日常の終わり〜非日常からの魔の手〜
「いらっしゃいませー」
今日も、退屈な日が続く。
黒く塗装された壁。数は多いながらも綺麗に陳列された商品。
「いらっしゃいませー」
壁と同じように黒塗りにされたカウンター。その中で主張する真っ白なレジスター。
「いらっしゃいませー」
そのカウンターの奥で、パイプ椅子に腰掛けながらファッション雑誌を読んで適当に挨拶をする私。
「いらっしゃいませー」
繁華街の煌めきに紛れるように佇む雑居ビル。外階段から下がった先にある、この店舗への入口。
「いらっしゃいませー」
まぁ売っている物が物だけに、客足もまばら。
客層も大多数が成人男性、その中に女性が少々。
「いらっしゃいませー」
あぁでも、今馬が入ってきた。
「いらっしゃ馬せ!?」
馬。そう、馬。
馬の頭の被り物をして、甲冑を纏った、真っ白な馬。それが堂々と、店内に入ってきた。
私の叫びに驚いていて、店内にいた数人の客達も一斉にそちらを見やった。そして皆、それを見た途端に硬直した。
「む、なんだこの腐ったようなニンジンは。食べられるのか? おぉ、こちらには巨大な白キノコもあるぞ! ん? この肌色のキノコ…妙な帯が付いてるぞ」
「お、お客様。店内ではお静かに…」
「おぉ、ちょうどいい。ここは一体どこなんだ! 俺はどうして喋れるようになっているんだ!」
「いやどこも何も、ここはただのアダルトグッズショップ…」
「あだると…何だそれは」
「えっと…いわゆる大人の…オモチャ?」
「オモチャで遊ぶのは子どもではないのか?」
「もうやだ全然話通じない…」
「そうだ、質問を替えよう。尾縞井楽那はどこだ?」
「誰それ知らな…え?」
今、唐突に知っている名前が飛び出してきた。
「でっかい声が聞こえると思ったら…やっと見つけたわよ、ハクバッシャー!」
そして、突然押し入ってきた女性。
私は、この女性に見覚えがある。昔と比べてずいぶんと荒っぽい挙動だけれど、間違いない。
「さ、鎖役さん!?」
どうも、壊れ始めたラジオです。
後半、台詞ばっかりでした。
それでは。