(?)幼馴染・水野和希
新連載です
宜しくお願いしますっ!
高校入学と同時に遂にその日が来てしまった……。
僕はその日の朝、いつものように50m先にある幼馴染の家に向かっていた。そしたら彼女の玄関の前に見知らぬ美少女が立っていた。誰だろうと思い軽くちらっと見ていると、彼女はこっちに微笑みかけてくる。僕はドキッとして目を背けたが、ふと見た顔だと思い出す。
あ……、
「和……希?」
「当たり~っ。もう気づくの遅いよ。優君っ」
彼女は僕の名前をあだ名で呼ぶ。そう僕の幼馴染は美少女になってしまったのだ。
いや、少し語弊な言い方をしてしまった。
元々和希は美人な顔立ちだった。しかしあいつは中学時代は髪を三つ編みにして、黒縁眼鏡をかけていた所謂地味子で、部活も文芸部とインドアに拍車がかかっていた感じだった。
僕もどちらかと言えば運動よりもインドア系が好きだからスクールカーストもよく似ており、家が近所も相まって仲が良かった。
「和希」
「優君」
と小学生の頃から呼び合っており、それは今でも変わらない……そう変わらないと思っていた。
しかしあいつは後ろに巻いていた三つ編みを降ろして、色々と髪に細工(=髪飾り)を施し眼鏡を外してアイドル顔負けの可愛さになってしまった。俗に言う高校デビューだ。
これは他の男子に目をつけられないか心配になった。それから日を追う毎にその推測は確信へと変わっていった。
入学式から一週間経っただろうか、もう和希は校内で既に注目の的だった。クラスが違うから詳しくは分からないが、僕のクラスまであいつの噂が届いていた。
『1-7にかなりの美少女がいるぞ!』
和希は小学校の時から勉強家で常に成績トップだったから、成績優秀者のクラスである7組に所属し、また入学式の時に成績優秀者の訓辞を読んで周りから一目置かれた程だ。
そしてまさか部活は陽キャの巣窟である女子テニス部に入ったのだ。前の和希には考えられないほどのアグレッシブな動きに僕は想像を超えてしまい戸惑いを隠せないでいる。
(どうしてしまったんだ和希の奴!? 高校でかなり変わってしまったぞ!?)
一方の僕は普通のクラスに入って、多少クラスの友達も出来て、本を読む為に念願の帰宅部になったが、なにやら和希とはスクールカーストの差が開くばかりだった。
それから少ししてまだクラスの中でグループが確立する前、つまり4月の終わり頃の帰り道に後ろから和希が声をかける。
「優くーん」
「お……和希か」
「なんかクラスが違うから滅多に会わなくなったわね」
「ん……まぁな。ところでクラスはどうだ?」
「んっ、とっても楽しいわよっ。新しい友達も出来て色々勉強の話も出来て楽しい」
「そうか、それは良かった。部活は?」
「んーっ、基礎練習ばかりで大変ねっ。ほら私中学は文芸部だったから体力無くって。だけど頑張ってみるわ」
高校をとても謳歌しているな。和希が何やら遠い存在になってしまった。けど和希が楽しいならそれはそれで良かった。
「優君はどう?」
「僕? 僕は~、本を読むために無事帰宅部になれたよ」
「そっかーっ。それじゃあ帰るの早いんだ」
「まあな。その為の帰宅部だからな」
「じゃあさ今日優君の家に遊びに行って良い?」
「え?」
そして和希は一度自分の家に戻って着替えて、僕の家にやって来た。どうしたことかかなりお洒落な私服になっていた。所謂渋谷ファッション的な感じか?
「お邪魔しまーす」
「お……こっちだよ」
「……うんっ」
そして和希を僕の部屋に連れて普通に本を読んだり話をしたりする。しかし話してみると、外見は変わっても和希は和希のままで趣味や中身は(少し性格は明るくなった)変わっておらず、僕はひと安心する。
「このラノベ面白いねっ」
「だろーっ。明るくて読みやすい」
「うんうん。そうだねっ。そう言えばさーっ、今このラノベを読んで思い出したんだけどさっ」
「どうした?」
「テニス部の友達と話した時に幼馴染の話になってさ~っ」
「う、うん……」
「だから私に自慢の幼馴染がいるって言っちゃったっ♪」
こ、このままでは僕が和希にとって黒歴史になりかねない。
これを機に僕は和希と距離を取り、一緒に登校するのも控えるようになった。そして僕は和希との幼馴染を止めることにした。
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