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終焉のラグナ  作者: 壊れ始めたラジオ
ラグナ編
4/12

尾縞井楽那の心の鎖のような役回りだった女の終わり〜朱の音がひびくとき〜

 私は、罪を犯した。

 小学生のときに、人を裁ちバサミで刺した。

 それ以来、私はずっと女子少年院で生活している。

 風の噂で、私が殺そうとした男性教師は数年前に刑務所を出所したそうだ。

 私が刺したのは、私を止めようとした同級生。

 あの事件の後に何回か面会の要求があったことから、どうやらその同級生は一命を取り留めてくれたらしい。

 けれど、私はそれを拒絶した。

 私には、その同級生…彼女に会う資格は無い。

 自分の手が彼女の血に塗れている光景を、今でも夢に見る。

 まだ、彼女は私を「愛してる」と言ってくれるのだろうか。もしかしたら、自分を瀕死に陥らせた私のことを恨んでいるかもしれない。もしそうだったとしても、私はそれでも構わない。彼女が復讐しに来たら、喜んで受け入れよう。

 そう思おうとしているのに。

 自分にそう言い聞かせようとすると、何故かその度に涙がこぼれる。

 保身のためにクズ男の言いなりになって、そのうえ友人欲しさにイジメに協力していた私なんかが、彼女に愛を囁いて良いはずがない。


『…「私なんか」っていわないで…』


「……」


 また、あの子の声が聞こえる。


「…鎖役」


 今になっても、試薬をかけたらルミノール反応が出そうな掌を天井に向けながら、私はカビ臭さが残るベッドで束の間の休息を過ごしていた。


「コケコッコーッ!」


 いやいや、さすがにもう昼過ぎ。

 あ、もしかして「固形ごっこ」? 何それ意味わかんない美味しいの?


 …あの子のことを思い出して、脳に負荷がかかったのかしら。そんな風に冗談を考えて、まばたきした。

 目を開くと、目の前にニワトリのような怪物がのぞきこんでいた。


 …は?


「オマエの体、ゲノマイザーを作りやすそうなんだッコー! オマエを連れていくことにするんだッコー!」

「え、ちょっと何あなた…ってきゃあっ!」


 突然の浮遊感を覚えた途端、視界いっぱいに街の景色が広がった。

 劇的な環境の変化についていくことができず、意識は私の手から離れていった。



 ◆



「ん…。え?」


 私は、意識を取り戻した。けれど、視界に広がっていたのは、予期せぬ最悪の光景だった。体を大の字に開かれて、四肢は枷によって自由を失っている。


「な、何よコレ!?」

「人間、お前はゲノマイザーとなる素質がある。よって、これから改造する」


 そう言ってきたのは、まだら模様の怪人。


 首筋に麻酔か何かを射たれたのか、突然自分のまぶたが重くなった。



 ◆



 …ん?


 目の前が、真っ暗…。


『あなたが…ラスボス?』

『ラスボス…そうだな。人間界の言葉の中では、それが最も適切な表現かもしれない。いかにも、我こそは…ヌエキャラスター。この世界を統治する者だ』

『そう…なら、私はあなたを倒す。…変身!』

『果たして、そう簡単にはいくかな。…ゾウ、やってみろ』

『わかったゾウ』


 何?

 なんなの、この会話…?


 ふと、視界が開け、浮遊感が私を襲った。


「名付けて、ゲノマイザーラムダだゾウ。…変身!」

『あぐぁ!』


 突然頭に何かを刺された。

 背中には、ざらざとした感触が。


 “インベーダーアイデンティティー! カーテン・オープン!”


