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4話 異世界

「っと、到着」


 ここが地球とは違う世界。異世界か。

 見る限り日本とほとんど変わりないけれど、


「植物が全く違うね」


 種類は全く違うようだ。地球にはない。


「見渡す限り木ばっかりなんだけど……」


 周囲に人の気配はない。動物すらいないようだ。

 どうしようかと考えていると、フードの中が揺れるのを感じた。


「呼ばれた気がしてじゃじゃーん! リンだよ?」

「どうしてリンがいるんだよ? ちゃんと向こうの世界においてきたはずなんだけど」

「ふふー、リンとユートの仲でしょ。置いてかれたら悲しいよー」


 リンとはもう3年の仲になるだろうか。

 かといって、他の世界にも精霊がいるかは分からないし、一人になってもさみしいだろうと向こうに置いていこうと思ったんだけど、予想以上にリンは力があるらしい。


「リンは大丈夫なの? 確か精霊は魔素がないと生きていけないんだろう?」


 魔素というのは地球に満ちていた力の源のようなものだ。向こうにいた魔術師という魔術を使う人たちはその魔素を使用して魔術を使っていた。

 僕も友人に教えてもらって使えるのだけど、神力の方が圧倒的に効率が良かったため使うことはほとんどなかったけど。


「大丈夫! 魔素ではないけどそれに似た力はあるし、それに唯斗から少しずつ神力とかもらってるから」


 って、それは初耳だよ? でも僕が気がつかないくらいだから多分本当にごく少量しかとってないんだろう。


「まぁ、リンがいいならそれでいいや。精霊の本質は自由だからね」

「うん! それに、リンだって役に立つよ?」

「それは知ってるよ。未成年なのに飛行機に乗れたのはリンのおかげだし」

「またそういう場面があるかもしれないでしょ? だからリンはユートと一緒がいいな」

「分かった。じゃあこれからもよろしくね、リン」

「うん! ユート大好き!」


 リンはいつものように頭の上に乗っかった。できれば肩にしてほしいんだけど……。


「それじゃあ、リン。いつもの頼むよ」

「いいよー。【何しよっかな】」


 リンの力の一つに未来予知に近いものがある。さすがに百発百中とまではいかないが、何をしようか迷った時には便利な力だ。

 実際、それでお姫様を一人救っている。

 まあ、僕はちょっとした占い程度にしか考えていないが。


「うーんとね。あっち方向に歩いたらいいと思う!」

「あっちだね。ありがとう、リン」


 とりあえずリンの言う通りの方向へ歩いて行けばいいだろう。

 当てない旅だ。どうせ世界中を回るのだし、気ままに行くのが一番だ。

 僕はリンを一撫でしてから歩き始めた。





 しばらくの間歩き続けると、洞窟が見えてきた。大きな岩の真ん中に大きな穴が開き、その岩の両サイドには火のついていない松明が置かれている。


「ここで合ってるの?」

「うん! この中、かなー」

「相変わらず曖昧だね。まあいいや、とりあえず入ってみようか」


 とはいっても洞窟の中は真っ暗だ。普通であれば準備がなければ入ることなどないだろう。


「こんな時には本当に便利だね【ライト】」


 本来であれば魔素を使った魔術なんだけど、それを自分流に改造して神力をした神術にしてみた。

 効果は単純明快。ただ光る球を作り出すだけだ。

 これがかなり便利で、懐中電灯みたいに手で持ったりしなくていい。しかも、自動で動かすこともできるし、僕の意志で動かすこともできる。


「初めての場所だし、今まで通り慎重に行こうか」

「だねー。でもユートなら大丈夫ー」

「僕だって怪我をするときはあるんだけど……」


 実際地球では死にかけたことは1度や2度では済まなかった。とはいっても最初の2年程だったけど。




 中に入ってみると、少し気温が低いようで肌寒い。それに、じめじめとしていた。

 足元を見てみれば、ずっと奥まで階段のように段差ができていた。

 足を滑らして転げ落ちないように気を付けなくてはいけないようだ。


「一体どういった意図でつくられたんだろうね」

「うーん。リンにはわからないー」

「大丈夫。独り言だから」


 周囲を確認しながら下っていくと驚くほど広い空間に出た。


「これはすごいね」

「ねー」


 洞窟の中にはまた森が広がっていた。一体どういうことなんだろう?

 あまりにも広くて終わりが見えない。間違えて地上に戻ってきてしまったのかと勘違いしてしまうほどだ。


「しかも明るいし」


 何故か『ライト』で照らしていないにもかかわらず、地上と遜色ないほどに明るかった。

 が、すぐにその理由は分かった。


「周りの岩自体が発光しているみたいだね。仕組みは全く分からないけど」


 世界が異なるとその世界の仕組みも異なると天照さんが言っていた。

 だから今の僕には理解できないけれど、何かしらの法則があるはずだ。


「それを探してみるのもまた面白いかな」


 未知というのはやはり面白い。トラベラーになってよかったと心から思えた。


 そんなことを考えていると、僕の耳が金属音を捉えた。


「何だろう? 『サーチ』」


『サーチ』も魔術にあったものを自分なりに改造してみたものだ。これもかなり便利なもので、遠く離れたものを感じ取ることができる。


「これは……、人と何かが戦ってるみたいだね」

「何かー?」

「これはなんだろう? 地球にはなかった生物だからよく分かんないや。でも、アニメに出ていたゴブリンとかいう生物と似ているね」

「ゴブリンってあの、臭い汚い気持ち悪いの?」

「そんなこと誰が言ってたの?」

「うーんとね。テレビ?」


 テレビでそんなこと言ってたっけ? けど、地球ではゴブリンを発見することはできなかったから新鮮だ。

 なんで異世界にゴブリンがいてそれを地球の人たちが知っているのかは謎ではあるけれど、時々異世界の物が地球に流れてしまうこともあるって天照さんが言っていたから、それを偶然見た人がいたのかもしれない。

 その逆もしかりなんだけどね。


「あ、倒したみたい」


 どうやらここはいわゆるファンタジーと呼ばれる世界なのかもしれない。

 ゴブリンを倒した2人は何かをゴブリンの胸から取り出すと、奥へと進んでいった。


「あの2人を追ってー」

「え、ついてった方がいいの?」

「うん」


 リンの言うことだ。何かしら意味があるのだろう。

 僕はリュックを背負いなおすと、2人の後を追った。


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