じゃないと駄目なのっ!」

「えと……何がです?」

「…あ、いや……何でもないわ。……それより貴方と貴方の幼馴染についての話をしたいわ」

「いっ……一体なんのことだか……?」

「隠さなくても知っているわよ。貴方、水野和希さんの幼馴染なんでしょ?」

「まままさか、そんな和希となんて幼馴染な訳ないでしょ!!???」


 ど、どうして彼女はそんなことを知っているんだ? これだけは学校の誰にもバレてないと思っていたのにっ。

 彼女は僕のことじっと見てくる。明らかに分かっている顔だった。しらを切れないと感じた僕は観念して彼女に訊いてみる。


「…………どこからその情報を?」

「ん? 普通に水野さんから訊いたわ」


 か、和希が? 一体どうしてだ!?


「ふーん、私にはそんな対応なのに、彼女の話になるとそんなに狼狽えるんだ。これはこれで燃えるじゃない」


 一体何に燃えるか分からないが、これはまずいなっ。学校の生徒にバレると和希の評判がっ! 折角自分の魅力を最大限に活かして学校生活を頑張って楽しく過ごそうとするあいつの邪魔だけはしたくないっ!


「……川神先輩」

「ん? 何かしら?」

「あの僕と和希の幼馴染の話黙ってて貰えませんか?」

「あらどうして?」

「どうしてもですっ!」

「……ふーん、そ。別に良いわ」


 良かったっ、物わかりの良い先輩で。


「でもその代わり条件よ」

「え?」

「……その前に明日は予報だと天気良さそうね。ショッピング日和よ」

「え? ……そうなんですか?」

「…これ見ると二人で出かけるにはちょうど良い天候になりそうと思わない?」

「はぁ……、まぁ…………」

「~~~っ! もう焦れったいわねっ。私をデートに誘ってよっ!」

「へ?」

「良い!? 今週の日曜日に私とデートすることっ! 良いわねっ!?」

「えーーーっ!?」


 なにやらとんでもないことになってしまった。校内の有名人(?)の美人な先輩と一緒にデートに行くことになるとは……。

 折角の僕の休日が……、期末テストの勉強が……。いや、それよりあいつは別の女子と歩く僕を見てどう思うだろうか。驚くだろうか、妬いてくれるだろうか。それとも……。

 夕方なのにまだこの暑い気候の中で部活をしているであろう彼女のことを思いながら、ただ無常にボールの音だけが聞こえてくる。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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