 私の口…いや、喉から、自分とは思えない声が発せられた。


 体が揺れて、足を動かしているわけでもないのに私は目の前で身構えている天使のような怪人に向かって駆けている。


 さっきから訳がわからない。体が浮いたり、勝手に動いたり。誰か説明できる人がいたら教えて。


 私の上から手が伸びて、その拳によって怪人は吹き飛ばされる。

 私の下から足が伸びて、その蹴りによって怪人はまた吹き飛ばされる。


 後ろから、さっきのまだら模様の怪人の声が聞こえてきた。


「素晴らしい性能だ。さすが、人間を改造しただけのことはある。人間が持つ無限の可能性を得た我々に、敗北などあり得まいな」


 人間、改造、そしてさっきから感じているこの違和感…。

 まさか…。


『いや…私、私…』

「ゲノマイザーの分際で何を喚いているんだゾウ。キャラスターの繁栄の礎になれることを誇りに思うといいんだゾウ」


「げのまいざー」に、改造された…?


「その声…もしかして楽那うっ!」

「んー。まさかキャラスタルを取り込んで正気を保てる人間がいるとは驚いたゾウ。バラバラに解剖して、もっともっと人間の神秘を調べてみたいんだゾウ」

「くっ、あうぁ…!」


 天使の怪人が、首をひっつかまれている。私は、それを見ているだけで何もできない。


『…この瞬間を待っていた!』

「?」


 怪人から、今までとは違う質の声が響いた。それまで私の上から伸びていた左腕を掴んでいた手が、おもむろに私を鷲掴みにした。再び私を襲う浮遊感。


「ふぅわっ!?」


 私を見つめる怪人から少女が吐き出され、少女は驚愕の声を上げた。

 地面に倒れるその姿に、私の想い人の影が重なる。その少女には、当時の面影が僅かながらに残っていた。


「鎖役!?」

「ハッハッハッハッハ! これさえ…ゲノマイザーさえあれば、俺は全ての次元世界を手に入れることができる! 世界が、神が、俺に屈服するのだァ!」


 私を掲げて見上げる怪人の声は、とても乱暴で、耳障りだった。その場にいる私を含む全員が、悪い意味で釘付けになっている。


「エンジェル…この裏切り者が、あの人間をそそのかしたのか?」


 私を改造した張本人、まだら模様の改造が、私を手にした「エンジェル」という名の黄金の怪人に問う。


「ああそうだ。俺だ。強力な生体兵器であるゲノマイザーを手に入れるために、俺があいつを誘導したんだ。ハッハッハッ。…ここまで来れば、お前はもう用済みだ。フンッ!」


 天使の怪人、もといエンジェルキャラスター? …が掌から金色の羽根を射出したかと思うと、それは直進し、鎖役の胸部を貫いた。


「うっ!」

「鎖役!」

「だ、大丈夫…。私をそういう風に心配してくれる人なんて、一人しかいないよね…楽那ちゃん」

「あぁ…ごめんなさい…。私、またあなたを傷つけてる…。何もできないで…」

「おしゃべりはここまでだ…変身!」

「ぐほっ!」


 “イレイザーアイデンティティー! カーテン・オープン!”


