ロコンベ村
コモリの森に向かって歩き始めて数時間。
故郷は見えなくなり、平地な緑から凸凹がある緑に変わりつつあった。
変わる景色に胸を躍らせながら歩みを続けていると、前方に人影が見える。
特徴的な制服と短弓。
「青い軽装と咆哮弓、情報組合の言伝人か」
遠くに見える彼は情報組合”サッテルベア”に所属する言伝人の一人だろう。
目を凝らして見ていたら、男は思いのほか近くまで来ていた。
流石は”サッテルベア”。脚に自信のある奴らが多いな。
「あの~、さっきから動いてませんけど、どうかされたんですか?」
「すまない。久しぶりにサッテルベアの人を見かけたんでな」
男は不思議そうに顔をかしげるが、「そんなこともあるか」と納得した顔になる。
「ではもっとサッテルベアをこの大陸に普及するためにも、役立つ情報を教えましょう!」
「現在、コモリの森付近で異常気象が発生していると思われます。これが偶発的なものか意図的なものかまでは分かりませんが、行き先がコモリの森ならば、注意した方がいいかと」
俺にとっての良い情報。
目的地を教えたわけでもないのに、的確な助言をしてくれる。
この道を歩いているなら、この情報が役立つと考えたのだろう、
こいつ、サッテルベアの中でもかなりのやり手だな。
男の顔が「そうでしょ」と言っているようで、なんだか腹が立つが、
まぁ、実際有益な情報ではあるので、感謝しよう。
「いえいえ、お返しは”依頼”でしていただけたらと!」
その商魂逞しい根性、デイロに似ていて嫌いじゃない。
「あぁ、機会があったら依頼するよ、名前は?」
「サミュットって言います!お仕事があるのでもう行きますね!ではまた~!」
男は名を告げ、軽快な足音で去っていく。
目標に向かって努力する人を嫌いになる人は少ない。
彼との出会いは、真面目に積み重ねることの大切さを教えてくれた。
他者から学び、自分の糧とする。
たとえそれが、すでに知っていることだとしても。
やはり旅とは良いものだと、俺は再び歩みを始めるのだった。
サミュットと別れてしばらく歩いていると、空が夜を告げる。
「もうそんな時間か」
俺が思っている以上に、時の流れは早いようだ。
いや、それだけ旅の一日を楽しんだということだろう。
そう思うだけで、心が満たされていく気がする。
「”物事は考えよう”とはよく言ったものだ」
そんな独り言をつぶやきながら、地面に座り夜風にあたる。
なるべく遠くまで歩こうと、
持ってきた干し肉をかじりながら歩いていたのでそこまでお腹は空いていない。
代わりに食料がもう尽きてしまったが。
どこかで食料を調達しなければ。
星空の僅かな光を頼りに鞄から地図を取り出し、辺りを調べる。
「えぇーと、ここから近くの村は確かロコンベ村」
ロコンベ村。アサナギから一番近くにある村だ。
地図によれば、もうすぐそこまで来ているように思うのだが、辺りを見渡してもそれらしき村は見つからない。
「いったいどうなってんだ?」
地図に問題があるわけではない。
かといって、俺が地図も読めないほど馬鹿というわけでもない。
地図とにらめっこをしていると、その答えを一瞬の夜風が教えてくれた。
「隙ありっ!!」
突如現れた少女が、棒で俺の後頭部を狙ってきた。
だが、戦争経験者の俺にしてみれば、小娘の一撃など痛くはない!
その瞬間、鈍い音が静かな暗闇に響いた。
地面にノされたのは俺だった。
見知らぬ天井、眩しい光、どうやら気絶して一夜明けてしまったようだ。
まだ頭が痛い。動かそうとすると、激しい痛みに襲われる。
「そりゃ、後頭部だもんな。当たれば大抵の奴が気絶するか」
現状を口に出してみたら、変な笑いが出てきた。
「あの人、急に笑い始めたんだけど」
「あんたが棒で頭を叩くからおかしくなっちまったんだよ!ほれ、謝っといで!」
足音が聞こえてくる。
首は動かせないので、そのまま待つことにする。
「あの、その、ごめんなさい?」
顔を覗き込むようにして、謝罪をしてくれる少女。
彼女に続いて、後ろからもう一人が答える。
「ロコンベ村の村長をしているエルベと申します。」
「昨日はこの子があなたに暴力を振るったみたいで、ごめんなさいねぇ。」
ここで感情的になるのは悪手だ。
今後のことも考えて、冷静に大人であれ。
頷くことはできないので、言葉で返事を返す。
「大丈夫です。まだ動けませんが、これくらいならすぐに治りますよ」
「ほら、この人もこう言ってるんだし、もういいでしょ?」
エルベさんはため息をつき、
話し合いではどうしようもないと考えたのか、彼女に提案を出す。
「あんたはこの人が治るまで、しっかり看病してあげること。わかったね?」
彼女は不服そうな顔はしたものの、
これ以上は逆らわない方がいいと思ったのか、しぶしぶ了承した。
「旅人さん、すみません。私はこれから用事がありまして、少し家を離れます。その間はこの子がお世話いたしますので、何かありましたらこの子にお願いします」
何度も謝罪をしたのち、申し訳なさそうに去っていくエルベさん。
そういうことなら仕方がない。
思いがけず、二人っきりになってしまった。
「君、名前は?」
ありきたりな質問だが、名前を聞かないことには何も始まらない。
「エルミネ、村長の娘。あなたは?」
「シユウだ、よろしく」
俺たちはここで初めて、自己紹介をするのだった。
”ほのぼの”・・・ダークになっても日常系ならほのぼのと言えるのでしょうか。
私の解釈次第ですかね。このままでいきましょう。
お知らせ:ゲーム制作があるので、次の更新は遅れると思います。ごめんね!




