美少女らしい部活での活躍
昼休みから頑張っている生徒がいて……?
3話です
「ふう……」
5月も中旬になり、外の暑さが日に日に増してくる。僕は昼休みに井内と気分転換をするべく校内を散歩する。
「どうした天野、もう疲れたのか? もしかして日光は天敵か?」
「まさかっ。吸血鬼じゃあるまいし」
僕達はそんな他愛もない話をしていると、パーン、パーンと向こうの方からラリーの音がする。
(なんだ?)
「何やってんだ? 昼休みのこのくそ暑い日に……もしかして水野さんか?」
「ど、どうしてそこで和……水野さんの名が出てくるんだよ!?」
「何を動揺しとるんだ? なに、テニスの音がするから女子テニス部かと思ってな。ちょっと見に行ってみようぜっ」
「あ、おいっ」
僕は井内のその言葉につられて、急いで彼の後に付いていく。音は確かにテニス場の方から聞こえている。そして着いてみると、僕の幼馴染がもう一人の女子とテニスの練習をしていた。
「おーっ、やっぱり水野さんじゃんっ!」
「……」
まさか昼休みにも部活の練習をしているのか。僕は驚きを通り越して少し呆れてしまった。
しかし確かにあいつは元から運動音痴ではなかったが、それにしても……上手いな。
「水野さんテニス上手いな~。流石は今年の総体の選手に選ばれるだけある」
「え? 和……水野さんが!? まだ1年生だぞっ!?」
「なんだ知らんのか? 水野さん補欠に選ばれたみたいだぞ?」
「……」
「流石水野さんって感じだ。やることの美少女ッぷりが最高だな」
そうだったのか……、知らなかった。あいつの運動能力は昔から平均ぐらいだったが、まさか運動部に入って総体のメンバーに選ばれるほどの実力になるとは…。僕の見えないところで並々ならぬ努力をしたんだな………。
さっきまでの呆れはどこかにいき、今は尊敬の念が出てきていた。しかしそれと同時に少し寂寥感も出てくる。
「俺もテニスしたいな~」
「なんで?」
「そうすれば水野さんと仲良くなれるかもしれん!」
「お前はバスケ一筋とか行って、迷わずバスケ部に入っていただろ?」
「それとこれとは別だなっ」
「……」
「しかしそれにしても……」
「?」
「水野さんは制服の格好だな」
「あっ、まさかお前……っ」
「少し屈めば拝めるんじゃないか?」
「わっ、なに馬鹿なこと考えとるんだっ!?」
その時ハードな動きのせいで和希のスカートがひらっとなびいた。
「おっ、これはっ……」
「わーーーっ!」
僕は手で急いでスカートの中を見せないように井内の目を塞ぐ。
「あっ、おいっ、こらっ。見えないじゃないか!」
スカートの中が他の男子にも見られて本当に大丈夫か、僕は幼馴染として心配で凝視していたら、スカートの下はちゃんと体操着を履いていた。
そして僕は井内からぱっと手を離す。
「おいっ、どういう了見……おっ、またスカートが…………、なんだ体操着か……」
明らかに落ち込んだ馬鹿をほっといて僕はここから立ち去った。
「おい、天野っ。どこに行くんだよ?」
「そろそろ予鈴が鳴るから帰る」
そして歩いてクラスに帰りながらふと僕はあいつとの思い出を振り返る。
中学までは僕も部活に入っており、和希とよく一緒に話をしながら楽しく帰っていた。昨日見た動画の話からしょうも無い話まで。しかし今の僕は帰宅部でのんびりと過ごして、一方彼女はより一層部活に励んで活躍している。
一緒に帰っていた頃が懐かしく思う。時代は変わった。そろそろ幼馴染を卒業する時かもしれないな。
そう思っていた時にスパーンという音が聞こえる。
「お、水野さんサーブを決めたっ。格好いいな……」
そう井内の声を聞きながら、僕は彼女との学校での格差や関係が変わり始めたと感じて、何とも言えない気持ちになった。
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