 エンジェルはベルトのように私を腰に巻きつけ、変身した。


「それは…僕の研究室から無くなった、精神の入っていない特製キャラスタルだゾウ!」

「何。なぜそれを黙っていた…?」

「す、すまないんだゾウ…。こんなことバレたら、処刑されてしまうと思ったんだゾウ…」

「お前は我に尽くしてくれている…。消すわけがない」

「…!」

「お、親ビン…良いこと言ってくるんだッコーッ!」

「シッシッシッシ。よかったじゃねぇかよゾウ!」

「うん、うん…!」

「お前ら…俺を忘れるなァ!」


 膝をつく鎖役をよそに、イレイザーアイデンティティーへと変身した怪人がドラマチックな展開を迎えているキャラスターの集団へ襲いかかった。


「ゾウ、ゲノマイザーアルファを準備しろ。人間の力を手にした奴を迎え撃つには、それしか方法は無い」

「で、でも、あれは出力が高すぎて、変身者の身を滅ぼす危険性が…」

「構わん!」

「わ、わかったゾウ!」

「シシ、ニワトリ、奴の足止めをしろ」

「おっしゃ!」

「任せるんだッコーッ!」

「ザコが!」


 二対一の戦闘の最中、私はまだら模様の怪人と、ゾウと呼ばれる怪人が黒い物体をいじっているのが見えた。

 それは…ショルダーベルトが備わった古い型の携帯電話のような形をしていた。


「行くぞ。シシ、ニワトリ、ゾウ!」

「やってやるぜ!」

「ッコーッ!」

「力を一つに合わせるんだゾウ!」


 イレイザーアイデンティティーと距離をとった二体の怪人は駆け出し、まだら模様の怪人の元へと集合した。


「変身コードを入力して、インベーダーキャラスタルを装填するんだゾウ!」

「ああ」


 まだら模様の怪人は携帯電話型ツール「ゲノマイザーアルファ」の上部にある番号が振られたボタンを一から九まで押した後、円柱状の結晶を側面のスロットに差し込んだ。


 “インベーダーアイデンティティー! チャージ・アンド・アウェイクニング!”


 まだら模様の怪人はみるみるうちにそのシルエットを変え、大きな黒いマントを羽織った戦士へと変身した。胸と両肩にはそれぞれ、獅子、鶏、象を模した装飾が施されていた。


「四体のキャラスターが、融合変身した…だと!?」

「シッシッシッシ。これでお前も終わりだぁ!」

「覚悟するんだッコーッ!」

「僕達の力、思い知らせてやるんだゾウ!」

「フン」


 “エクシード・フルチャージ、インベーダー!”


 インベーダーアイデンティティーは赤い光を放つレーザーソードを構え、必殺技を発動しようとしている。


 “リボース・マキシマム!イレイザー!”


 それに対抗し、イレイザーアイデンティティーも私に備わったボタンを押して必殺技を発動する。私は、強引に最大出力発揮のアナウンスをさせられる。

 インベーダーの光の斬撃と、イレイザーによる消しゴムを模したミサイル、二つの必殺技が至近距離で同時に炸裂した。強烈な突風が襲い、私はイレイザーの腰から外れた。転がった先は…苦しそうに跪いていた鎖役の目の前。


「さ、鎖役…」

「…久しぶりだね、楽那ちゃん…」

「あなた…大丈夫なの? 汗びっしょりよ…?」

「平気平気。それよりも…この状況をなんとかしないと…」

「なんとかって、どうするつもりなのよ…?」


 すると、鎖役は自身の腕に突き刺さっていた破片を抜いた。傷口から、赤い川が流れてくる。ふと、破片が光りだして、それは円柱状の結晶へ変化した。


「これが、私の個性…私が目指していたもの…!」


 鎖役は、私を顔の横で構えた。


「ごめん、ちょっと痛いかも…」

「え、っつ!」


 “レッツ・フィニッシュ・ユア・ライフ!”


 結晶を私に装填したあと、彼女は私を腰に巻きつけて両腕を開いて、反時計回りに一回転させた。その間に、私から変身待機音声のようなものが流れる。


 “ショウサンッ! ゼッサンッ! ジダイノマクアケ・ワレハココニアリ!”


『ちょっ、やめなさい鎖役! これ以上無理したら…!』

「ごめん、もうそんなこと言ってられないみたい…。変身!」


 彼女が私のレバーを動かすと、私から派手な変身音声が響き渡った。


 “プリンスアイデンティティー! カーテン・オープン!”

 “皆ノ為ニ! 私ノ為ニ! 白馬ニ跨リ駆ケテ行ク!”


