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No.2「被検体 夏木仁」
「こ、これは?」
知穂は怖がる様に体を両腕で抱きしめながら仁とスマホを交互に見ている。
「犬鳴研究所との共同開発のAIです」
「なんだって!?」
「わっ、いきなり大声出してどうしたの?」
仁が言った犬鳴研究所という言葉に過剰に反応した悟に、驚いた雫がその理由を尋ねる。
「ご、ごめんよ。でも、犬鳴研究所だなんて」
「ねぇ、どんな所なの?」
呆然として、心ここに在らずな悟の代わりに知穂が雫に簡単に説明する。
「恐らく世界で1番の研究所よ。人類のその先へ行く研究所とも呼ばれてる」
「その裏腹悪い噂も絶えないんだ」
悟が知穂の言葉を補足した。私怨を込めて。
「待ってください。俺もプログラムしただけで後のことは分からずじまいなんです」
「どういう事だ?」
「プログラムを送ったら報酬の支払いがあって契約満了。フリーのプログラマーと一緒の扱いです。でも、後日メールと共に」
仁はそこで言葉を切り、スマホをトントンと軽く叩く。
「こいつが来たって訳」