9.虐殺器官
『虐殺器官 Genocidal Organ』
やっと観る事が出来ました。
『Project Itoh』三部作の内一番楽しみにしていたこの作品ですが、とうとう2017年2月3日から公開となりました。2015年10月に公開予定だったこの映画が、制作会社さんのご都合のにより一旦制作中止を余儀なくされたとWEBサイトで知った時は、思わずPC前でガクッと項垂れてしまったものです。
あと二回は観たいです。ただ時間が合わなくて見られない可能性が大きいですが……テレビ画面では無く映画館で見てこその映画だと思うのです。全くの私見です。あ、でもたくさんの方がそう思っていると想像しております。
最初に伊藤計劃先生の『虐殺器官』の文庫版を手に取ったのは書店の平積みでした。「あれ?なんか面白そう……」と思って図書館で借りて読みました(本屋さんスイマセン!)。が……読み終わって思わず「すげー!」と独り言を言ってしまいました。そしてこれを描いた(心象として『描いた』です。わざとです。誤字ではないです)方はどんな人なのだろう……と著者欄を確認し、まず若さに驚きました。「え!こんなに若いの!」と。そしてその次にもう著者の伊藤計劃先生が故人だと言う事を知って、更に驚きました。ご冥福をお祈りすると共に、手前勝手な意見で大変申し訳ないのですが、もう先生の新作が世に出ないのだと言う事実を、至極残念に思いました。
一度読んで……本当はもっと繰り返し読んだ方が色々な事に気付けるのだと思いますが、どうしても再読する事は出来ませんでした。再読しなくても鮮やかに心に描写が焼き付いてしまって、まるでトラウマを受けたような感覚に陥ってしまったからです。最近時間に余裕がないので映画を観る時間をなかなか捻出できないのですが、昔映画やDVDを観る余裕があった頃、『es(原題Das Experiment)』という実際行われたスタンフォード大学の監獄実験を元に制作された映画を観た時の感情を思い出しました。
二つの映画に揺り動かされる感情は何というべきか……。自分が自分で在ると言う事の不確かさをまざまざと思い知らされた、と言うような気持ちです。うーん、でももっと言い様があるような……すいません、上手く言い表せません。PTSDに近い様な、虐待を受けた記憶を疑似体験させられたようなそんな感覚です。多分二つとも子供には見せない方が良いと思います、R15指定ですから勿論出来ませんが。
元々SFやミステリーばかり読んでいまして、最近ご無沙汰になっていた所に久しぶりに読んだ『虐殺器官』(SFと言う枠には収まり切れない作品ですが)にガッツリ噛みつかれてしまいました。映画も本当に良かったです。色々な側面から言うべき事や見るべき事がたくさんある作品なのですが、映画を観るにあたって個人的に一番気になっていた、少し未来の武器・装備について文章では無く目に見える形で確認したかったので、其処を観る事が出来たので本当に良かったです。それから二時間弱と言う制限の範囲内で、削り場所に悩むであろう完成された小説のどの部分を削り、どのような形で収めるのか……と言う所も見どころでした。
作者はネット小説を書いている事を周囲にはほとんんど話していません。けれども友人の内一人だけに打ち明けて読んで貰いました。最近多忙で小説を読む暇が無いと言う友人には悪いとは思ったのですが、現在東京に在住しているので東京の描写に違和感が無いか知りたかったのです。
すると『面白かった!でも意外!』との返答が。そう言えば友人と出会った頃は武骨な話ばっかり読んでいたからな……それとも本人のキャラに合ってないからかな……と思いつつ『最近読んだり書いたりするのに辛い話はもう良いかな~と思って』と返したら『わかるー!』との返事が。そう言うお年頃なのかもしれません。昨今とみに体力や精神の容量がガクンと目減りしたような気が……。
でもそんな『辛い』&『痛い』の最たるもののような『虐殺器官』ですが、やっぱり面白かったです。夢中になりました。辛さを凌駕するくらい、その痛みを我慢してもなお、また観たいと思える映画でした。
こちらに書いても伝わらないとは思いますが、艱難辛苦を乗り越え公開に漕ぎ付けた制作スタッフ及び制作に尽力された方々、素晴らしい作品を世に出していただき、誠にありがとうございました。何とかして後一回は映画館で見ます!
思いつくままの乱筆乱文で申し訳ありません。
お読みいただき、誠に有難うございました。
2017.6.26追記
上映期間内にもう一度観る事が出来ました。感情移入し過ぎる性格なので二度目に観た後はかなり消耗してしまいました。近未来のお話と言うより、今現在私達が晒されている現実の問題としてどうしても捉えてしまい、恐怖心を抱いてしまう所為かもしれません。
『はだしのゲン』を読んだとき受けた『知ってしまった…!』と言う衝撃に何処か似ていると思いました。




