No.2「被検体 夏木仁」
仁が教室から出て別棟の更に奥、科学研究室と書かれたプレートのある教室に入る。仁のいる教室から中々離れていて昼休みにわざわざそんなとこまで行く生徒はまず居ない。
「そもそもお前は誰かに話してもいい存在なのか?」
「いーんじゃないですかね、ご主人様に決定権あると思いますよ」
「そりゃ何よりだ」
仁のいた教室にガラガラ引き戸を引いて仁を探す少女がいる。
「仁ー!って、あれ?」
雫がキョロキョロしてると、クラスメイトの1人が雫に仁が既に出ていった事を伝えた様だ。
「そっか、ありがとね」
「ねぇ、三神さんはその、夏木君と付き合ってるの?」
雫に仁の場所を教えてくれたクラスメイトが興味深そうに聞いてきた。
そのクラスメイトは色恋話が何よりも好きな様でワクワクした様子。
雫は残念そうな顔で影をともしながら俯いた。
「私は好きなの、でも、でも!あの機械オタクめ!これっぽっちも見向きもしない!」
と、突然喚き出しクラスメイトは地雷を踏み抜いたと直感したが後の祭りだった。
以降雫に仁の事を深く聞く人は居なくなった。
雫に仁のことを聞いた女性とは後に色恋沙汰は当人同士の問題、他人が関わるべきではないと悟ったようになったとか、ならなかったとか。