#0―少年の【音】―
ジャーン…ジャジャジャジャジャージャ…カッ
「あー!!またミスったー!!」
鳴り響くはエレキギターの音色。
朝の9時過ぎにしては迷惑な音量だ。
「はぁ…何回やってもここで詰まるんよなぁ」
青年の名は國村英治【クニムラエイジ】
近所の高校に通う17歳。
ギター歴は丁度1年になろうとしていた。
「英治は指が硬いって。スパイダー運動ギコいし」
※【スパイダー運動…指の動きがまるで蜘蛛のようで、各指を独立させて動かす。】
「うっせー!ベーシストのくせに!」
「はぁ!?くせにってなんだ!これでもギターやってたんだ、お前より出来るんだよ!」
ベーシストの名は曽我直人【ソガナオト】
英治の幼なじみでクラスメートだ。
しかも英治のギターの師匠だったりもする。
「…ひでぇ…ベースに転向したお前に言われるとマジでヘコむわ…」
「はっはー!だったらつべこべ言わずに練習しろ!夏休み入るまでにバンド組むんだろ?俺と組みたきゃ腕を磨け、少年よ」
「…うっ……確かにこのままじゃロクな演奏できねぇな…」
日曜日の午前中
白い屋根の家の2階の窓より
ギターとベースの音が流れる
その音はどこかぎこちなく
アンバランスであり
また
先が楽しみでもある
そんな音
青春謳歌
歌え少年
かき鳴らせ
6弦を
感じるままでいい
音とは楽しむものだから
英治がギターを持ったのは1年前。
あるバンドに憧れて購入を決めた。そのバンドは3ピースバンドで、陳情的な歌詞からロックフルなメロディー、フォーキーなサウンド、音楽を楽しむ姿。
そんな彼らを英治は心から尊敬した。
俺もこうなりたい。
決意と共に手にしたレスポール
英治の【音は】その日から始まった。