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12.ゴールデンカムイ

野田サトル先生の『ゴールデンカムイ』のネタバレがありますので、気になる方は回避していただくか、読了後お読み下さい。

 何と言ってもヒロインのアシリパ(※)ちゃんが可愛いですね。ホントに好きです。小さくて強くて真っすぐで。時々辛辣な台詞を吐くところも、主人公・杉元が震えあがるほど恐ろしい顔を見せるところも可愛くてたまりません。


 集英社ヤングジャンプコミックス、野田サトル先生の『ゴールデンカムイ』がアニメ化されました。この四月からスタート!もちろん録画して観ています。OPもEPも良いですね。アニメーションスタジオはジェノスタジオ。以前も触れた映画『虐殺器官』を引き継ぎ完成させたスタジオです。うーんいいなぁ……良すぎる。褒め言葉の語彙が少なくてスイマセン。


 初めてこの作品を目にしたのはまたしても宝島社さんの『このマンガがすごい!』シリーズの紙面です。『2016オトコ編』二位を受賞されている作品でした。手に取って直ぐハマってしまいました。お……面白過ぎる……!と思わず独り()ちてしまうほど。あと変な言い方ですが、新しい!と思いました。戦国時代や異国の中世の戦を題材とした漫画や小説は時間や心理的な距離があるせいか、ともするとエンターテイメントのように読めてしまう(あくまで個人的な印象です)所があるのですが、このように近い時代、距離の戦争を題材としているのに悲惨さよりも先ず面白さが際立つのが本当にスゴイ!と思いました。

 この時代の小説やノンフィクション、歴史関係の本を読む事もあるのですが、『読まなければ、知らなければ』と言う義務感が心の何処かにいつも残っていたような気がします。何と言うか表現するのが難しいのですが……感情移入し過ぎる性質(たち)なので、近世モノを読むことは現実に近すぎて心が苦しい。けれどもやはり知っておかないと!と言う部分が心の隅から、どうしても消えなかったのです。こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、純粋に楽しむだけで読めない、と言うか。だけど『ゴールデン・カムイ』は、一読した後単純に『面白い!続きが読みたい!』と思わせてくれる作品でした。


 偶に博物館を見回るのですが、少し前に『平取町アイヌ文化情報センター』を見学する機会があって、書籍コーナーに『ゴールデンカムイ』が並んでいるのを発見!その本の周りをうろつきながら「うわぁ、うわぁ」と小声で一人で興奮してしまいました。……同行者には白い目で見られましたが。

 そして先日、STVテレビで放映中の『熱烈!ホットサンド』(※)を見ていたら、大英博物館にも作品を収蔵(十月に展示予定)される作品を手掛けているアイヌ工芸家・貝澤徹さんが登場して、その工房の店頭(こちらも平取町内です)にも『ゴールデンカムイ』が並んでいました。本物の熊の手 (……)で出来たブックエンドに挟まれて。熊の手ブックエンドに驚きつつも、一方で「うわぁ、皆読んでるんだな!」と思って画面の前で勝手にワクワクしていました。

 実際こちらには野田サトル先生が訪問されていて、マキリ(アイヌ民族によって用いられた短刀)を発注されたとのこと。七巻の表紙でキロランケが手にしている得物(えもの)の参考にされているそうです。


 こんなふうに自分の読んでいる、面白いと思っている作品を読んでいる人がいる!と気が付いた時、通常表にはあまり出しませんが胸の中では密かに年甲斐もなくトキめいてしまいます。


 松田奈緒子先生の『重版出来!』でもヒロインの黒田さんが食事をする時、編集部の人と「ヒンナヒンナ」と言い合っている描写でもキュン!と来ました。読んでるな~!と思うと、一人でニヤニヤしながら呻ってしまいます。

 ちなみに『ヒンナ』はアイヌ語で食事に感謝する表現として使われていて『ゴールデンカムイ』に頻出する狩猟後の食事シーンでアシリパさんや杉本がよく口する台詞です。


 と、ここまで全く本編のあらすじに触れませんでしたが、手塚治虫文化賞漫画大賞を初め数々の賞を受賞されている本作の内容については、ネット上に溢れているので下手な紹介文は載せずに置こうと思います。決してサボっているわけではありませんよ。本当にレビューとか要約とか、上手いこと素敵に書くのが苦手なんです。(何度かこちらでもあらすじらしきモノを書きましたが、読み直すと微妙な気持ちなるのでなるべく避けられるものは避けたいと思います)


 話がちょっと逸れましたので、戻ります。


 この作品を読んで感じたことがあります。それは読む前と読んだ後、確実にアイヌ文化への印象を変えられたような気がした、と言うことです。今まではそれに対して北海道にある大事な文化、と言う印象はありました。北海道の地名の由来のほとんどがアイヌ語ですし、小学校で習ったり図書館に蔵書が並んでいたりと北海道では何かと身近な文化の一つです。


 だけど単純に、アイヌ文化ってカッコイイんじゃない?なんて、何のアクも引っ掛かりも無く感じてしまったのは初めてのことです。おそらく『ゴールデンカムイ』を読んだ多くの人も感じたのではないでしょうか。『ゴールデンカムイ』以降と以後では、体の中に存在する物の見方が幾つか確実に変わったように思います。(シツコイですがあくまで個人的な印象です)


 歴史上の人物にも長く続く文化にも、良い面も悪い面も、暗い面も明るい面も当り前にあって。思うように魅力的な側面を引き出してたくさんの人の見方を変えるのは、キャンペーンを幾つ重ねてもどれだけお金を掛けてもなかなかに難しいことで。そんな困難な仕事を、この作品は成し遂げているのではないでしょうか。単純にお話として面白いだけでなく、一つの文化に光を当てて輝かせることが出来る力がある!……と個人的には思います。(こればっかりでホントにスイマセン)


 兎にも角にも野田先生、素晴らしい作品を有難うございました!続きも楽しみにしています!あと映画化されたら劇場に観に行きます!


 ……とここに書いても伝わらないかもしれませんが、今後も先生が恙無く続きを書けることを祈りつつ一読者の戯言を締めたいと思います。


 思考の赴くままの乱筆乱文、失礼いたします。

 お読みいただき、有難うございました。

※1

『アシリパ』の『リ』は原作では通常小文字で表記されていますが、便宜上大文字としております。


※2

『熱烈!ホットサンド』はお笑い芸人サンドウィッチマンのお二人が出演する北海道のローカル番組です。

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