 私達の周りを純白のカーテンが高速回転し、それが遠心力によって浮かび完全に消失すると、彼女は…私達は、童話に登場する白馬の王子様のような姿の仮面のヒーローに変身していた。


「うわ、何これすごい仮面…」

『まるで手の込んだコスプレね…』

「あ、それいいね楽那ちゃん。私達の名前、《仮面レイヤーラグナ》ってどうかな?」

『どこかから怒られそうだけど…名前はあなたの好きにしなさい』


「へ、へへ…。次は、お前らだ…!」


 長らく続いていた爆風の中から、エンジェルが現われ出でる。その後ろには、轟々と燃え盛るまだら模様の怪人達の死骸が。


「もう、止められるのは私達しかいないみたいだね…」

「ええ。決めゼリフとか、言わなくていいのかしら?」

「そうだね…さあ、あなたの罪を数えて」

『ひとっ走り付き合いなさい!』

「これ以上付き合ってられるか!」


 そこそこの広さがある研究室で、両者は対峙した。一斉に駆け出し、それぞれの拳が炸裂する。


「くっ!」

「クソが!」


 “オージサーベル!”


 態勢を立て直した鎖役は長剣「オージサーベル」を的確に振るい、エンジェルの放つ矢を払ってゆく。


「俺が、真の支配者だァァァ!」


 突然、エンジェルの体色が金色からくすんだ銀色に変化した。禍々しい真紅の眼光が、私達を捉えた。


「まだまだ…うっ!」

「鎖役!」

「ハッハッハ。どうやら、俺の羽根の効果が本格的に現れ始めたようだなぁ」


 エンジェルが弓を構え、弦を引く。鎖役は体に力が入りにくくなっているらしく、この一撃は避けられそうにない。


 こんなに近くにいるのに…私は、傍観しているだけで…。


「死に逝け、使用済みがァァァ!」

「今度こそ、楽那ちゃんを守る! 私は…私は、楽那ちゃんの王子様になるんだ!」

『鎖役…』


 突如、鎖役の叫びに呼応するかのごとく、私の駆動機関が急激に稼働を始めた。それとほぼ同じタイミングで、エンジェルが矢を放った。

 しかしそれが命中することはなく、ラグナプリンスアイデンティティーのローブによって払われた。


 “プリンスアイデンティティー! アーサーフォーム!”


 私達の全身が、虹色に輝く。


「なんだと!?」


 光が収束し、その神々しい姿が露わになる。全身に宝石のようなパーツが埋め込まれ、胸部には円卓を模した装甲でしっかりと固められている。そして、手には聖剣「アカネクスカリバー」が。


「決めるよ!」

『アーサーって王子じゃなくて王様だったような気がするけど…こうなったらヤケクソでクライマックスよ!』

「お前ら…いい加減にしろォォォ!」


 “リボース・マキシマム!”


 鎖役が、私のボタンとレバーを操作し、剣を構えて駆ける。

 エンジェルは体中から羽根や矢を飛ばすが、いずれもすんでのところでかわされる。

 重い剣の一振りが、エンジェルの肉体を削り取った。


「ぐおォ!?」

「もう一回!」


 “リボース・マキシマム!”


 今度は、至近距離での回し蹴り。


「あぐはァ!」

「もう一回!」

『これで…お終いよ!』


 “リボソーム・マキシマム! アーサー!”


 めいっぱい気合を込めた私のアナウンスが、周囲に響く。と同時に、鎖役はアカネクスカリバーを思い切り縦一直線に振り下ろした。


「せやあぁぁぁっ!」

「あァァァァァ!」


 エンジェルは後退して跪き、悶えた。閃光を放ちながら、奴のボディが徐々に崩れてゆく。


「決まった…」

『そう、ね…』

「ああそうだな。…そして、お前の人生も完結した…」

「…」

『…!?』

「エンジェルキャラスターの能力…それは、羽根を撃ち込んだ相手を死に至らしめること…。俺の憎悪の感情が込もった羽根を受けたお前は…苦しみ、もがきならがら死んでゆくんだ…! ハッハッハッハ、バカな奴だ。俺に歯向かわなければ、苦しまずに楽に死ねたものを…。死ねェ!」


