1.ヒストリエ
早く続きが読みたい。けれどもひたすら待つしかない。待ちます。
そんな心持ちにさせてくれる漫画家さん、小説家さんがいます。
そんな漫画家の一人、岩明均先生が現在講談社アフタヌーン誌に執筆しているのは『ヒストリエ』。主人公はマケドニア王国アレキサンドロス大王の書記官まで上り詰めたスキタイ人、エウネメス。彼の波瀾に満ちた人生には、いつも夢中にさせられてしまいます。
元々別の漫画家の作品のコミックスの続きが読みたくてついつい買ってしまったアフタヌーンですが、そこで『ヒストリエ』に出会いました。あんまりおもしろいので岩明先生の過去作品も片っ端から読みました。代表作の『寄生獣』や『七夕の国』は勿論安定の面白さですが、『雪の峠』『剣の舞』は本当に繰り返し繰り返し読みました。ネタバレになるので詳しくは言いませんが、キャラクター同士の軽妙な遣り取りが楽しいので、ストーリーの容赦無さが鋭く際立ち、何度読んでも胸が痛くなります。アルキメデスに関わるお話『ヘウレーカ』もそうですが、怒涛のような歴史の流れに巻き込まれ呑み込まれていく脇役のような人間の一人一人に人生があって、楽しい事や悲しい事があって……と言う事をまざまざと鮮明に焼き鏝のように押し付けられる―――読んでいて岩明先生の作品はどれもそんな気分にさせられます。最近辛い展開に耐えられない体になってしまったのですが、お話が素晴らしいのでついつい惹き込まれて何度も読んでしまう……恐ろしい(素晴らしい?)作品、描き手です。
若輩者が巨匠に対して今更こんな事を言ってもねぇ、と今猛烈に恥ずかしいです。戯言ですね、岩明先生の作品が素晴らしいのは周知の事実ですからね!
さて、『ヒストリエ』ですが。
読めばその圧倒的な画力とストーリーに巻き込まれるのは必須なので中身には触れません。本当に細かい事でいつも気になるのは、ある時からアフタヌーン本誌では背景が鉛筆のアタリしか書かれておらず、コミックスで初めてペン入れされた物が見られる……という状況が普通になりました。(今アフタヌーン誌を購読していないので、現在の状況はわかりませんが)それが楽しみで雑誌とコミックスを並べて読んで、比べていた時期もありました。勝手な推測ですが描かれた絵を見る限り、背景もモブも岩明先生が全てお一人で描かれているのでは?だから本誌掲載時には間に合わないのかな、と想像しております。そんな岩明先生のこだわりが大好きです。微笑ましく思います。(←偉そう!)やりたいだけ、やりたいようにやってくれ!作品を読みたいから、どんなルートで描こうと、思う存分自分のやり方で描いて欲しい。待ちますから……!と毎回思います。
駄文ですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
2017.6.26追記
岩明均先生原作、室井大資先生漫画の「レイリ」に手を伸ばしてしまいました。せめて五巻が出るまで我慢しようと思っていたのに……面白すぎて、先が読みたくて困っています。絵は全く違うのに原作と漫画に違和感が無いのも不思議です。主人公がゆっくり目線を動かす場面に、背筋がゾクゾクしました。
2017.7.13追記
ずっと気になっていたカエリ鯛先生の『腐男子社長』を手に入れました。アレクサンドロスとヘファイスティオンのエピソードの元ネタを知って複雑な気分…。腐属性は無かったのですが、これを読んでからNHK大河も違う視点で見てしまいそうです。
2018.5.8追記
大分前の刊になりますが、アフタヌーン本誌で『ヒストリエ』を読んだら背景がペン入れされていました…!とうとうアシスタントを雇われる決断をされたのか?それともペン入れする余裕が出来たのか?ご無理されていなければ良いのですが…自己中心的な一読者としては、健康を第一にして少しずつでも続きを書ける環境を整えていただきたいな、と願うばかりです。