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地平線に沈む夕日は明日への希望  作者: 上月 佑幸
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豪勢な朝食と憂鬱な気持ち

 ヨムカの一日は隙間風が入る寂れた一室から始まる。


「うぅ、寒いな」


 何十回と呟いた朝一番の一言を今日も日課のようにぼやいては、立て付けの悪い戸棚からツナ缶を取り出し、手際よく缶切りで開けては中身の半分を一枚のパンの上に塗ってはトースターで程よい焦げ目がつくまで焼き、残ったもう半分はレタスの上に乗せる。


「朝から豪勢にサラダも食べられるなんて、数か月に一度あるか無いかの贅沢だね」


 嬉しそうにサラダをテーブルの上に乗せ、食欲をそそる焼き上がったパンの匂いに口角が自然と持ち上がる。


「いただきます!」


 年頃の女の子の部屋とは到底思えないボロ部屋でささやかな至福のひと時をヨムカは満喫していた。


「そういえば、今日って部隊対抗戦だっけ……」


 学院が定期的に行う部隊の練度を確かめるための試合で、相手部隊に勝つことが出来ればそれなりの褒美が貰えるとみな奮闘するのだが、ヨムカは深い溜息を吐く。


「どうせ、また先輩の権限で試合放棄するんだろうな」


 ヨムカが所属する魔術強襲第七八部隊は他の部隊から馬鹿にされ見下されていた。その理由としては対抗戦が開始するや即座に降参するという戦う気概すら見せずに負けを認めてきたからであった。ただでさえ己の容姿のせいで肩身が狭いヨムカに追い打ちをかける様に負け犬のレッテルが貼られていた。


 せっかくの豪勢な朝食を前にして気分がどんよりと憂鬱に沈んでいった。


 朝食を済ませ、学院指定の制服に袖を通し部屋を出る。一歩踏み出せば床が軋み上がり、腐っているんじゃないかと疑問を持ってしまうような木造の階段を降り外に出ては新鮮な空気を身体中に取り入れ、部隊対抗戦の事は一度忘れる事にした。


 早朝ということもあり人の姿をあまり見かけない。むしろヨムカにとってはそちらの方が都合が良かった。この街にやって来たばかりの頃はやれ悪魔だ災いだと注目と罵倒を一身に浴びていたが、この長い旅の中である程度の耐性……というよりは慣れてしまっていたので特に問題は無かったのだが、中には商品を売ってくれない店主も少なくない。


 そのお陰でこの街に来て最初に始めたのは住まいと自分にも商品を売ってくれる店探しで、五日程この街を歩き回る羽目になった。


 そんな真新しい記憶を思い返していれば荘厳な塀と門が目の前に佇み、広大な敷地にいくつもの建物が並ぶこの場所が国家公認の魔術養成学院がヨムカを迎える。


「ホント、この建物にいくらくらいつぎ込んでるんだろう……」


 ヨムカの感覚では付いていけない程の膨大な金銭と時間を消費して作り上げたのだろう。出来ればそのお金で貧しい人達にパンの一つでも配給してくれればなと思いつつ、自分の教室にたどり着き荷物を置き席に座る。


「…………」


 なんとなく机の中に手を入れてみると中身が空のはずだが、今指先に何か固いものが触れた。それをおそるおそる指で挟みゆっくりと引き出す。


「ほんと、馬鹿みたい。こんな嫌がらせして今更私が泣き寝入りするとでおも思ってるの?」


 それは、カビの生えたパンだった。

こんばんんは、上月です(*'▽')ノ


本当ならば、今回の話しで部隊対抗戦の開始くらいまで掛ければなと思っていたのですが……。

次回は部隊対抗戦となります。

次の投稿日は1月7日の土曜日になりますので、よろしくお願いします!

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