 その刹那、エンジェルキャラスターは爆散した。変身を解いた鎖役に、私は恐る恐る問いかける。


「…」

『あなた、身体は…』

『ママ、ママ…』

『!?』

「…!」


 複数の子どものような声。それに気づいた私は恐怖した。おそらく、鎖役も。

 振り返ると、そこには真っ赤な人影がいくつも集っていた。それも、全てが乳幼児サイズ。


「この子達は…」


 まさか…。


水子(みずこ)…?』


 水子。

 一部では縁起が良いものとされているが、大抵の言い伝えでは…。


 この世に生を受けられなかった、子どもの怨念の塊…。


「…」

『な、何するつもり!?』


 水子に近づく彼女の腰に巻きついたままの私が、彼女に聞いた。すると返ってきたのは、私の予想を遥かに超えた言葉だった。


「何って、子ども達をなだめてこないと」

『ダメに決まってるでしょそんなこと! 今さら…今さら、あんたがあんな野郎の子の相手なんてする必要なんかないのよ!』

「ううん。だって…生まれてくるはずだった命に、罪は無いから。…じゃあね、楽那ちゃん。すぐに帰ってくるから。…あ、そうだ。もし楽那ちゃんがよかったら…これからは私のこと、下の名前で呼んでほしいな」


 嫌、だめ、だめよ…。

 行かないで。

 逝かないで…。

 そんな柔らかい笑顔したら、本当にお別れになっちゃうじゃない…。


「ま、待ちなさいよ。朱音…朱音ぇっ!」


 引き戻そうとして血まみれの手をめいっぱいに伸ばしたが、その手は彼女の体を透けてしまった。

 そのまま、彼女は赤い水子達に引き上げられ、天に昇っていった。



 …え?



 なぜ、ゲノマイザーに改造された私が、「手を伸ばす」なんてことができるのだろうか。突如降り出した雨に、髪を濡らすことができるのだろうか。

 沈んだ感情で下を向くと、足元に映っているのは、涙を流している鎖役朱音の顔。

 私に再び脚が生えている。

 水溜まりに映るのは、離れがたい彼女の泣き顔。

 これらの現象が起こる理由に自らの思考が辿り着いた瞬間、水溜まりの向こうにいる鎖役朱音は、両手で髪をグシャグシャにして泣き喚いた。赤く染まっていく水溜まりのせいで、あのときの光景がフラッシュバックする。

 コイツは…。



「あ、あぁ…いやああァァァァァァァァァ!」



 わたしだ…。

#用語解説


尾縞井楽那(おしまいらくな):この小説の主人公。小学生の頃に鎖役朱音をいじめていた主犯格としてリーダーシップをとっていたが、自分が仲間から嫌悪されていたこと、もともと担任の教師である笠原の暴行から逃げるために忌み嫌われていた鎖役に注意を逸らしていたこと、なにより自身を守るために意図的に目立っていた彼女の気持ちに気づいたことによって自己嫌悪に陥り、自暴自棄になった挙げ句笠原を道連れにして心中しようとした。しかし鎖役の命懸けの行動により失敗に終わった。当時小学生だったこともあり、その後は女子少年院で暮らしていた。数年後、異世界からやってきたキャラスターの集団によって、肉体を「ゲノマイザーラムダ」に改造されてしまう。戦いの中で鎖役朱音と再会し共闘するも、彼女とは死別してしまう。自動的に作動するようにゲノマイザー内部にプログラムされていた「乗っ取り機能」により、その後は脳死した鎖役朱音の肉体と身分を使ってひっそりと生活しながら、キャラスターの脅威に立ち向かっている。


鎖役朱音(さえきあかね):この小説の主役。幼少期に聞いたおとぎ話の中の「王子様」という存在に並々ならぬ憧れを抱き、自分もそうでありたいと強く願うようになった。小学生の頃に担任の教師から性的暴行を加えられていた過去がある。それを止めようとした尾縞井楽那に胸部を刺され、しばらくの間生死をさまよった。その後奇跡的に回復し、二度と自分達のような被害者を出さないために、猛勉強の末礼宮カルノドワーツ大学に入学した。キャラスターの侵略行為を阻止するために仮面レイヤーラグナへと変身した。それには成功したものの、エンジェルキャラスターの羽根の効果で重度の幻覚障害を引き起こし、脳に絶大なダメージを受けたために脳死状態に陥った。


