No.2「被検体 夏木仁」
仁は雫が無造作にポイ捨てした制服に着替える。
パソコンが起動音を立てて勝手に立ち上がる。
触っても無いのにパソコンが勝手に起動してらクラッキングを疑うものだが、仁はパスワードを打ちホーム画面を開く。
「勝手に付けるな」
仁がパソコンに喋りかける。するとパソコンが喋り始めた。 正確にはパソコン画面に映る女の子のアバターに。
「ご主人様はなってないねー。人でなしだよ」
「AIがよもやここまで自我を持つとは、危ないか?消すか?」
「わ〜!待って!ご主人様!株価調べといたから!あと、あと、例のプログラム組んどいたよ」
「へぇ、流石だな」
仁とAIが話し込んでいるとドアを乱暴に開ける乱入者が現れる。
「もうっ!仁、何してるの!遅刻しちゃう!」
いつまで経っても降りてこない仁に痺れを切らしたように、部屋に入って雫が腰に手を当てて前屈みで仁に詰め寄る。
「悪い、今行く」
「朝にパソコン使っちゃダメだよ」
「なんで」
「夢中になって時間忘れちゃうじゃん。私にも夢中になってくれてもいいのに……」
雫は文句をブツブツと言い、最後の一言はゴニョニョと小さな声で、仁には聞こえなかった。
「ご主人様、ご主人様〜!」
AIがパソコンの画面端で小声で呼びかける。
「ん」
仁がスマホのアプリを起動してWi-Fiと連動させる。すると、AIが仁のスマホに移った。
仁は雫より少し遅れて階段を降り、リビングの席に着いた。