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神託と予言の子?
神聖エルカビナ歴1536年9月15日、エストロノア王国の辺境にあるコーエン騎士爵家は、慌ただしい朝を迎えていた。残暑が続くセミの鳴き声よりも大声を出している者がいた。名前をエルザ・コーエンと言い、騎士爵夫人としては幼さの残る17歳の少女である。
時は3カ月前に戻る。
エルカビナ教会の聖女ミーゼスに神託が下された。
「今年9月15日に世界を救いし大魔導士ズッキー様の生まれ変わりが誕生される。」
そのため9月誕生予定の子はなんとか神託の9月15日に出産させようととあらゆる手を尽くしていた。妊婦はたまったものではない。
現在に時は戻る
コーエン騎士爵家も例に漏れず、エルザは出産しようと大声を上げいきんでいた。昼を過ぎても、夕方になろうとも一向に産まれる気配はない。みんなが諦めかけた頃に、事態が一変する。
夕食を摂りソファーで横になり寝ていると侍女によって起こされるエルザは寝室に戻る階段を上る途中に破水が起こり、その15分後に男児を出産する。その時日付は9月16日を指していた。