月夜に舞うは咲き溢れし花
「今回返り血浴びすぎだね、お姉ちゃん?」
「・・・満月だし。」
「ん〜?行ってくりゃいーじゃん、月の丘。」
「アリスー、そんな簡単じゃないんだよー。騎士団の仮基地?だっけ?それの向かい側だから。」
「う〜ん?月の丘に陣取ってるんじゃなかったぁ〜?」
「お姉ちゃんは暗月の丘だから。」
「いーよ、知られてないんだし。そのまま仕事に行っちゃえばぁ?」
「あ、それいい!みんなで行こうよ!」
勝手に話を進めていくアリスとリリア。
みんなで、と言うキーワードにリリスがピク、とした。
「アリスも行くの?」
「うん。なんかさー、ああ言うの見ると」
一旦そこで言葉を切り、俯く。次顔を上げた時には暗い影を顔に落としていた。
掌を上にし、前に手を出す。そして、グッ、と握りしめた。
「ぶち壊したくなる!」
リリスがアリスの頭を撫でると、アリスもえへへ〜と笑う。
「じゃあしゅっぱーつ!」
「「うるさい。」」
「お姉ちゃんはまだしもアリスまで!?」
「「だからうるさいって。」」
「お姉ちゃんって歌好きだよねー。」
「そういう妖怪とか?」
「あり得るかもしんない。」
満月になるとどうしても暗月の丘で歌い、そして舞いたくなるのは彼女の癖だった。
(今回は切り取らずに見ていようと思います by作者)
「・・・何か聞こえませんか?」
少女が・・・リルムが言う。
「これは・・・歌声か?」
レルガも気づき、その他の面々も気付く。
「月の崖のとこです!」
そこには、着物の振り袖を生かし、美しく舞う女の姿があった。
『だからなんだと言うの
私たちは生きてはいけないのか
愛されてはいけないのか
私たちの自由など存在しない
月夜に舞うは咲き溢れし花
時に悲しみ
時に切なさ 背負い
時に儚く 美しく
自由など手に入れることができないなら
せめて愛すことだけは
出会いよりも別れの方を選ぶ
別れるなら最初から
期待など持つから悲しむの
知っているなら
ドウシテ
月夜に舞うは溢れし雫
時に過去を
時に未来を 思ふ(う)
時に辛く 泣いても
未来など永遠に訪れないなら
せめて今だけは』
「わぁ・・・」
「・・・おい!」
チームの中で二人だけいる妖怪の片方が何度も声をかけたぞ、と言う。
「あの女性だが、ルミの言っていた特徴に似ていないか?」
「?あっ、ホントだ!」
その話に上っていたリリスがふっとこちらを向いた気がした。
バサ、と振り袖を翻し姿を消したリリスを素早く身支度を整えた騎士団が追い始める。
幕は上がった・・・