6.指南書の効果
『アメトーク』の『読書芸人』でオードリーの若林さんが自分の本棚の写真を見せる時、微妙にピントをボカして紹介していました。曰く「本棚は自分のコンプレックスの塊だから恥ずかしい」からとの事。確かに!と思いました。
作者も購入した本の中で他人に見せたくないと思う物は、結構あります。小説や漫画は特に気になりませんが、実用書のうち……単なる興味や純粋な好奇心だけではない品揃えの部分、自分の欲望やコンプレックスが丸出しの指南書の類の本達がそれにあたります。作者の場合、その煩悩は大きく三つに分かれます。『金』『人付き合い』『片付け』です。
ちょっと小金持ちになりたい。大金持ちになりたい訳じゃないけれど、年を取って働けなくなった時金に困って路頭に迷いたくない。
苦手な人にどう対処したら良いのか?人に嫌われると苦しいから、大好きとは思われなくても悪目立ちせずに『そんなに悪い人じゃないよね』くらいには思われたい。
余計な物を持たない身軽な人間になりたい。スッキリした部屋に暮らしたい。苦労せず綺麗な部屋を維持する魔法のような簡単な工夫があればなぁ。
煩悩全開、コンプレックス満載。そんな恥部を他人に見られたいとは思いません。見せても大丈夫!と開き直れればいいのですが、そういう人間だったらそもそもそんな本買ってない(涙)
しかし本を買って理論を知っても、実践するのは難しい。
指南書のような本を買うと、書かれたスキルを既に手に入れたような気分になり、ほんの一時気持ちが落ち着くのですが、結局現実は変わらず、あまり活かされていない場合って多いです。読むだけで気が済む、というならまだ良い方。読まずに『積ん読』になっているのに―――何故か出来たような気になってしまったり。
と、言う訳で。ちょっと不安な心持ちの時、本屋でそう言う棚をうろつく事があります。
そんなある日のこと。
『苦手な人と上手く付き合うには』的なタイトルの本を立ち読みしている時。まさにその場所で、その問題の原因である一番苦手な同僚とバッタリ遭遇してしまいました。しかもバッチリタイトルが目に入る好位置に立っている……!!
ペコリと頭を下げエヘラっと笑顔を交わしつつも、二人の間にはザリザリと神経を紙やすりで擦られているような居心地の悪さが残ります。
何故か本屋でよく会うその同僚……!(お互い本好き!ジャンルは全く被らないが!)
本屋でも会って、図書館でも会う。もう運命としか言いようがありません。恋愛小説なら恋が始まる前フリです。毎回二人とも凍ってますけどね!職場が離れてからも更に二度ほどバッタリ遭遇しました。あれ?地方にいた筈なのに!!なんとつい最近戻られたばかりとの事。そしてお互い毎回「うわー、嫌だ!!」って顔に書いてあるのが見え見えです。全く場が温まらず、空気が二度ほど、確実に冷えます。
ジェリー・ミンチントン先生著、弓場隆先生訳の『うまくいっている人の考え方』にはこう書かれています。
『相手にどう思われているかを心配しない。あなたが相手にどう思われているかを心配しているときは、たぶん相手もあなたにどう思われているかを心配している。自分が相手に与える印象を気にしないほうが、いい印象をあたえられる。』と。
なるほどと思います。十年以上前に購入した時も『なるほど!その通りだ!』そう思いました。なのに、いまだに実践できそうもありません。
―――しかし同じ著書にこうも書かれています。
『自分で自分を苦しめない。―――何かが起こった時、いやだなと思うのは自分であり、自分の感情によって自分を叩きのめしてしまうのである。―――自分で自分を傷つけなければ多くの苦しみが避けられる』と。
だから取りあえず……こんな時はそっと笑顔で距離をとってフェイドアウトする事にしています。合わない人との仲を修復しようとか、相手に気に入られるようになろうとか、もうそんな不毛な努力については考えるのは止める事にしました。
だってできないんだもん!
作者はいつちゃんとした大人になれるのでしょうか??
もう一生なれるような気がしません。なる前に諦める事を学んでしまいました。
いつまで経ってもせっかく購入した指南書にあるような『うまくいっている人』にはなれませんが、確実に開き直りだけは『うまく』なったような気がします。(しかし未だに煩悩からは離れられません。グツグツと熾火のように未練は抱えたままです。指南書、未だに読んでるし!)
お耳汚しな言い訳ばかりで申し訳ありません。
お読みいただき、有難うございました。




