独裁的集団暴力の終わり〜お姫様になれなかった少女〜
王子様との再開は、私が思っているよりもずっと早かった。
「あっ…」
小学四年生のクラス替えの時、偶然同じクラスになったのだ。名前は自己紹介でわかった。
まさか、同じ学校に通っていたなんて。三ヶ月前のあの日に行った駅も校区内だったから当たり前といえばそうなのだが、その時の私はただただ驚いていた。
さっそく、私は声をかけてみた。すると、反応は返ってきたには返ってきたのだが。
「駅…? え…あ、うん、覚えてるよ」
覚えてくれてはいなかった。
そしてこれが、私達の最初で最後のコミュニケーションとなった。
鎖役朱音…いや、鎖役さんに目を付けた笠原の圧政と、女子からの執拗なイジメが始まったのだ。
◆
それから半年が過ぎた頃、どんな心変わりがあったのか、私達のリーダー格として君臨していた尾縞井さんが笠原を刺そうとする事件を起こした。
クラスでのけ者にされたくなかった私も、その時ようやく理性が戻った。笠原が尾縞井さんを襲おうとした時、防犯ブザーを鳴らして助けを呼んだ。血塗れの鎖役さんに駆け寄ろうとして聞こえてきた、鎖役さんと尾縞井さんの会話で、私はこれまでに起こっていた出来事の真実を知った。
「わたしは…らくなちゃんのおーじさまになりたかったの…。なにがあってもらくなちゃんをまもって、しあわせにするってきめてた…。なのに、けっきょくまもりきれなくて…らくなちゃんをはんざいしゃにしちゃった…。あ…いままでつたえるのわすれてた…。わたし…ね…ずっとらくなちゃんのこと…すき…だったの…」
「そんなこと…。そんなこと、こないだからなんとなくわかってたわよ!」
「そっか…。ねぇ、へんじ…きかせて?」
「えぇ、デートでも結婚でも何でもしてやるわよ。だから…だから、私なんかのために死なないで…お願いだから…」
「…『私なんか』っていわないで…。らくなちゃんは…わた…の…たい…つな…おひめ…ま…か…」
「鎖役…? サエキ! 目ェ覚ましなさいよ!」
そうか。
学校内での鎖役さんは、正直言って「イヤな女の子」という雰囲気で、駅で会った頃のようなヒロイックで謎めいた感じはほとんど無かった。鎖役さんはこんな人じゃないはず。そう思いつつも、結局私はイジメに参加していた。
全てを悟った。
クラス替えと同時に転校してきた、帰国子女の尾縞井さんが笠原の毒牙にかからないように。大好きな尾縞井さんを守るために。
最初から、私は鎖役さんの視界に入っていなかったんだ。たまたま命を救われた私が、勝手に好きになって。でも、鎖役さんはただ単純に、困っている人を助けただけで。
警察で事情聴取を受け、帰宅した私は、一晩中布団の中で涙を流し続けた。
どうも、壊れ始めたラジオです。
駆け足展開すみません。
それでは。