7.動物のお医者さん
小説を読んでいただいている方は何となく予想しているかもしれませんが、作者は北海道に居を構えております。北海道と言うと思い出すのはカニ、イクラ、雪まつり……と代表的なモノが色々ありすが、広大な土地に生きる動物達も魅力の一つかと思います。実際北海道に住んでいると山や野で暮らすたくさんの野生動物に遭遇しますし、地域によっては広い牧場で飼われている牛、馬、羊等を目にする機会も多いです。
危険なのは道路に突如現れる野生動物との遭遇です。地方都市と地方都市の間が離れているので、都市間の移動では信号も無いひと気も無い山や平地が続く光景の中を、ただひたすら延々と車を走らせると言う単調な運転が続く事があります。
実際作者も道に飛び出して来たキタキツネを轢きそうになった事や、エゾ鹿の群れの間を間一髪で抜けた経験があります。死ぬかと思いました。普段の運転はトロいのですが、その時だけ神がかったドライビングテクニックを発揮してしまいました。火事場の馬鹿力、若しくは普段使っていない70%の脳を使ったとでも考えなければ説明がつかない俊敏さでした。
日本一広大なキャンパスを持つと言われるH大でもエゾリスやカモ等の野生動物を見る事ができます。キャンパス内の農地をトテトテ横切っているキタキツネを目にした事もありました。H大の札幌キャンパスはJR札幌駅のすぐ裏手から北に拡がっていて、ほぼ中心市街に位置している筈なんですけどね。その近隣では普通に歩いていてキタキツネを目にする事はありません。H大の前身S農学校は明治9年開校していますが、現在地に移ったのは明治36年です。ある意味大学が、まだまだ開発途中だった当時の自然を一部保存すると言う役割も担われているのかもしれませんね。
また地方都市では早朝の住宅街をキタキツネがうろついているのを目にする機会も多いです。しかし『彼らは恐ろしいエキノコックスと言う寄生虫を飼っているので近づかないように!』と子供の頃から口を酸っぱくして言い聞かされているので、立ち去るのをそっと見守ります。皆さんも北海道内をドライブする時キタキツネに遭遇したらそっと遠くから愛でるだけにしておく事をお勧めします。
『動物のお医者さん』は北海道にあるH大獣医学部を舞台にした漫画です。テレビドラマにもなり、このコミックスが刊行された当時、思わず難関の獣医学部を志した方も多かった筈。同じような現象が荒川弘先生の『銀の匙silver spoon』の舞台、蝦夷農業高校のモデルとなった高校にも起こり、倍率が跳ねあがったと聞いています。
『動物のお医者さん』の作者、佐々木倫子先生のコミックスは書店で目に付いた分は大体読んで来ましたが、少女漫画に珍しく恋愛フラグが立たない作品がほとんどでした。記憶では私の読んだ佐々木先生の作品の中では主人公が恋愛をした物は初期の一~二作くらいだったと思います。脇役の恋愛がネタになる事はあっても、大抵主人公は恋に落ちる事無く本編は終わりを迎えます。確か主人公が恋愛していた作品も、話のメインは恋愛じゃなかったような……すいません、ちょっとうろ覚えです。
佐々木先生は『動物の~』の後は青年誌に拠点を移して『おたんこナース』『Heaven?』『チャンネルはそのまま』をビックコミックスピリッツに、そしてIKKIに綾辻行人先生原作の『月館の殺人』を掲載していらっしゃいます。どれも丁寧な作画と入念な取材に裏打ちされた、しかし『動物のお医者さん』以前までの作品で発揮されたボケとボケとツッコミ(打ち間違いではありません。ボケが普通より一個多い気がします)が混在する他の作品の笑いとはちょっとテンポの違う笑いが活かされている、味のある作品ばかりです。今連載中の作品は無いようですが、大抵新作に入るのに二年くらい間が空いているそうですね。もし新作が出るならそろそろかなぁ、と期待してしまいます。
蛇足ですが『チャンネルはそのまま!』の主人公、雪丸さんが働いているHHTVに登場する破天荒な情報部部長、小倉さんにHTBテレビの藤村元ディレクターに重ねてしまう道民は多いでしょう。ちなみに藤村Dは大泉洋さんを世に広める切っ掛けとなった『水曜どうでしょう』のチーフディレクターです。
思いつくままの乱筆乱文にて申し訳ありません。
お読みいただき、有難うございました。
2018.6.25追記
『チャンネルはそのまま!』がHTB(北海道テレビ放送)開局50周年記念で来年三月に実写連続ドラマ化されるそうですね。今年九月に札幌市豊平区から中央区に移転するHTB本社の旧社屋を使って撮影する予定だそうです。プロデューサーは前出の藤村Dと嬉野さん(『水曜~』のカメラマンを務めていらっしゃいました)、総監督は『踊る大捜査線』の本広克行さんと言うワクワクするような布陣。八月にキャスト発表とのことですが、書庫の漫画を読み直して発表に備えようと思います。なお、ローカルですが道内放送に先駆けてネット配信もあるそうなので北海道に住んでいなくても視聴できます。