・ヌエキャラスター:キャラスター軍団のボス。地球侵攻の最中、裏切り者であるエンジェルキャラスターに戦いを挑むも、シシキャラスター、ニワトリキャラスター、ゾウキャラスターもろとも敗北した。


・エンジェルキャラスター:単独で全次元世界の征服を目論んでいた。この世界にやってきた直後に鎖役朱音に力を貸すが、それも全て人間を改造したゲノマイザーを手に入れるためだった。同じ種族を傷つけることも厭わない、極めて凶暴的なキャラスター。


・ゲノマイザー:ヌエキャラスターとゾウキャラスターが開発を進めていた兵器。現在はアルファからラムダまでがロールアウト済みであり、それらは全て何らかの生物を主原料として構成されていることから、「生体兵器」もしくは「生きているマシン」と形容するのがふさわしい。


・ゲノマイザーラムダ:ヌエキャラスターが作らせた最後のゲノマイザー。形状モチーフは一昔前のテレビゲームのコントローラーで、尾縞井楽那を主原料としている。ヌエキャラスター曰く「無限の可能性」を秘めた人間を改造して完成させただけあり、数あるゲノマイザーの中でもトップクラスの性能を誇る。唯一の欠点は、ラムダ(=尾縞井楽那)のモチベーションによってその時の性能が大きく左右されること。裏を返すと、本気を出せばあらゆる敵も寄せ付けないほどに強くなる。ちなみに鎖役朱音が見ていた幻覚が尾縞井楽那にも見えたのは、内部に仕込まれていた「乗っ取り機能」によって感覚神経をある程度共有していたため。


・ゲノマイザーアルファ:最初に作られたゲノマイザー。形状モチーフは肩提げ式の携帯電話。主原料は、改造を志願してきたウルフキャラスター。開発された当時はまだセーブ機能が未成熟だったがゆえに出力が高すぎて、使用者の身の安全が保証できなかったために長らく全機能を凍結していたが、イレイザーアイデンティティーへと変身したエンジェルキャラスターと戦う際にヌエキャラスターの命によって再び戦線に復帰した。最終的には激しい戦闘の末、粉々に砕け散った。


・プリンスキャラスタル:エンジェルキャラスタルの破片を基にして、鎖役朱音の強い意志が結晶化したことにより誕生した新たなキャラスタル。


・インベーダーアイデンティティー:「侵略者」の特性を持つ形態。大きな黒いマントに赤いビームサーベルと、某有名悪役を彷彿とさせる姿をしている。


・インベーダーアイデンティティー(チャージアンドアウェイクニング):ヌエキャラスターが、ゲノマイザーアルファとインベーダーキャラスタルを使って、シシ、ニワトリ、ゾウ、三体のキャラスターと融合変身した姿。


・イレイザーアイデンティティー:「消しゴム、消去者」の特性を持つ形態。


・仮面レイヤーラグナ:鎖役朱音が、ゲノマイザーラムダ(=尾縞井楽那)と自身が持つ「尾縞井楽那の王子様でありたい」と願う気持ちが結晶化して誕生したプリンスキャラスタルを使って変身した戦士。鎖役朱音が命名。


・プリンスアイデンティティー:「白馬に乗った王子様」の特性を持つ形態。長剣「オージサーベル」を振るう白兵戦を得意としているほか、小さな奇跡を起こして戦況を有利に運ぶ「オージウインク」という技を使ったり、「ハクバッシャー」と呼ばれる白馬の馬車型のマシンを乗りこなすことができる。


・プリンスアイデンティティー・アーサーフォーム:尾縞井楽那が鎖役朱音の意志と共鳴したことにより誕生した、プリンスアイデンティティーの特殊強化態。基本スペックが飛躍的に向上し、圧倒的な強さを見せる。

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