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天野優

和希が気にしてます


2話です

「俺にも幼馴染欲しかったなーっ」


 高校に出来た友人である井内克彦(かつひこ)が1時限を終えて開口一番にそういうこと言うものだから僕にかなりの緊張が走る。


「べ、別に僕には幼馴染なんていないよっ!?」

「何を言っとるんだ天野? 漫画でよくある羨ま設定のことじゃないか」


 なんだ、そういうことか。

 僕はてっきり和希との関係を知っているのかと思ったが、そうではなくてひと安心した。


「ならどう良いんだよ?」

「なに? 知らんのか、天に与えられし者だけが知っている幼馴染の良さを? ならば教えてやろう、俺の思う素晴らしき幼馴染の良さってやつをっ」

「おーっ、待ってました~っ」


 お前はいないんだよなと思いつつ僕はあんまり気のない返事をしながら、ぱちぱちぱちと拍手をした。


「まず幼馴染の良さと言えば長年連れ添った夫婦のような“安心感”だ。これは見過ごせないっ」

「安心感……ねぇ」

「例えばっ、小さい頃から一緒にいるから相手のことがよく分かっている。つまり互いの信用度が高いと言える」

「まぁ、それは分からんでもない」


 確かに和希と一緒にいると、落ち着けるし気兼ねなく居られる。それにあいつの趣味や仕草、性格なんてほぼお見通しだ。……しかし最近の和希は僕の想像を軽く超えた行動をしてくるので戸惑いを隠せない。これは僕が生物学的に男になるから、女の気持ちが分からなくなるということなのだろうか?


「二つ目に“シンパシー”があるということだ」

「シンパシー?」

「お互い一緒にいる時間が長いから、相手が何も言わなくても、『あぁ、こいつ何か不満げだな』とか『今日は機嫌悪いな』とかが分かるということだ」

「なるほどねーっ。じゃああれか? 表情や仕草だけで相手の気持ちが分かるということか?」

「流石は天野。よくラノベを読んでいるだけある」


 実際にそう言った幼馴染がいるからな。けど……最近はそうでもないぞ? 分からない時は分からない。


「三つ目は……」

「まだあるのか?」

「これで最後だ。三つ目は思い出の共有だ」

「!」

「やはり小さい頃からよく遊んだ間柄だ。楽しい時や悲しい時、ケンカした時と様々な時間を共有している。思い出の共有は強力だ。長い月日がないと出来ないことだ。だから相手への分かりみが深いし情が深まる」

「……」


 確かにあいつとの思い出なんて腐るほどある。近くの公園に行ったことや遊園地、ゲーム、川釣りや鬼ごっこと色々と遊んだ。

 魚を釣った時は楽しかったし、飼ってた犬が死んだ時は和希は泣いていたし、鬼ごっこの時にタッチしたかどうかでケンカしたりとあの時の光景をいま見ているかのように思い出す。

 あいつとの忘れられない思い出。長い月日で共有した思い出だ。

 まったく井内の言う通りだな。他の物には変えられない価値……、

 

「以上のことはその幼馴染が美少女に限る」

「今ので全部台無しだよ」


 それが本音かよ……。さっきまでの感動と聞いていた時間を返せっ。全くもって台無しだよっ。


「幼馴染欲すぃ~なーっ」

「そんな欲望ダダ漏れ状態なら、出来るものも出来ないぞ?」

「そうかな?」

「そうじゃないか?」

「口に出せば夢は実現出来るって言うじゃないかっ」


 幼馴染は努力で出来ることじゃないし……。


「あれ水野さんじゃないか?」

「なんでそこで和希の名前が出てくるんだ!? 和希なんて知らないぞ!?」

「何言っとるんだ天野。あそこにいるのは水野さんじゃないか?」

「あっ、え?」


 うちのクラスのドアから見える廊下を見ると確かに和希だった。うちのクラスの女子と何やら話しているようだ。いつからあんなに仲良く、というかいつからそんなにコミュ力高くなったんだ?

 まぁそれより、今は隣の男がじーっとこっちを見ているのが気になる。


「何?」

「今、水野さんのこと下の名前で呼ばなかったか?」

「えっ!? あっ、いや……和希……が好き~って言ったんだよ。水飲むのが好き~って」

「ふーん、気をつけろよ。水野さんを下の名前で呼ぶと消されるぞ」

「だ、誰に?」

「彼女のファンクラブに」


 和希のファンクラブ、なんかちょー怖っ!!? というかこの高校にもうあいつのファンクラブがあるのか?


「なんか水野さん、こっち見て……なんか天野の方ばかりをちらちら見てないか?」

「ははは…、まさか」


 いや、めっちゃ見てますね。確かにめっちゃ見てる。僕との幼馴染が周りにバレたらあいつの学校での評判が悪くなりかねない。というか僕の命が危ないっ。

 だから僕はあいつに伝わるジェスチャーを送る。子供の頃よく『分かるかな?』ゲームをしたものだ。

 僕は机に顔を伏せて両手を立てた状態にした。


「どうした? いきなり何やってるんだ?」

「…………」

「ありゃ、水野さんっどっか行っちゃった……。あーーっ、もっと見たかったな~」


 僕は井内が悲しんでいるのを横目に幼馴染のことが周り(特にこいつ)にバレず乗り切れてとりあえずホッとした。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

手を立てたのはバリアのイメージです。

『俺もう寝るー! 邪魔すんなーっ』的なっ。

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