狩人になるための心得
「ヴォルト」
「ガ!」
三本脚の大烏が俺に駆け寄ってくる。
よろけそうになった俺の左側に身体を滑り込ませてきたヴォルトはピョンッと跳んで再び小さく鳴いた。
「ニコ、ヴォルト、ちょうど頼んでいたものが届いたのよ」
母さんが俺の頬を撫でて、それからヴォルトの嘴に魚をくわえさせてやる。
そして、俺の左手にあるものを付けてくれた。
「これくらいしか、あたしたちの稼ぎじゃ買えなかったけど」
申し訳なさそうな顔をする母さんに、俺は義手の先端に付いているフックを見ながらおどけて答える。
「ありがとう。一人前の狩人になったらもっとすごいものを自分で買うから大丈夫だよ」
「ったく。懲りないのはおじいさん似だね」
困ったように笑った母さんは、ヴォルトの頭を撫でた。
「まったく。この子がいなかったらどうなっていたことか」
「ガァグゥ…ルルル」
心地よさそうに鳴きながら、ヴォルトは母さんに撫でられている。
俺は、あの時、意識を失って気が付いたら家で目を覚ました。
ヴォルトが村まで俺を背負って飛んできたらしい。血まみれになって、脚を一本失っていたヴォルトを村の人達は倒してしまおうとしたらしいが、母さんが激怒をして止めたらしいと後になって聞かされた。
それから数日して、まるで雷を落とされたみたいに黒焦げになった泥岩河馬の死体が打ち上げらた。
何人かは、大烏が雷で倒したんだってヴォルトのことを神様みたいに崇めているらしい。
こいつは幼体で雷を操れないけど、本当は伝説の通り雷を操ったりするんだろうか。
「ヴォルト、行くぞ」
「ガ」
俺の声を聞いて頭を持ち上げたヴォルトは、三本の脚で器用に駆けだした。
「お前の脚は俺が作ってやるからな。さ、材料探しと行こうか」
「ガ!ガ!」
俺を背に乗せて、ヴォルトは空高く舞い上がった。
俺は弱い。
いつでも森の獣に狙われて、食うか食われるかの日々を送っている。
もうやられてばっかりなのはごめんだ。でも、一人では獣に立ち向かっていけない。今回は、たまたま助かった。俺も、俺を助けてくれた親友も。
だから、俺は決めたんだ。こいつがもう傷つかないように、もっと力を付けるって。




