決意
ラスト二話になりそうです
13話です
画を描き終わった後の僕はずっと和希のことが気になった。まったく学校に来ないことだ。
(一体どうしたのかな、和希のやつ? チャットだって既読しか付かないし……)
画を見せたくてもこのままでは彼女に見せることが出来ない。僕はどうしたら良いか考えを巡らせた。
そして放課後になり、僕は美術の授業の課題の画を飾ってあるところに松葉杖をつきながらせっせと行く。と、そこにぽつんと一人の美少女が僕の画を眺めながら立っていた。
「川神先輩」
「……! 天野君」
振り向いた彼女は確かに川神先輩その人だった。苗字呼びになって、少し違和感を感じたが気にせず話をする。
「どうしたんですか? こんなところで」
「……偶々帰り道で通った時に一際綺麗な画があったから、見惚れていたの。まさかゆ……天野君のだったなんてね」
「は、はい。そうです」
「……綺麗な画ね。こんなに上手とは知らなかったわ」
「あ、ありがとうございますっ」
「これにこの白服の少女……」
「?」
彼女は僕のその少女の画を見ながら少し言い淀む。少し表情が暗い。何かあったのだろうか。
「……少し校内で話さない?」
「え? 別に構いませんけど……」
そして僕達は少し校内を散策することにした。もう夏休みまでの学校の行事は残すところ球技大会だけになり、テストを終えた生徒達は部活をしたりクラスで話していたりと、学校で気楽に過ごしていた。
「で、どうしましたか川神先輩」
「……実は私ね、最近気になる相手が出来たの」
「へえー、そうですか。それは良いじゃないですかっ」
「……けどその人には好きな人がいてね」
「……あぁ、それは」
「……ところで最近水野さん登校してないそうね」
「……! えぇ」
「心配?」
「えぇ、もちろん」
「……そうよね。幼馴染だもんね」
「は、はい」
「本当にそれだけ?」
「……え?」
「あの画を見て思ったんだけど、貴方が好きな人って水野さんじゃないの?」
「! それは……」
「……言わなくても分かるわ。あの画を見てあの少女のモチーフは水野さんって分かったもの」
「……」
「それでね……、私が天野君に言いたいのはね……私は貴方に惚れてしまったってことよ」
「!」
「はぁ~あーっ、告白は普通男子からするものだと思っていたのに、まさか私から告白するなんてねーっ」
「……」
「で、返事は?」
「……すみません。ご期待に添えらず……」
「……そう。分かってたけど、いざフラれると切ないものね……」
「……」
「……それで貴方はどうするの?」
「……え?」
「私が勇気を振り絞って告白したのに、貴方は彼女に何も言わないの?」
「……それは」
「何か言えない訳でもあるの?」
「……」
「ほら、言ってすっきりなさいっ」
僕は彼女に和希への思いの丈を話した。あいつと学校で一緒にいると迷惑になるんじゃないかと説明した。
「呆れた。そんなしょうもない理由?」
「……え?」
「彼女が貴方といるのが迷惑と言ったの?」
「いや、そういうわけでは?」
「じゃあ、どうしてっ」
「あいつとは住む世界が変わった気がして……」
彼女は深いため息をつく。ものすごく呆れているようだ。
「……貴方は住む世界が違うと思っているから告白しないんだ」
「……はい」
「駄目ね。そんな考えじゃあ確かに水野さんとは付き合えないわね」
「……」
「はぁ~あ、私が告白した相手がこんなしょうもない相手だなんて辟易するわ」
「……」
「貴方の彼女への想いなのはその程度なのね」
「……え?」
「だってそうでしょう? 迷惑やその住む世界とやらが乗り越えられない程の想いってことでしょ?」
「そ、それは……」
「そうじゃないなら、さっさと彼女に告白しなさいっ」
「!」
「貴方の想いが本物なら彼女に想いだけは伝えなさいっ。そこから先は彼女が決めてくれることよっ! 彼女が迷惑と思っているなら気持ちよくフッてくれるでしょうよ。単に貴方は臆病になっているだけで、自分のことしか考えてないナルシスト野郎よっ。私をフッたんだからそれくらいの責務はあるわっ!」
「!」
「もしフラれたなら、私のところに来なさい。慰めてあげるから」
「……分かりましたっ。告白しますっ!」
「宜しいっ!」
「……その前に“あれ”を持っていきたいんですが」
「……そうねっ! 私が車を準備しとくから、取りに行きなさいっ」
「え? 何から何まですみません」
「良いのよ。天野優の一世一代の告白だものっ」
「はいっ!」
そう言った僕は学校に戻って少しの間だけ“あれ”を持ち出す許可をもらうべく霧島先生のところに向かった。
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